ロケッツ

ユドカの下でトランジションディフェンスが大幅改善

ヘッドコーチにイメイ・ユドカを迎え入れ、フレッド・バンブリートなどのベテラン陣を補強して生まれ変わったロケッツは、今シーズンのサプライズチームとして12月まで勝率5割と健闘しました。しかし、1月からは10勝19敗と大きく負け越し、さらに得点とリバウンドでチームトップ、アシストでも2位の大黒柱であるアルペラン・シェングンが戦線離脱し、このまま終わるものと思われました。

ところがここ10試合で9勝1敗と勝ちまくり、34勝35敗と勝率5割まであと一歩。さらにプレーイン・トーナメント出場の可能性すらも感じさせる勢いがあります。ここ3年間はドラフトで若手有望株が加入してもチームとしてのまとまりがなく、勝てる気がしないバスケットをしてきたロケッツが、シーズン終盤になっても前を向いて戦っているのは驚きです。

最大の変化はディフェンスへの集中力の高さです。昨シーズンはリーグ29位だったディフェンスレーティングが、今シーズンはリーグ8位と劇的に向上しました。その要因としてトランジションディフェンスによる失点の減少が挙げられます。昨シーズンの17.5失点が今シーズンは11.4失点に。なんとリーグ最下位からリーグトップになりました。ロケッツの失点は昨シーズンから6点減っていますが、そのすべては攻守の切り替えを徹底して速攻を防いだ結果と言っても過言ではありません。

もう一つの要因は安易なターンオーバーが減ったことで、8.1アシストに対してターンオーバーわずか1.8というバンブリートの特長がしっかりと出ています。昨シーズンから強かったオフェンスリバウンドも含めて、自分たちのオフェンスの終わり方が良いからこそ、相手の速攻を許さない部分も大きく、ハードワークを基盤としたチームスタイルが浸透してきます。

ハードに守る代償としてファウルがかさみ、相手に与えるフリースロー数はリーグで3番目に多くなっています。またターンオーバーが少なくてもタフショットを多く打つことでフィールドゴール成功率はリーグ26位と、お世辞にもオフェンスが優れているとは言えません。チームスタイルは良い方向に変化しましたが、シュート力などスキル面の改善までは簡単には達成できていないのが現状です。

しかし、最近の10試合はシューティングが好調で平均得点も120を超えています。特にフィニッシュ精度に課題があったジェイレン・グリーンが50%近いフィールドゴール成功率を記録し、平均得点も26.5と絶好調で、プレーヤー・オブ・ザ・ウィークも手にしました。思えばグリーンは新しいチームスタイルに馴染めず、試合終盤をベンチで過ごす時期もありましたが、シーズン終盤になってついにエースとしての役目を果たすようになってきました。

あまりにも多くのことが変わったロケッツの今シーズン。その変化をプレーイン・トーナメント進出という結果として示し、レギュラーシーズンとは異なる緊張感ある試合を若手に経験させることで、さらなる成長を引き出したいところです。残り13試合で10位ウォリアーズと2ゲーム差、いまだ状況は厳しいものがありますが、今のロケッツには『奇跡』を期待したくなるほどの勢いを感じさせます。