『Bの現在地』を探るvol.1 比留木謙司(富山グラウジーズ)「お客さんが満足して帰れば僕らの仕事は大成功」

2017/02/02
Bリーグ&国内
765

文=大島和人 写真=B.LEAGUE

ある時は「ジャンボくん」と死闘を繰り広げるエレファントハンター。ある時は熊本の畳投げ大会チャンピオン。またある時は漫画やアニメ、ゲームを熱く語るオタク。そしてある時は富山グラウジーズのパワーフォワード……。

比留木謙司は多彩な顔を持つ個性派バスケットボール選手だ。特にネット上での『刺さる』発言とノリのいいユーモアはお馴染みだし、なかなか弁も立つ。いい意味でオタク気質を感じさせる観察眼の持ち主でもある。キャラの面白さとBリーグ有数の発信力を併せ持つ選手で、選手としてのキャリアを終えた時にはおそらく良い解説者になるだろう。

31歳の彼はbj、JBL、NBLと5つのプロチームを渡り歩いたキャリアを持ち、B2やB3の現場に足を運ぶ『ファン目線』の持ち主でもある。そんな彼に富山、そしてBリーグ全体について語ってもらえればきっと面白い。そう考えて比留木選手にインタビューを行った(取材日:2017年1月22日)。

お金を払ったお客さんに楽しんでもらうのが僕のスタンス

――琉球ゴールデンキングスに連勝して、直近の5試合は4勝1敗です。チームの状態がずいぶんよくなっている印象ですね。

デクスター・ピットマンがインサイドで頑張っています。そこまで器用な選手ではないですけれど、自分ができる仕事はしっかりこなしてくれる。あのサイズの選手にしてはすごくハードワークもする。今日も速攻で先頭を切って走っているシーンがありました。ああいう大きい選手が頑張って走る姿を見ると、ガードの選手もサボれないですね。

――あれだけ強烈なフィジカルを持つ選手を日本で見ることはなかなかないですよね。

彼はNBAにいましたし、サイズ(211cm128kg)で言ったらかなりの重量級ですよね。Bリーグだとアイザック・バッツ(シーホース三河)が近いんじゃないですかね? バッツはこのリーグが長いということもあって、我々と対戦した時はイニシアチブを握られました。でもピットマンも試合ごとに良くなっています。今はミドルも入りますし、フックシュートも左右両方から攻められるので。

――その一方で富山はまだ中地区最下位です。今季は残留争いも意識しなければいけません。比留木選手として後半戦のターゲットをどう考えていますか?

選手同士で、特に上の目標がどこというのは定めていないんですけれど……。1月18日に三遠(ネオフェニックス)戦に負けた時と、その前の三河に負けたあたりですよね。負けが込んでいたので『自分たちは本当にこのままでいいのか?』という話はしました。『自分がいるチームを降格させた』ということにならぬよう、そこは選手としてのプライドを持とうということです。ただ勝率を計算するという段階には来ていないと思うので、目の前の一戦一戦をどうこなすかですね。

――比留木選手はベンチで声を出す、立ち上がって盛り上げる姿が印象的です。そこはこだわっている部分なのかなと思って見ているんですが?

ここのチームに関しては、僕がやらないとみんな静かなので。他にやる選手がいたら僕はやらないですよ(笑)。まあ、それぞれ役割がありますからね。バスケットって本当にムードが左右するモノだと思うので。それに負けているからと言ってお通夜というのは、お客さんが見ていても、あまり面白くはないですよね。せめて体裁だけでも『気合が入っているぞ』というところを見せないと。常に見られているという意識はあります。

――お客さんを盛り上げようという意識もあるんですね。

そう思いますよ。話が脱線するかもしれないですけれど、究極的には勝っても負けてもお客さんが「今日は面白かったね」と帰れば、僕らの仕事は成功なんですよね。そこはおざなりにしちゃいけない。今はバスケを始めた時にもうプロリーグがあったような子たちがだんだん出て来ています。なので、その辺の意識は若い子たちの方があるんじゃないですかね?

ベテラン、中堅選手は『ひたむきに』『黙々と』というのが美徳としてある。それはそれでいいんですよ。でも全員をそれがやっちゃうのは、あまり好きじゃない。お客さんがお金を払うのであれば、2時間3時間楽しんで帰ってもらおうというのが僕のスタンスです。

僕たちはみんなで一つのエンターテイメントを作っています

――昨年はNBLもbjも降格という制度がありませんでした。選手にとってはシビアな仕組みでもありますが、そこをどう受け止めていますか?

素晴らしいと思います。今はB1、B2、B3で45チームあって、B3はまた話が違ってくるんですけれど、B1とB2に昇降格があるというのは、消化試合をなくすという意味でもすごくいいと思います。

ただ僕の中ではbjリーグのプレーオフの枠(昨シーズンは24チームのうち16チームが出場した)は広すぎた気がしました。「勝率が5割を下回っているのにプレーオフってどうなんだろう?」と思っちゃうんですよね。今のフォーマット(18チーム中8チームがチャンピオンシップに出場/降格は最大3チーム)は嫌いじゃないです。でもプレーオフの仕組みは残念です。

――各プレーオフのファイナルは一発勝負。セミファイナル、クォーターファイナルは1勝1敗で2試合が終了した場合、5分ハーフの「延長戦」で決着をつけるという仕組みですね。第3戦以降を開催した場合のアリーナの調整、平日開催の問題もあるのでしょうが……。

リーグ、クラブの経営という部分ではあると思うんですけど、選手からして見るとそこは頑張ってほしいですよね。

――比留木選手はB2の長野やB3の金沢の試合を、お客さんとして見に行かれていましたよね? ご覧になって、どういう感想を持ちましたか?

