文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

栃木相手の善戦にも「負け続けることは許されない」

Bリーグの中でNBAを経験したことがある選手は少なからず存在するが、昨シーズンまでNBAでプレーしていたという『バリバリの元NBA』はサンロッカーズ渋谷のロバート・サクレを置いて他にいない。そんなサクレの加入でSR渋谷は勝ち星を重ねていくと予想されたが、実際には思わぬ苦戦を強いられている。

先週末に行われた栃木ブレックスとの試合では接戦を演じるも連敗を喫した。サクレ加入後のチームは1勝4敗と思うように勝ち星が上がらず、ケミストリーの構築にはまだ時間を要している。

それでも栃木を指揮するトーマス・ウィスマンは「サクレが加入して今後は今まで以上に危険なチームになってくる」とSR渋谷が持つ伸びしろを警戒した。

29日の試合では栃木を相手にダブル・オーバータイムまで戦ったサクレは、その中で得たことをこう語る。「今日のようなゲームができたことで選手の特性が見えました。自分たちがビッグショットを決めたこと、接戦の中でシュートを決めたことは今後につながると思います」

ただ、善戦しながらも連敗した結果については、真剣な眼差しで「してはいけない」と語気を強めた。「倒すのが難しい相手に対しチームとしてやれたことはたくさんあります。こういうゲームから学び、次につなげるのは大切ですが、負け続けることは許されません」

SR渋谷のヘッドコーチ、BTテーブスが試合を振り返りサクレ頼みになってしまったことを敗因に挙げた通り、サクレにかかる負担は想像以上に重かった。それでも、自分には責任があると一つも言い訳をせず試合を振り返る。「求められる役割は分かっていますし、ディフェンスでもオフェンスでも自分には責任があります。自分としても良くなっていけるよう頑張ります」

延長戦最後のポゼッション、SR渋谷は当然のようにサクレの1on1を選択。だがサクレは勝負を分けるシュートを決めきれず、結果的に再延長の末、栃木に敗れた。「私があのシュートを決めていればゲームは勝っていました。そういう大事なシュートを打って決められなかったのは反省点です。次にあのような状況で打つときは必ず決めないといけない」と悔しさをにじませた。

『サクレ効果』でますます注目を集めるSR渋谷

栃木との2試合、チケットはソールドアウトとなり立ち見客が出るほどの盛況ぶりだった。青山学院記念館には3000人を超える観客が訪れ、スタンドは黄色く染まった。さすがにNBAほどの規模とまではいかないが、その熱狂的な雰囲気はサクレを驚かせた。「すごい雰囲気でした。もちろんレイカーズと比べて規模は小さいかもしれないですが、何人入ったかは関係なく、素晴らしい雰囲気ができていました」

サクレの好ディフェンスで追い付き、延長戦へ持ち込んだ直後には両手を広げ会場を煽り、観客もそれに応えた。ファンの存在は力になるということを実感しているからこそ出た行動だろう。「ファンのサポートというのは本当に力になります、自分にとっても良い環境だと思っています」

『Bリーガー』としての生活をスタートさせたサクレだが「言葉の壁」や「環境の変化」、「文化の違い」といったギャップの問題は全くないと言う。「日本の人はみんな親切で、不満を抱えることなく良い生活ができています。よく休めてリフレッシュできています」

リーグは後半戦に突入し、プレーオフを見据えてこれまで以上に激しさが増していく。「スマート」と称する日本のバスケットに順応するにはもう少し時間がかかるかもしれない。それでも素敵な笑顔で皆を照らし、文字通りSR渋谷の太陽となった時、チームは完成形を迎えるだろう。