富永啓生

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

昨年末のウインターカップで全6試合に出場し、圧倒的なパフォーマンスで平均39.8得点を挙げて大会を象徴する選手となった富永啓生。桜丘高校を卒業した彼は、アメリカに行くことを宣言している。U22日本代表のスプリングキャンプに参加した富永に話を聞いた。

「俺が俺が、が当たり前の環境に行くことになる」

──卒業式は終わりましたか? 卒業式では全国3位をあらためてお祝いしたりしましたか?

はい、2月28日に卒業しました。学校では卒業式の前日に表彰していただきました。

──ウインターカップの後はどのように過ごしましたか?

高校の練習に参加したり、自分でバスケができる場所を探して行ってみたり、アメリカでのグローバルキャンプに行かせてもらったり、ずっとバスケはしていました。

──グローバルキャンプではどんな経験ができましたか?

アメリカには6日間いて、4日間が練習でした。ワークアウトとスクリメージです。やっぱり向こうの選手は1対1が好きなので、あまりパスが回ってこないんです。そこでボールが来た時に自分の個人技で突破できるか、それが問われるバスケでした。一緒だった田中力選手と「パス、回ってこねえな」って(笑)。どの選手も『俺が俺が』なので、そこで負けていられないなって。でも、それが当たり前の環境にこれから行くことになるので、自分が慣れないといけません。

それでも多少は爪痕を残せたんじゃないかな、って思います。シュートについては自信を持って帰って来ることができました。でも、フィジカルは足りないし、スピードでも負けることがあったので、まだまだ頑張らないといけないと思いました。

富永啓生

「自分もNCAAの強豪校に行ってスタメンで」の思い

──進路はアメリカだそうですね。大学に行くかどうか、悩んだ部分もあったのでは?

そうですね。大学に進むことも考えました。大学を選んでもフィジカルの面で成長できるし、4年間で身体を作り直してプロに行けば活躍の幅も広がるだろうって。でも、能力の高いアメリカ人の中に身を置くことで自分が成長できると感じたから決めました。具体的にどこに行くかは決まっていなくて、まだ探しているところです。プレップスクールに1年間行ってからディビジョン1の大学に行くことをイメージしています。

──バスケ以前に環境への順応が大事になりますね。特に語学の面では大変なのでは?

そうですね。今は週2か週3で家庭教師に来てもらって、課題も出してもらってかなり勉強を頑張っているつもりですけど、はっきり言って英語は全然できないです。バスケよりも語学が不安ですね。卒業してからのほうが勉強している感じです。正直に言えばバスケならいくらでも頑張れるんですけど、勉強は嫌です(笑)。でも、今ここで頑張ることが自分の助けになると思ってやっています。

日本には6月ぐらいまでいて、アメリカに行っていろんな準備を始めることになると思います。渡邊雄太選手や八村選手の活躍に刺激を受けているので、自分もNCAAの強豪校に行ってスタメンで、という思いがあります。

富永啓生

「不安は少しはあるんですけど、少しだけです」

──アメリカでプレーする上で、自分のスタイルを変えていこうという考えはありますか?

フィジカルはまず必要だと思います。シュートの精度も上げなければいけない、他にもたくさん課題はありますが、アメリカでプレーするからにはまず身体を強くしないと。点を取ることについては、それなりに自信はあるので。

今の自分のプレースタイルは、3ポイントシュートが打ててドライブもできて、時にはポストアップから攻めることもできるのが売りです。でもこれから先はもっとシュートの精度を上げたいし、アメリカに行くからには身体も強くしなければいけないと思います。やっぱり目指すところはステフィン・カリー選手なので、少しでも近づけるよう頑張りたいです。

──今はU22日本代表のキャンプで良い経験ができていると思います。桜丘は富永選手に点を取らせるバスケで思う存分やれましたが、代表チームとなるとチームバスケットの枠の中でプレーして、結果を出さなければいけません。U18でも経験しているから不安はないですか?

高校と違ってチームプレーが最優先で、パスが回って来る機会も少ないです。その貴重なチャンスを無駄にせず得点に繋げられるようにする。そこが代表に来た時の課題だと思っています。U18でもハードルは少し感じましたが、練習をやっているうちに次第に慣れていくことができました。自分の3ポイントシュートのセットプレーもあったので、そのプレーでは確実に決めるよう意識したら、うまくいきました。

不安は少しはあるんですけど、少しだけです。これからはそういうプレースタイルが求められるはずで、そこに順応して、その中でどれだけ結果を出せるか、チームに貢献できるかを突き詰めていきたいです。

アメリカに行っても同じで、バスケットのスタイルが変化するのに自分が順応しなければいけません。そうすることでアメリカの大学でも活躍できると思っているので、頑張ります。