B2なら試合によってはB1と同じレフェリーが吹きますけれど、B3になるとA級とかAA級が足りないということがあるようです。地方協会のレフェリーとかが担当になって、選手とレフェリーの双方に対応し切れていない部分があるように見えました。

ただし、レフェリーにしても、テーブルオフィシャルにしても運営側にしても選手にしても、みんなで一つのエンターテイメントを作っています。あまり敵対せずに前に進めればいいと思うんです。僕がこんなことを言うと、みんな「嘘だろ」っていうんですけれど(笑) でも僕はレフェリーを決して敵だとは思っていませんので。

良い発見としてはB2にしろB3にしろ、興行面ですごく特色を出そうと工夫されているところ。バスケット自体のレベルに差があるないは、それぞれの感覚があると思いますが、エンターテイメントという部分で地方色を出したりしていたのは間違いなくいい部分でした。それは楽しめましたね。

例えば金沢(金沢武士団)は加賀百万石で、ということもあってチアが和服っぽいコスチュームを着ていて……。そうやって、それぞれが自分たちの方向を模索しているのはすごくいいと思います。金沢はB3ですけれど、ちゃんと吊り下げ式のビジョンもありましたね。

見られている時の振る舞いのクオリティを上げなければ

――Bリーグ全体の『見せ方』について、考えているところはありますか?

メディアに対する売り込みは、今すごいリーグとしてかけている部分があると思います。真新しい部分を発信してメディアさんに食いついてもらう、売り込みをかけるから目新しいものを用意して、それを取り扱ってもらうというサイクルがあって、リーグやチーム側の努力はすごく見られています。

あとは選手たちがプレーのクオリティとともに、見られている時の振る舞いのクオリティを上げなければいけない。そこはネットリテラシーというか、見えてはいけないプライベートがSNSで発信されていることもあって、僕はあまりそういうのが好きじゃないですね。

僕もTwitterとかで無茶苦茶というか、普通の選手が言わないこと、結構ふざけたことを言っています。でもあれもある種、自分の見せ方であって、それでお客さんが楽しめるということは考えています。それも選手個人の能力だし、商品価値の高め方だと思っています。

──見せる必要がないモノ、例えば舞台裏的なものまでは見せるべきではないと?

そのメリハリをつけることが必要です。試合の演出的な見せ方は上達していると思うんですけれど、あとはレフェリーとオフィシャル、現場の選手、スタッフがもっとクオリティを上げていかなければなと思います。でもレフェリーの方は今までとかなり違いますよ。NBL、bjリーグとありましたが、年を追うごとに良くなっていると思います。

結局は選手とレフェリーって一緒にゲームを作る立場です。バットコールもあるけれど、選手もちょっと掴んだり何だったりということをゲームの中で起こします。その部分でゲームが一線を越えないように、自分たちで上手くやりましょうねというのが目標だと思うんです。そこのところで言えば、レフェリーが選手に歩み寄ってくれているのかなという風に思いますね。

――レフェリーも選手やお客さんと一緒にゲームを作る意識が高まっているということですか?

そうですね、努力されていると思いますね。あとは責任や報酬をもっとレフェリーに与えてあげられれば、彼らがバスケットと向き合う時間が増えてくると思うんです。技量も体力もそうですが、若い子から『レフェリーで一旗揚げるんだ』という子が出てくるかどうか? 今の待遇で次から次へと出てくるかと言えば、そこ疑問が残るところですよね。これは1年2年で解決する問題じゃないんでしょうけれど。

ただBリーグのトップレフェリーがインターハイの決勝を吹いているとか、関東大学リーグを吹いているという部分は、あまり納得がいっていません。バスケットの質がかなり違うから、笛の感覚を切り替えていると言っても、突っ込まれる隙を作ってしまっているように思うんです。そういうところも含めて、一歩ずつクリアになっていけばいいと思っています。

努力する手を緩めなければ自ずとBリーグは盛り上がっていく

――Bリーグが成功する、日本のバスケが良くなるという希望、期待感は持てていますか?

期待はすごくしています。鶏が先か卵が先かの話になるんですけれど、選手が良いからリーグが盛り上がるのか。リーグが盛り上がってきたから選手たちが引っ張られて底上げになるのか……。どっちが先かという話になるんですけれど、双方が努力する手を緩めなければ、『これでいい』と緩めずに野球サッカーに並ぶくらいの意気込みで、なおかつ自分たちの持ち味を出していけば、自ずとBリーグは盛り上がって行くんじゃないですかね。

――今まではプロ選手として、フラストレーションを抱えながらやっている部分もあったんだろうと思いますが、どうでしょう?

僕のキャリアの中で正直、不満がない年は一つもないですよ。ただその責任の所在、矛先というのは一つじゃない。先立つものがないというところでスタッフが少ない。スタッフが少ないからファンに対してのコントロールができない。ファンに対してのコントロールができないから選手に対しての負担が大きくなる……とか。ただそれがBリーグになって、良い兆しが見えてきているとは思います。

仕事として確立できなければ球団職員も選手も、業界に入ってきません。現場の人間が潤うようになっていけばより面白いモノ、よりクオリティの高いモノも見せられるんじゃないかなと。今いる選手、現場やフロントのスタッフは自分の仕事をしっかりこなす代わりに、自分の報酬をもっと貪欲に求めることを追求していいと思います。


不真面目だったら幻滅するし、真面目すぎても面白くない。そんなジレンマのちょうどギリギリを探っているのが比留木選手なのかもしれない。彼なりに「プロとは何か?」「どうあるべきか?」を真剣に考えていることが伝わってきたインタビューだった。

東京に帰る記者に「幻のぶり寿し」と「焼き鯖の一本寿司」をお土産で持たせてくれたのも、エンターテイナーとしてのサービス精神だろう。ごちそうさまでした!