渡邊雄太

サンズ、ネッツとの3チーム間トレードが成立

NBAではトレードの最終期限となった現地2月8日、この『デッドライン』に駆け込みで多くの移籍が成立した。その一つが渡邊雄太を含む、サンズとネッツ、グリズリーズの3チーム間トレードだった。サンズがネッツのロイス・オニールとグリズリーズのデイビッド・ロディーを獲得。ネッツにはサンズからケイタ・ベイツ・ジョップとジョーダン・グッドウィンが移り、グリズリーズにはサンズから渡邊とチメジー・メトゥが移る。

渡邊はNBA6シーズン目をサンズの一員としてスタートさせた。ネッツでプレーした昨シーズン、ディフェンスと3ポイントシュートを武器にケビン・デュラントをサポートできる『3&D』として評価を高め、昨シーズン途中にデュラントを獲得していたサンズに迎え入れられた。ただ、開幕当初こそローテーションに加わり15分から20分ほどのプレータイムを得るも、3ポイントシュート成功率が昨シーズンの44.4%から32.0%へと落ち、『3&D』としての期待に応えられず。ただ、新戦力が多い上にケガ人続出でコンビネーションを確立できず、勝てずに試行錯誤を繰り返すチーム事情に渡邊が振り回された感も強い。12月中旬からローテーション外に置かれ、今年に入ってからの19試合で渡邊の出場は7試合のみ。そのすべてが9分以下のプレータイムだった。

デュラント、デビン・ブッカーとブラッドリー・ビールの『ビッグ3』がようやく揃ったサンズにおいて必要とされたのは、『3&D』として渡邊よりも計算の立つ戦力。こうして白羽の矢が立ったのがロイス・オニールだった。さらにフィジカルに戦えるデイビッド・ロディーをグリズリーズから獲得し、主にディフェンス面でのハードワークを補って優勝を目指すこととなった。

渡邊はグリズリーズでNBAデビューのチャンスを得て、プロキャリア最初の2シーズンを過ごしている。当時は契約が保証されず、優先して起用されるのは他の選手で、2シーズン合計で33試合出場と大きなインパクトを残したわけではないが、その後に続くNBAキャリアの基礎を作ったチームだ。渡邊が去った後、絶対的なエースのジャ・モラントを軸に、デズモンド・ベインやジャレン・ジャクソンJr.といった生え抜きのタレントとともに西カンファレンスの強豪へと成長していたが、今シーズンはモラントが不祥事による長期出場停止を終えた後、9試合に出場しただけで右肩を手術することになりシーズン終了となった。

18勝33敗と勝てていない現状グリズリーズは、すでに来シーズンを見据える動きとしてスティーブン・アダムズとゼイビアー・ティルマンSr.を指名権と交換していた。チーム最多の48試合に出場していたロディーも、今回のトレードで放出した。渡邊はグリズリーズが強く欲しがったというよりは、指名権を確保しつつ全体のサラリーを低く抑えたい意向の中で獲得された印象が強い。それでもロディーは精力的に攻守に働く選手ではあったが、3ポイントシュートが得意ではなく、チーム立て直しのための『3&D』として渡邊に価値を見いだしたのだろう。

グリズリーズはすでにチームとしての目標を失ってしまったが、シーズン後半は個々の選手が自分の実力と評価を高める舞台となる。渡邊は今回のトレードを機にプレータイム増加が見込まれるが、最初のチャンスは与えられるにしても、その後は自分次第。渡邊にとってNBAでの最初の経験となったグリズリーズでの2018-19シーズンと2019-20シーズン、彼はNBAドラフトを経ていない経験の浅い若手でしかなかったが、今はキャリア6年目で若手ではなく、スター選手を擁して優勝を狙うチームでの経験も積み、違う選手となっている。馴染み深いメンフィスに戻って心機一転、決して良い状態にはないグリズリーズを立て直す戦力として活躍してもらいたい。