文=鈴木健一郎 写真=小永吉陽子

シュートタッチが悪い中、攻守に粘り接戦に持ち込む

札幌で行われた国際強化試合の第2戦、日本はイラン相手に接戦を演じるも及ばず、68-73で競り負けた。

昨日のイランは30時間の移動の疲れを引きずり実力を発揮できなかったが、1日でしっかりと立て直してきた。第1戦の敗因はピック&ロールへの対応がまずかったこと、そしてリバウンド。この試合では立ち上がりから、的確なスイッチでスクリーンを使われてもフリーを作らせず、外に逃げてもしっかりと追いかけ3ポイントシュートを打たせなかった。またインサイドでのポジション取りも激しさを増し、リバウンドに備えたポジション取りで優位に立つ。リバウンドを押さえることで日本が得意とする速攻を出させず、自分たちのペースへと持ち込んだ。

日本のスターターは橋本竜馬、田中大貴、馬場雄大、アイラ・ブラウン、太田敦也。それでもルカ・パヴィチェヴィッチ暫定ヘッドコーチはどの選手も長く引っ張ることはなく、富樫勇樹、比江島慎、小野龍猛、竹内公輔と譲次と矢継ぎ早に交代選手を送り出す。

チャンスを作れない日本は比江島がスティールからワンマン速攻でのダンクを決めるも、次が続かない。サッジャド・マシァイェキィの3ポイントシュートで6-16と突き放されるが、ようやく途中出場の竹内公輔がインサイドでの得点を重ねて、10-18まで持ち直して前半を終える。

もっとも、日本が無策だったわけではない。第2クォーターに入るとピック&ロールでシュートまで持ち込めなくても、すぐ次のアクションに移るようになる。富樫勇樹がボールを運び、一つのアクションを入れてシュートに持ち込むのではなく、チームの連動した攻めの一つに富樫が加わることで流れを作り出す。シュートタッチの悪さにも苦しんだが、形を作ることができれば得点は伸びるし、シュートファウルも誘って点差を詰めていった。

イランが敷いたゾーンディフェンスに対し落ち着いてボールを回し、最後は田中が3ポイントシュートを沈め、残り1分で29-28と逆転。田中は続くポゼッションにも3ポイントシュートを決める。ジャッジに対するイライラを表現したルーズベ・アルガウァニのテクニカルファウルもあり、35-30と一気に突き放して前半を終えた。

強豪国の意地、イランは勝負どころで力強さを存分に発揮

それでも後半に入ると再びイランがペースを握る。日本は相手のカバーディフェンスをなかなか崩せず、第2クォーターに見せた連動性のある攻めも継続できない。スクリーンプレーで良い形を作れないとボールを下げて仕切り直してしまい、結局崩せずにタフショットを打たされたり、相手の包囲網の中にパスを出してはターンオーバーとなりリズムを崩していった。昨日は少々苦しい形でも決め切るシュートタッチの良さに助けられたが、2日連続でそのツキには恵まれなかった。

それでも苦しい時間帯にディフェンスでは粘りを見せ、永吉佑也の身体を張ったプレーや比江島の個人技で食らい付き、47-50と1ポゼッション差で第3クォーターを終えた。

第4クォーターは試合序盤のディフェンス合戦とは真逆のアップテンポな打ち合いとなった。比江島がドライブからの得点を連発すれば、アイラ・ブラウンが相手守備陣を強引に押し破る。そして残り6分58秒、ブラウンからの連携で竹内公輔がこの試合12点目となる得点を奪い57-57と追い付いた。

ただ、この試合のイランはシュートタッチが良く、多少厳しい体勢からもシュートを落とさない。またディフェンスもよく集中し、日本の揺さぶりにしっかりと足を使って対応する。また3ポイントシュートを数多く打たれた昨日の反省から、アウトサイドまでしっかりケアして隙を見せなかった。

終盤になって疲労が足に来たイランのスイッチディフェンスを富樫のスピードが上回り、連続得点が飛び出すも、イランもオフェンスでしっかりつなぐ。そのため日本は何度か同点にはできたが逆転することはできなかった。残り1分リスタートから素早くボールを回し、フリーの馬場が3ポイントシュートを決めて68-68の同点とするが、モハマド・ジャムシディにこの試合26点目の得点を奪われ、再びビハインドを背負う。

残り20秒で富樫がロング3ポイントシュートを狙うが決まらず、ここからファウルゲームを仕掛けるも徒労に終わり、最終スコア68-73で敗れた。

タフなディフェンスで苦しい時間帯を支えるとともに3ポイントシュート2本を含むチームトップの14得点、さらには3アシストを記録した田中大貴は「自分たちのミスが多くて自滅した感じでしたが、まだ成長段階なので、もっともっと良くしていけるように頑張りたい」と今後の向上を誓った。

FIBAランク48位の日本に対して25位と『格上』のイランは、第1戦での不甲斐ないパフォーマンスを払拭。強行日程で万全ではない中でも持ち味のフィジカルの強さを前面に押し出し、さらには試合巧者ぶりも発揮して競り勝った。もっとも日本代表にとっては、『強化』という点で見た場合、敗れたとは言えこの第2戦のほうが第1戦よりも収穫の多い試合だったと言えるだろう。

何人かの選手が2試合通じてプレータイムを得られなかったのは残念だが、この連戦に帯同したことで得た経験は決して少なくないはず。彼らを含め、日本代表で得た経験を各チームに持ち帰り、来週のBリーグでまた向上した姿を見せてもらいたいものだ。