ジェイレン・グリーン

『次世代のエース』が復活、37得点10アシスト

レギュラーシーズン終盤戦、ロケッツのポテンシャルが爆発的に開花した。若手中心の再建が長らく成果を出せず、イメイ・ユドカを新たなヘッドコーチに加え、フレッド・バンブリートやディロン・ブルックスといったベテランを加えて再スタートを切った今シーズンも、個々のタレントがチームとして噛み合わない。技巧派センターのアルぺラン・シェングンがケガで戦線離脱となったところで、ロケッツの挑戦も終わりを告げたはずだった。

だが大方の予想を裏切り、ここからロケッツの快進撃が始まった。ユドカの植え付けたチームディフェンスが形になり、シェングン不在でセットオフェンスが減ってシンプルな堅守速攻へとスタイルを変えたことで、個々のタレントが息を吹き返すことに。特に新たなバスケスタイルに順応できずに大苦戦していた『次世代のエース』ジェイレン・グリーンが見事な復活を遂げて、チームを連勝街道へと乗せた。

勝ってはいても勝率5割以下のチームとの対戦がほとんどで、「対戦相手に恵まれているだけ」との見方もあった。その声を跳ねのけたのが、現地3月27日のサンダー戦での勝利だった。ジェイレン・グリーンは37得点を挙げ、この日も主役を演じている。

サンダーはエースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが右大腿部の打撲で欠場していたが、高さと長さ、身体能力を備えた選手が揃う激しいディフェンスと、どこからでも点の取れるバランスの良いオフェンスという強みに変わりはない。それでも、ロケッツの堅守速攻がそれを上回った。

競った展開が続く中、先に綻びを見せたのはサンダーだった。前半だけで個人ファウル3つのチェット・ホルムグレンが、後半開始直後にジャンプシュートを打った相手選手の落下地点に足を入れてフレグラントファウルを宣告される。ホルムグレンに悪意があるようには見えなかったが、その後は強気なプレーができなくなった。そのホルムグレンは第4クォーター残り8分48秒という早いタイミングでファウルアウトとなってしまう。

これをグリーンは逃さなかった。「試合序盤は相手ディフェンスの狙いの裏を突くことを考えてプレーしたけど、試合が進む中でインサイドを楽に攻められるようになった」と彼は言う。前半10得点だったグリーンは後半に22得点を奪い、オーバータイムでも5得点を挙げた。フィールドゴール24本中14本、3ポイントシュートは11本中7本成功と高確率で決め、なおかつドライブからズレを作り出し、相手のヘルプを引き付けてはパスを出すことで10アシストも記録している。

クラッチタイムでの勝負強さも見事なものだった。同点で迎えた延長残り1分、守備巧者のルーエンツ・ドートのマークをステップバックで振り切って3ポイントシュートを沈める。続くポゼッションではピックに反応してスティールを狙うジョシュ・ギディーを縦へのスピードで抜き去り、残る3人がゴール下を防ぎに来たにもかかわらずトップスピードでのダブルクラッチを決めて、128-123と決定的なリードを奪った。

「オーバータイムに入っても冷静に戦えるようになってきた」とグリーンは言う。「ディフェンスでは必要な時に全員が力を発揮して、相手のシュートを止めた。それが勝因だと思う」

西カンファレンスのトップチームに競り勝ったことで、また自信は高まった。試合後のロッカールームはお祭り騒ぎ。厳格で知られるユドカも「シャイが欠場しようが何だろうが、10連勝であることに変わりはない」と大興奮だった。

グリーンもロッカールームでは大いに騒いだが、会見では落ち着きを取り戻していた。「みんな、それだけうれしかったから騒いだのさ。僕たちはそのために戦ってきた。でも、そこで全員で確認したよ。これで終わりじゃない。あと10試合を集中して戦っていくんだとね。このペースで最後まで戦いぬくつもりだ」