佐土原遼

宇都宮戦ゲーム2はチームハイの18得点

ファイティングイーグルス名古屋(16勝20敗、中地区5位)はB1第21節(2月3〜4日)で宇都宮ブレックス(29勝7敗、東地区2位)と対戦。ゲーム1は1点差で接戦を逃し(80-81)、ゲーム2は69-81と少し差がついたが、チームの雰囲気は暗くはなかった。ゲーム2を終え記者会見に登壇した川辺泰三ヘッドコーチはこう話した。

「今日はブレックスさんとの一つひとつのプレー精度の違いが出たのかなと思います。ただ悲観はしていません。ここ最近、勝ったり負けたりが続いていますが、チームとしては明らかに成長してきていると思うし、上を向いてきていると感じるので。負けたからといって下を向かず、チームの目標を達成するために、上を向いて成長しながら戦っていきたいなと思います」

川辺ヘッドコーチの言う通り、年明け以降は上位チームから勝ち星を挙げるなど好調だ。その要因として最も大きいのは、開幕直前に左手を骨折した帰化枠のエヴァンスルークの復調と、それに伴ってアーロン・ヘンリーがナチュラルポジションの3番ポジションでプレーできていることではあるが、今シーズンより加入したフォワード・佐土原遼の成長も確かな影響を与えているものの一つだ。

広島ドラゴンフライズから移籍した佐土原は、192cm97kgの堂々たる体格とポジティブなメンタリティーを備えた24歳。今節はスピードのミスマッチを突いた積極的なボールプッシュで攻撃の起点を作り、ゲーム1でヘンリーに次ぐ16得点、ゲーム2はチームハイの18得点と4アシストを挙げている。

佐土原は今節における自身のプレーを次のように総括した。「ブレックスさんが守備の強いチームっていうのは分かっていましたし、土曜日のゲームが始まる前から気持ちを作っておいたので、それを身体で再現できたのが良かったと思います。そしてディフェンスが強いからこそ(間合いを詰めてくるので)ドライブもしやすくなると考えて、周りを見ながらプレーできました。ブレックスのような強い相手でもそういうプレーができるようになったのは1つ成長だと思います」

佐土原遼

「日本代表としてプレーするのが1つの目標」海外挑戦も視野

佐土原は東海大4年時の2020年12月に、特別指定選手として広島に加入。以来2シーズンにわたって広島に在籍したが、平均プレータイムは2021-22シーズンは約8分、2022-23シーズンは約11分程度に留まり、確固たるポジションを獲得するには至らなかった。ところがFE名古屋では34試合中25試合でスタートをつとめ、平均プレータイムは約22分、平均得点は7.5得点とともに倍増している。この理由の一つとして、佐土原は指揮官から求められる役割の違いについて言及した。

「広島はどちらかというとスポットアップやスラッシュで他の選手を生かすようなプレーをしろと言われたんですけど、今は得点を取ってほしいって言われていますし、ハンドラーとして周りを生かすプレーも、リバウンドも、ディフェンスも、ほぼ全部を頑張ってほしいって言われています」

様々なプレーでチームを支えてほしい——。24歳の若さで、エースが揃うフォワードというポジションでそれを担うのはもちろん大変なことだ。しかし一方で、勝敗を左右するありとあらゆる面で自分が必要とされているという実感は、選手としてこの上ない喜びであり、大きなモチベーションだろう。だから、佐土原は力を込めてこう続ける。

「自分はプロ選手として、それをコートで体現しなきゃいけないと思って、今はそれができるようになるためにスキルコーチなどいろいろな人に手伝ってもらっています。いろいろ求められている分、やっぱりそれを返さなきゃいけない。そういう意識や成果が今、ちょっとずつ試合にも出てきてるのかなっていうのはあります」

そして、このような高い要求を突きつけている川辺ヘッドコーチは「本当に真面目で、本当に努力家で、本当に人一倍練習する子」と佐土原を評し、この日7本中1本成功に終わった3ポイントシュートについても「確率は悪いですけど、打っていくことが彼の成長に繋がると思うので、大きな問題とはとらえていません」ときっぱり言った。

川辺ヘッドコーチからの要求について「自分が『今後こういう選手になりたい』と思っているような選手になるために必要なことでもある」と話した佐土原が見つめているのは、海の先だ。「やっぱり比江島(慎)選手だったりとかそういうクラスの選手になって、日本代表としてオリンピックとかワールドカップに出るのが目標なんですけど、その先にある海外も視野に入れながらプレーしていきたいなと思っていますし、同世代の選手たちには負けたくないとも思っています」

同地区の後塵を拝するサンロッカーズ渋谷、川崎ブレイブサンダースとのゲーム差は4。主力が戻り、新加入の若手である佐土原が伸び盛りという状況のFE名古屋が、ここからB1常連チームとの序列をひっくり返す可能性は大いにある。