八村塁

守備に意識を向けた前半、後半に一気にアクセル全開

「ディフェンスが我々のアイデンティティでなければならない」とヘッドコーチのダービン・ハムは信念を語る。レイカーズは2試合前からポイントガード不在の先発ラインナップを採用しており、現地12月28日のホーネッツ戦でキャム・レディッシュが股関節の痛みで欠場しても、守備に課題があるとされるディアンジェロ・ラッセルもオースティン・リーブスはベンチスタートのままだった。

ここで先発に抜擢されたのは八村塁で、レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビス、トーリアン・プリンスとジャレッド・バンダービルトという超ビッグラインナップとなった。

ガード不在の奇妙な先発陣は、立ち上がりこそホーネッツのスピードと3ポイントシュートに苦しめられたものの、第1クォーターに6本決まったホーネッツの3ポイントシュートの当たりが止まると、デイビスがペイントエリアを支配する盤石のディフェンスがモノを言い始める。ラッセルとリーブスは試合開始から5分で同時にコートに入り、それを機にスピードが上がることでレイカーズの攻めには良いメリハリが出た。

八村はディフェンスをこじ開けての得点力は魅力でも、ディフェンスには難があると評価されているが、この試合ではディフェンシブな先発ラインナップの一角という役割を十分にこなした。デイビスは言う。「先発の5人は特にディフェンスを意識する。前回までのラインナップは全員が守備意識が強いから、どうやって守ればもっと上手くやれるか突き詰めていきたい。今日はキャムが抜けて塁を起用した。ラインナップは一つに固定して、いろんなプレーの形を確立したいけど、今日みたいな状況に対応できることも大事だ」

前半は点差こそ離れなかったが、レイカーズはディフェンスを優先して自分たちのリズムを作った。そして第3クォーターに一気に主導権を引き寄せる。41-23のビッグクォーターで、レブロンとともにチーム最多の12得点を挙げたのは八村だった。プリンスとの連携でこの試合チーム最初の得点をダンクで決めた八村だったが、チームの方針に合わせて慎重なプレーに終始して前半は5得点止まり。それでも第3クォーターは積極的にアタックし、フィールドゴール6本中5本を決めた。

レブロンのパスに反応するゴール下での力強いシュートもあれば、得意のミドルジャンパーもあった。強引なドライブからコディ・マーティンを吹き飛ばして決めたダンク、ラッセルのハイローを流れるような動きからダンクでフィニッシュするプレーもあった。重要なのはレブロンとデイビスがベンチで休んでいた時間帯にも、八村の活躍でチームが勢いを失わなかったことだ。

第3クォーター途中に一度ベンチに下がったレブロンとデイビスは、結局コートに戻る必要がなかった。八村も終盤はプレーせず。それでも28分のプレーで17得点を挙げ、課題のディフェンスでも脆さを見せることなく得失点差+34を記録した。

ダービン・ハムの選手起用は懐疑的な目を向けられているが、勝てば評価もついてくる。八村のパフォーマンスも同様で、17得点は驚くような出来ではないにせよ、ディフェンスで勝利に貢献する実績を重ねていくことで、選手としての評価は大きく上がるはずだ。