富樫勇樹

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

孤軍奮闘も終盤に失速、連勝は14でストップ

2月3日に行われた栃木ブレックスとの第2戦に敗れ、千葉ジェッツの連勝は14で止まった。「ウイングのディナイも含め、すべて栃木の激しさにこっちが引いてしまっていた。前半はずっと栃木のペースでプレーさせてしまったなと」

試合をこう振り返るのは富樫勇樹だ。平均84.5得点とリーグトップの得点力を誇る千葉が栃木の堅守を崩せず、逆に速攻を許したことで23-37と前半で大量のビハインドを背負った。

そんな状況でただ一人、個で打開できたのが富樫だった。富樫はショットクロックが少なくなる中でボールを託されると、ディフェンスを左右に振り、急ストップからの3ポイントシュートを連続で沈めていく。前半の23得点のうち14点が富樫の得点と、その孤軍奮闘ぶりが分かる。

チームオフェンスを封じられたことで富樫が打開するしかなかった。「自分一人でやりたいという気持ちではなく、インサイドの1対1があまりうまくいっていない状況でしたので。形はどうであれ1点でも詰めたいという気持ちが、ああいうプレーになりました」

それでも後半に入ると千葉が息を吹き返す。石井講祐の連続3ポイントシュートで流れを引き寄せると、マイケル・パーカーがフィニッシャーとなるトランジションで1点差まで詰め寄ったが、その先が続かなかった。

千葉を指揮する大野篤史ヘッドコーチが「戦う相手を間違えたのが一番」と話し、富樫も「40分間激しいディフェンスをしてきて、少しずつフラストレーションを含めたイライラが溜まっていた」と漏らしたように、その後に集中力を欠いた千葉は急激に失速し、大敗を喫した。

富樫勇樹

「何か変えなきゃいけないというのはない」

栃木のホーム、ブレックスアリーナの熱狂については、どの選手も脅威を感じると口を揃える。富樫も例外ではなく、「アウェーのブレックスアリーナで連勝するというのは、本当に大変なこと」と実感したという。だがそれと同時に、「チャンピオンシップで20点差をひっくり返された敗戦というのは心に残っていますが、昨シーズンも連勝していますし、苦手な印象は僕はないです」と語る。

千葉にとっては連勝が14で止まり、ゲーム差を離すチャンスを逸しただけに、ダメージの大きい敗戦かと思われた。それでも富樫は「今日の試合どうこうは、あまり気にしていない」と動揺はない。それは栃木の強さを素直に認めるとともに、ここまで積み上げてきたものに対する自信があるからだ。

「今日の負けより、この14連勝、天皇杯を含めたら17連勝してきた今までのことを一度褒めて、次のステップに進みたい。今まで悪い部分が多少あったにしろ勝ってこれました。この1試合で何か変えなきゃいけないというのはないです。相手は栃木ブレックスさんでしたし、14連勝というのがそれを物語っているので」

チーム記録を更新する14連勝目を挙げた相手も、天皇杯3連覇を成し遂げた決勝戦の相手も栃木であり、特別な苦手意識はない。現在のリーグ最高勝率が示す通り、千葉は優勝に一番近い存在だと言える。連勝記録のプレッシャーから解き放たれたことで、肩の荷も下りたに違いない。敗戦後にもかかわらず、どことなくスッキリした表情を浮かべる富樫。負けてなお、チーム力に自信を持っていることがうかがえる。