松脇圭志

「今シーズンの中でも良い内容の試合だったと思います」

11月8日、琉球ゴールデンキングスは三遠ネオフェニックスとのアウェーゲームに臨むとオフェンス爆発で92-69と快勝。連勝を4に伸ばしている。

序盤から琉球は強みであるリバウンド争いで後手に回り、多くのオフェンスリバウンドを取られる嫌な展開となる。しかし、松脇圭志が第1クォーターだけで3ポイントシュート4本中4本成功の爆発で、チームに勢いを与える。松脇の活躍もあり琉球は前半で19本中10本成功と3ポイント攻勢で得点を量産。また、前半は9本中3本成功のみと三遠のフリースローミスにも助けられ、14点リードでハーフタイムを迎える。

後半の出だし、琉球は開始1分でチームファウルが3と悪い流れになりかける。しかし、ここで小野寺祥太が敵陣でのスティール、ルーズボール奪取と続けて守備のビッグプレーを決めると、このチャンスをヴィック・ローがしっかりと決め切ることで、主導権を渡さなかった。こうして要所をしっかり締めることで最後まで崩れることなく、琉球がセーフティリードを維持して逃げ切った。

琉球に先制パンチをもたらした立役者の松脇は、試合全体で3ポイントシュート9本中7本成功の21得点に加え3スティールと活躍。「プレッシャーが強い三遠さん相手に出だしからしっかりプレーできました。今シーズンの中でも良い内容の試合だったと思います」と試合を振り返る。

そして長距離砲の爆発については「ここ何試合か、シュートが入っているので出だしからどんどん狙っていこうと思っていました。その積極性が良かったと思います」と語る。この試合だけでなく松脇は11月2日の越谷アルファーズ戦で5本中5本成功、5日の富山グラウジーズ戦でも8本中4本成功しており、ここ3試合の合計は22本中16本成功と驚異的な成功率だ。

何か好調の秘訣があるのかを聞くと、松脇は「なんで入っているのかは自分でも理解していないですけど、良い流れが来ているので、自分が打とうという気持ちは増していると思います」と自然体でプレーしている。シューターとして、ここまで絶好調だと自分にパスをどんどん出してほしいというメンタリティーにもなるものだが、「そういう気持ちも一応はありますけど、本当にチームで作ったシュートを打てていて、今はパスが来るのを待っていればいい。無理なシュートは打たないようにしています」といつも通りの姿勢だ。

松脇圭志

「みんなから『お前のホームコート』と言われています」

ちなみに桶谷大ヘッドコーチは、松脇のシュート好調の要因の一つとして、最近東アジアスーパーリーグ(EASL)の試合がないことを挙げる。「EASLで使うボールは、Bリーグと違っていますが彼に合っていない。ここまで開幕節を戦った後、EASLをプレーしてシュートが入らなくて、メンタル面に少なからず影響もあったと思います。今、彼のシュートタッチが良いことは間違いないです」

そして、松脇本人も「僕の中では大きいです」と指揮官の見解に同意する。「EASLのボールは本当に入らないので大嫌いです。ボールが切り替わるのは難しくて、これからもEASLはあるので、どうしていこうかと考えているところです」

また、ディフェンスに関して「そんなにしていましたか?」と3スティールを記録したことに自ら驚いていたが、「このチームの在籍年数も長くなってきましたし、桶さんの求めているディフェンスをどんどんやっていこうと思っています。新しく入ったサド(佐土原遼)、(小針)幸也に、自分たちのやるべきプレーを見せていかないといけないです」と、チームの根幹である強度の高いディフェンスの体現を強く意識する。

故障者続出と苦しい台所事情の琉球にあって、今の松脇は攻守で質の高いプレーを見せることで存在感をどんどん高めている。ただ、桶谷ヘッドコーチにとって、この松脇の活躍ぶりはサプライズではなく、ウイング陣の中心になれる選手と大きな信頼を寄せている。「昨シーズンも脳震盪やケガをする前は、良いプレーを見せていました。欠場明けから自分のリズムを取り戻せず苦しんでいましたが、チャンピオンシップでは3ポイントシュートを決めています。昨シーズンの開幕前、今村(佳太)、田代(直希)、牧(隼利)が移籍しており、もっと松脇が前に出てきてほしいと思っています。今、こうして彼がチームを引っ張ってくれているのは大きいです」

ちなみに今日の会場は、チャンピオンシップ・セミファイナルと同じ浜松アリーナだ。セミファイナル第2戦、琉球は初戦を落として負ければシーズン終了となる中、2点を追う最後のオフェンスで松脇がフリースローライン付近でオフェンスリバウンドを右手だけでつかんで放った起死回生の同点ブーザービーターを決めることでオーバータイムに持ち込んだ。『神の右手』と評されたこの劇的シュートによって九死に一生を得た琉球は、4年連続ファイナル進出を達成した。

この思い出深い浜松アリーナで、松脇は再びの大暴れを見せた。「去年のチャンピオンシップのこともありますけど、入らない時は入らないので関係ないと思います」と本人は相性の良さを特に感じてはいないが、「みんなから『お前のホームコートだ』と言われています」と笑顔を見せる。

連敗スタートだった開幕当初に比べると、琉球は明らかに調子を上げており、松脇も「コミュニケーションも増えてきましたし、チームとしてまとまってきた手応えは最初に比べるとあります」と言う。この良い流れを維持し、さらに勝ち星を増やしていくためにも、松脇の長距離砲はオフェンスの起爆剤として欠かせない。