ドマンタス・サボニス

フォックスとサボニスを中心に戦術は浸透するも……

西カンファレンスでは5位のペリカンズから10位のレイカーズまでの6チームが勝率5割台と激しい順位争いを繰り広げ、昨シーズンに3位と躍進したキングスも巻き込まれています。順位としては後退した形ですが、勝率で見ると昨シーズンとほぼ変わらず、周囲のチームが勝率を上げる中でキングス自身は変わらぬ戦いをしています。

どんなチームが相手でも破壊するオフェンス力と、どんなチームが相手でも防ぎきれないディフェンス力が、良くも悪くもキングスの持ち味です。得点、リバウンド、アシストのすべてで好スタッツを残すドマンタス・サボニスがチームオフェンスの中心となり、そしてエースのディアロン・フォックスが試合終盤の勝負強さで勝利をもたらす形も昨シーズンから変わっていません。またマリーク・モンクは15.4得点、5.2アシストとともにフォックスとサボニスに次ぐチーム3番目のスタッツを残しており、ベンチからの起爆剤も機能しています。チーム全体のシューティングが安定しない時期があっても、順位を上げるポテンシャルは十分に秘めています。

さらには2年目のキーガン・マレーがエースストッパー役を任されるようになり、オフェンスだけでなくディフェンスでも輝きを見せ始めました。トレードによる補強は上手くいかなくても個人レベルの成長が見られ、チーム戦術がしっかりと構築されています。

キングスの戦いぶりは、長きに渡る低迷から抜け出した昨シーズンがまぐれではなかったことを証明しています。ただその一方でさらなる飛躍を狙った今シーズンに『突き抜けた強さ』を見せられていないのも事実。西カンファレンスでは大きく成長したティンバーウルブズやサンダーが首位争いを演じ、ステップアップできないチームは置いてかれてしまう厳しい環境のため、キングスもプレーオフに向けて何かしらの上積みをしたいところです。

今シーズンで気になるのはチームとしての考え方が選手に浸透し、多様なプレーパターンも用意されている反面で『整理されすぎた感』があることです。時にチーム戦術とは異なるプレーで試合の流れを変えるようなタイプの選手を混ぜ込めていないことです。例えばビッグマンではサボニスが下がってもトレイ・ライルズやサーシャ・ベゼンコフといったアウトサイドの得点力に優れた選手が代役をこなし滑らかなチームオフェンスが継続されるものの、ジャベール・マギーの高さを使って異なる武器で攻めるような変化は出てきません。

3年目のデイビオン・ミッチェルも、その期待に応えられていません。へばりつくようなハイプレッシャーディフェンスが持ち味のエースキラーは、スムーズなスイッチ対応など連携が向上していますが、その分だけ相手のエースが彼のマークを外しやすくなりました。時にはチーム戦術から外れるプレーをしてでも、強烈なディフェンスで試合の流れを変えてほしい存在ですが、チーム戦術をこなす巧みさを身に着けることで逆に物足りなく見えています。

サボニスとハリソン・バーンズが全試合に出場するなど大きなケガとは無縁で、チームとしての機能性にもこれと言った課題はありません。しかし、そのスムーズさが逆に物足りなさに繋がっています。『ないものねだり』の悩みではありますが、プレーオフで勝つためには相手を混乱させるような武器を見つけていく必要があります。