ニコラ・ヨキッチ

若手が苦しむ現状、指揮官はローテーション変更を示唆

ナゲッツはここまで10勝6敗、西カンファレンス5位と、その数字だけを見れば無難なスタートを切ったように思えるが、8勝1敗でスタートした後に失速し、直近のアウェー5連戦で1勝4敗。マジック戦に続きロケッツ戦でも、万能のポイントセンターであるニコラ・ヨキッチの活躍は許しても、他の選手はリズムに乗せない『ナゲッツ対策』にハマって敗れている。

先発ポイントガードのジャマール・マレーがハムストリングを痛めて戦線離脱となり、ヨキッチとのコンビネーションから無限のオフェンスバリエーションが生まれる強みは消えている。それでも、ヨキッチがマジック戦では30得点13リバウンド12アシスト、ロケッツ戦では38得点19リバウンド8アシストと驚異的なスタッツを残しているにもかかわらず勝てていない。

NBAのシーズンは長く過酷で、開幕から1カ月が経過しただけの今の段階でチームの良し悪しを判断するのは早すぎるが、インシーズン・トーナメントではグループリーグ敗退が早々に決まってしまった。そして、ヘッドコーチのマイケル・マローンは短気な性格で、言い方を変えれば決してチームの問題を見過ごさない指揮官である。

優勝を勝ち取った昨シーズンから、ナゲッツの問題はベンチにあった。先発メンバーは個々の質が高く、ヨキッチとマレーを中心に阿吽の呼吸が成り立っている。その一方でベンチメンバーは個人能力も連携の面でも見劣りし、ベストメンバーが揃っていない時間帯をどう乗り切るかが課題となる。

ブルース・ブラウンが退団した今のベンチで計算が立つのは2年目のクリスチャン・ブラウンのみ。若手のジーク・ナジとペイトン・ワトソン、ルーキーのジェイレン・ピケットとジュリアン・ストローサーがローテーションに入っているが、パフォーマンスが安定しない。ロケッツ戦ではアーロン・ゴードンがフィールドゴール12本を放って成功なしと大不振、マジック戦では守備で狙い撃ちにされたマイケル・ポーターJr.をクラッチタイムでベンチに下げており、いまや問題はベンチ組から主力組にまで伝播しようとしている。ロケッツ戦でのヨキッチの出場時間は42分まで伸びた。マレーがケガをしたのは39分プレーした翌日の試合。レギュラーシーズンのこの時点で2人がこれだけの負担を抱えなければならないのでは、シーズン終盤の勝負どころを考えると不安でしかない。

マレーの代役を務める33歳のレジー・ジャクソン、34歳の控えフォワードであるジャスティン・ホリデーは、ベテランらしくチームを支えている。ただ、ナゲッツの描くプランでの彼らベテランはサポート役であり、主題は若手が新たな主力へと成長することだ。サラリーキャップの制約がどんどん厳しくなっていく中、ベテラン最低保証額を受け入れる選手ではなく若手の成長に賭けるのがナゲッツのやり方。ヨキッチ、マレー、ポーターJr.が大成し、今はクリスチャン・ブラウンがそれに続くと期待されているが、毎年のようにそんな選手を生み出すことでナゲッツはサステナブルな強豪チームになろうとしている。

それと同時に、ナゲッツは悠長に若手の成長を待てる再建チームではない。直近の1勝4敗は指揮官マローンにとっては危険信号であり、ロケッツ戦を終えたロッカールームで次の試合からローテーションを変更すると選手たちに伝えたそうだ。「ジャマールがケガをしていなければ、何試合かは勝っていただろう。だが、実際問題として彼はここにいない。だったら勝つための別の方法を見いださなければいけない」とマローンは言う。「全員が何らかの形で貢献しなければならない。パーティーに手ぶらで来てはいけないんだ」

ケンテイビアス・コールドウェル・ポープは言う。「僕らにコントロールできることの一つは努力だ。正しいポジションに入ること、アグレッシブにディフェンスし、トランジションで走る。そのエネルギーを出すことを惜しんではいけない」

1年目や2年目の選手にとってはそれが難しい。大学時代から試合数が激増し、遠征と試合の連続で息つく暇もない。だがヨキッチはこう語った。「それがNBAなんだよね。対処するしかない。これ以上ひどいプレーを続けるわけにはいかないよ」