バーレルが負傷交代した後も激しくファイトする名古屋D
20勝13敗で中地区2位に付ける名古屋ダイヤモンドドルフィンズが、28勝5敗とリーグ最高勝率を誇る川崎ブレイブサンダースをホームの愛知県体育館に迎え撃った第1戦は、両チームが故障者を出しながらアップテンポで打ち合う、見応えのある展開となった。
第1クォーターは23-19のスコア以上に名古屋Dのペースだった。川崎の得点源、ニック・ファジーカスをダブルチームで対応しリズムに乗らせず、オフェンスリバウンドを奪ってのセカンドチャンスから効率良く得点を挙げていく。ファジーカスが7本中2本しかシュートが決まらず苦しむ一方で、名古屋Dはジャスティン・バーレルがインサイドで7本中6本を決めチームを勢いに乗せた。
ところが第1クォーター残り30秒の場面で、そのバーレルが倒れる。ドライブで踏み込んだ際に右ふくらはぎの筋肉を痛めてベンチに下がり、そのままコートに戻って来ることはなかった。名古屋Dはジョーダン・バチンスキーが体調不良でベンチにも入っておらず、残る外国籍選手はジェロウム・ティルマンだけに。外国籍選手オン・ザ・コート「1」の名古屋Dが「2」の川崎を相手に4点リードする第1クォーターだったが、バーレルのケガで不穏な空気が立ち込める。
それでも第2クォーター、オン・ザ・コート「2」でも1人しかいない外国籍選手のティルマンが、バーレルの分までと攻守にフル回転。張本天傑が3ポイントシュートを決めた後にティルマンも続き、さらにはティルマンのアシストで鵜澤潤と、3連続3ポイントシュートで32-23と一気にリードを広げた。そして川崎にもアクシデントが。ライアン・スパングラーが左足を痛めてベンチへ下がり、こちらも試合には戻って来れなかった。
だが、川崎も負けてはいない。反撃のきっかけを作ったのはこの試合が復帰戦となる辻直人。ドライブからのキックアウトで長谷川技の3ポイントシュートを連続でアシストすると、自らも3ポイントシュートを決めて33-35と2点差まで追い上げる。オフィシャルタイムアウトの後は両チームともガンガン走るトランジションゲームとなった。
スピードでは名古屋Dが上だが、切り替えの速さでは川崎に分があり、一歩も譲らないエキサイティングな試合展開に。この強烈な叩き合いを制したのは名古屋D。ティルマンの鮮やかなタップシュート、最後は笹山貴哉がポンプフェイクでマークを外しての難しいジャンパーを沈め、46-42とリードして前半を折り返した。
後半の立ち上がりに川崎が一気のランでペースをつかむ
前半は名古屋Dがアクシデントがありながらもスピードとガッツで王者川崎を上回った。しかし、川崎はハーフタイムにきっちり修正し、後半からギアを一段上げたプレーを見せる。
立ち上がり、前半には相手のプレッシャーの前に何もできなかったジュフ磨々道が落ち着いてゴール下から得点を奪うと、ここから篠山竜青の3ポイントシュート、長谷川、ファジーカスの連続得点による9-0のランで51-46と一気にひっくり返す。
タフショットを沈め続けたオフェンスにはツキに味方された部分もあったが、ディフェンスでは前半の名古屋Dに勢いを与えていたリバウンドとルーズボールを押さえるという任務を完璧に遂行。さらには永吉佑也がティルマンをがっちりと抑え、名古屋Dの勢いを削いだ。
第3クォーター終盤にはタッチの悪かったファジーカスにも当たりが出て、バスケット・カウントの3点プレーを連続で成功させ、このクォーターを26-10と圧倒。68-56と大差をつける。
第4クォーターの立ち上がり、オン・ザ・コート「2」ながらファジーカスをベンチに下げた川崎に対して、追う立場の名古屋Dはティルマンを使い続けるしかない。その間も辻が長距離の3ポイントシュートを沈めて点差を広げ、名古屋Dがオールコートでプレスをかけても高速パスワークで振り切り、栗原貴宏のドライブレイアップ、永吉のゴール下でリードを広げていく。
名古屋Dは出ずっぱりのティルマンがあきらめずに攻め続け、2本の3ポイントシュートを含む12得点を第4クォーターで挙げ、特別指定選手の安藤周人(青山学院大)の初のフィールドゴールとなる3ポイントシュートも飛び出し追い上げるが、終盤で2桁の差が付いては試合巧者の川崎を慌てさせるには至らなかった。
最終スコア93-84で川崎が勝利。ハイテンポな打ち合い、ケガ人が出てイレギュラーな選手起用を強いられたこともあり目まぐるしい展開となったが、結局は後半立ち上がりに川崎が決めたランが勝利の決定打となった。
北卓也ヘッドコーチは「前半46失点、ターンオーバーからとオフェンスリバウンドで半分以上やられていて、そこをハーフタイムで修正できた」と、後半にひっくり返した試合を振り返る。「疲労は溜まっているが控えの選手も頑張ってくれているので、チーム一丸となって連勝したい」と語った。
ゲームハイの得点を挙げたのは川崎のファジーカスで25得点。相手守備に大いに苦しめられても数字はまとめてくるのがリーグ最強の点取り屋たる所以だろう。名古屋Dでは攻守にフル回転したティルマンが21得点、バーレルは9分半のプレータイムで12得点を記録。彼のケガがなかったら勝敗は分からなかった。また笹山は両チーム通じて日本人選手最多となる19得点を記録している。
バーレル、スパングラーともにケガをした後はベンチで戦況を見守ったが、試合後は松葉杖でロッカールームへと引き上げた。どちらも明日の出場は難しそうで、両チームのヘッドコーチにとっては選手起用の手腕が問われる第2戦になりそうだ。