ジェームズ・ハーデン

ペースが落ちてドリブルが増える『ハーデン化』が進行

現地11月14日、クリッパーズはナゲッツと接戦を演じるも勝ち切れず、108-111で敗れた。ジャマール・マレーをケガで欠くナゲッツのポイントガードはレジー・ジャクソンとジェイレン・ピケット、クリッパーズが構想外にしたベテランと2巡目指名のルーキーだ。彼らは終盤に少々もたついたものの試合をコントロールし、接戦を勝ちへと結び付けている。

クリッパーズはジェームズ・ハーデンの獲得が決まり、彼がベンチに入ったレイカーズ戦から6連敗。王者ナゲッツと良い試合を演じたことで、指揮官タロン・ルーが「今日のパフォーマンスには励まされている」と言い、ゲームハイの35得点を挙げたポール・ジョージは「僕たちのプレーは素晴らしかった。負けて満足することはないけど、もう少しで乗り越えられるという兆候が見られたと思う」と語る。

ハーデンは35分の出場で21得点4アシストを記録。「このチームに来てから最も良い感覚でプレーできている。ただ、もう少しアグレッシブにやれるはずだ。アグレッシブとは得点を伸ばすことじゃなく、正しいプレーをしてオープンショットを決めることだ」と言い、こう続ける。「僕たちには特別なチームになれる可能性があるけど、それには時間と辛抱が必要だ。今必要なのは、周囲が何を言っていようが気にすることなく、チームを構築し続けることだ。今はまだ結果が出ていないけど、長い目で見ている」

その2つ前のマブス戦に敗れた時点で、ジョージは「いずれ上手くいくと思う」と言い、カワイは「自信はある」、ウェストブルックは「細部ではなく全体像を見ている」と語った。しかし、この戦力が噛み合う方法を見いだすまでに1か月も2か月もかかるのであれば、その先に追い求めるべきチームの成熟はさらに遅くなる。まだシーズン序盤とはいえ、日々ライバルに遅れを取っているのが現状だ。

さらに『CBS SPORTS』は興味深いデータを提示している。ハーデン加入の前後のスタッツを比較すると、ペースがリーグ20位から最下位へ、オフェンス時の選手の移動距離が9位から最下位へと転落し、ボールタッチあたりのドリブルの回数が9位から2位まで上がっている。この傾向はハーデン時代のロケッツに顕著だったもの。ペースは遅く、オフボールの選手は決まった位置に付いてスペースを広げ、ボールを持つ選手の個人能力で得点を奪っていく。ハーデン個人はシュート試投数が一番多かった24.5から10.2へと大きく減っており、ロケッツ時代のように振る舞っているわけではないが、チーム全体が『ハーデン化』しているのは興味深い。

指揮官タロン・ルーは、昨シーズン途中にウェストブルックが来た時もそうだったように、新戦力が早くチームに馴染むよう「自分らしくプレーしろ」と伝え、他の選手にそれに合わせることを要求している。その結果として『ハーデン化』が進んだが、アイソレーションで効率良く得点が奪えているわけはなく、試合をコントロールできているわけでもない。

クリッパーズはチーム作りの初期段階にあり、ハーデンと他の選手との連携が高まるにつれ、プレースタイルもここから最善のものへと変化していくのかもしれない。しかし、トレーニングキャンプでルーが目指すスタイルに掲げた「ペースを上げてカットを増やす」バスケとは全く違う方向に進んでいるのは事実だ。

ジョージはハーデンが「心配ない」と繰り返す一方で、カワイ・レナードとラッセル・ウェストブルックはナゲッツとの試合が終わるとすぐにアリーナを去った。勝てていない現状に満足していないのは明らかだし、チームの試合内容にも納得できていないのだろう。勝利は何よりの良薬となるはずだが、今のクリッパーズにはその1勝が遠い。