福岡大学附属大濠

「一番しかられる選手」がフル出場

福岡大学附属大濠と福岡第一のウインターカップ県予選決勝リーグ最終戦は福岡大学附属大濠が79-61で『福岡決戦』を制した。

先発メンバーの中で唯一の3年生である広瀬孝一が攻守でチームを牽引した。196cmのサイズと身体能力を生かしてゴール下で再三バスケット・カウントを獲得。自身初の40分間フル出場で、シューターの湧川裕斗や206cmの渡邉伶音ら得点源を押しのけてゲームハイの19点を挙げた。「実は常に一番点を取ってやろうと思っていました」との思いをこの大一番で実現させた。第一のキャプテン、山口瑛司も「予想外だった」という伏兵がインサイドで存在感を発揮した。

10-0のランでスタートダッシュに成功した大濠。第一に1本返されたが広瀬が立ちはだかる。第1クォーター開始3分、右エルボーからジャブステップを使い、ドライブからファウルをもらいつつ左手でねじ込んだ。この試合最初の3点プレーだった。「脚力に自信があるので、最近1on1にチャレンジし始めました。渡邉がスペースを作ってくれたから攻めやすかったです」。

大濠に新たな得点パターンを加えた広瀬に対し、キャプテンの三輪大和主将も「頼もしかった。自分が先発から外れてしまったのでいつも以上に期待していた」と声を弾ませた。

第2、第4クォーターに渡邉がファウルトラブルに陥ったピンチにも、ペイントエリアで留学生を相手に身体を張ってリバウンドをもぎ取った。「試合途中に片峯(聡太)先生から『休憩なしで行くぞ』と言われて、戦い抜くんだと気持ちが入りました」。試合終盤でもゴール下の守備でボールを奪い、味方を追い越して先頭を走った。片峯コーチも「一番しかられる選手だけど、熱い気持ちを持って歯を食いしばってやってくれた」と称える。

第一とのライバル対決では今年8連敗中だった。出だしで受け身になる悪癖が度々顔を出していたが、9度目にしてその課題を解消した。片峯コーチは「得意なプレーからゲームに入って決めて、受け身にならずに攻める姿勢を見せてくれた」と振り返ったが、その口火を切ったのは広瀬とインサイドでコンビを組む渡邉だ。

ファーストプレーで髙田将吾のシュートがこぼれたリバウンドを拾って、味方に戻して外で構える。パスを受け、迷わず放った3ポイントシュートはきれいな回転でリングに吸い込まれた。「片峯先生から試合序盤は積極的に打っていいと言われていました。打つべきシュートを打って決められたのが良かった」。後半は左ローポストから巧みなステップで最初の得点をマーク。11得点と、広瀬とともに2桁得点を記録した。

U19代表にも名を連ねる大黒柱は6月のインターハイ予選決勝の第一戦を故障で欠場していた。「負けてインターハイを逃してしまったので、第一に絶対勝ちたいと思っていた。故障や代表活動でみんなが揃って試合する機会がなかったけど、今回は戦えました。自分の仕事を全うできた」と胸を張った。

福岡大学附属大濠

1年生司令塔がタフショット&ゲームメークで躍動

第一のプレスをかわしたのも勝因の一つ。1年生ポイントガードの榎木璃旺が落ち着いて試合を作った。「これまでの対戦では自分がミスをしてばかりだったので、その動画を見続けました。先輩たちが第一を想定したプレーをしてくださって、良い準備ができました」。

昨年の全中を制した逸材は「観客が多い方が楽しいっていう性格なので。最初は緊張したんですが先輩の声が力になりました」と言うように、生き生きとプレーし続けた。第4クォーター序盤には、「時間がなくて打ったら入った感じで。ちょっとびっくりしました」と振り返るように、24秒ギリギリのタイミングでステップバックしながら片足で放った3ポイントシュートを沈めた。62-48の場面でも左コーナーから3ポイントシュートを決めて第一の反撃ムードをかき消した。残り2分に脚がつって交代したが、15得点を挙げて、大役を果たした。

11月の福岡決戦は第一が2018年から5年連続で制していた。大濠はウインターカップを制した2021年でさえも苦杯をなめていた。勝利の瞬間、コート上には3年生5人が立っていた。故障から復帰戦となった鈴木凰雅も得点できたことが喜びを一層引き立てた。片峯コーチは「やっぱり福岡1位は意味のあること。自分が持っている力を信じて、支えてくれる仲間を信じて個とチームの認識がブレなかった」と勝利を噛みしめた。互いを信頼してつかんだ福岡の王座。今年のチームに足りなかった「自信」を深めて、2年ぶりの日本一に挑む。