今オフ、アルバルク東京はリーグ連覇時の中心選手である田中大貴、アレックス・カークが揃ってチームを去るなど、新たなサイクルに入った。そんな新生A東京のフロアリーダーとして期待されているのがテーブス海だ。過去2シーズン、A東京はライアン・ロシターを帰化枠で使えるアドバンテージを利用し、外国籍の司令塔を獲得してきた。今シーズンは外国籍ガードがいないことが、テーブスへの大きな信頼を何よりも示している。王座奪還のキーマンと言えるテーブスに、今シーズンにかける思いを聞いた。
滋賀で得た貴重な経験「試合に長く出ることで、気づけることはたくさんありました」
──オフシーズン、様々な選択肢がある中でA東京を選んだ理由を教えてください。
プロ選手のスタートを切った宇都宮ブレックスは、すごくレベルの高い環境でベテランの選手からいろいろと学ぶことも多かったです。優勝も経験させてもらいましたが、自分の学んだことを存分に出せるプレータイムなどを重視して滋賀レイクスに行きました。そして次のステップアップを考えると、常に優勝を狙える力を持つチームが自分にとってベストだと思い、オファーをいただいてからはすぐにアルバルクに決めました。
──滋賀では1試合平均30分以上プレーしていました。よく『試合に出るからこそ学べるものがある』と言いますが、テーブス選手はどう思いますか。
特に若い選手は試合に出ることがすべて、と言うと語弊もありますが、試合に長く出ることで気づけることはたくさんありました。もちろん練習やワークアウトで成長できることはあります。ただ、結局は試合で試してみないと、それが本当に通用するのかどうかは分からないです。長いプレータイムをもらって特に勝負がかかった終盤にシーズンを通して出る中で、うまくいかないこともいろいろとありましたが、だからこそチームを勝たせるためには何が必要なのかを経験できました。
──昨シーズンの滋賀でのB2降格に加え、夏はあと一歩のところで代表から落選しました。特にメンタル的にかなり負荷がかかる経験が続いたと思います。
代表での落選よりも、滋賀の降格争いは自分だけでなくチームに関わる皆さんがいろいろなプレッシャーを抱えて戦っていたので辛かったです。残念な結果に終わってしまいましたが、最後の最後まで戦えたことは、自分にとってバスケに限らずこれからの人生にとってためになる経験でした。もちろん、これからも滋賀のことを応援しています。
シーズンが終わって1カ月くらい休んでからすぐに代表活動が始まりました。そこで 3カ月くらい合宿、海外遠征と積み重ねていく中で落ちてしまったのはもちろん悔しかったです。目標だったワールドカップに辿り着けなかったことを、Bリーグでの大きなモチベーションに変えていますし、見返してやりたいとも思っています。また、トムさん(トム・ホーバスヘッドコーチ)とは結構、いろいろと言える関係性です。アルバルクで結果を残すことが代表に繋がると思いますし、再び代表に呼んでもらって成長した姿をトムさんに見せたい思いはあります。
──滋賀や代表でいろいろな経験を経て、さらにステップアップするには特にどんな部分を成長させる必要があると意識していますか。
やっぱり安定性ですね。今は良い時と悪い時の差が激しいので、これから悪い日を減らしていかないといけないです。ものすごく調子が良い訳ではなくても、常に安定したプレーをできる選手はすごく頼りになります。アルバルクは周りに素晴らしい選手が揃っていて自分が毎試合、素晴らしいプレーをしなければいけないわけではないです。それよりも常に平均以上のパフォーマンスができるようになりたいです。
「最終的に優勝すれば、みんなが輝くことができます」
──テーブス選手が語るようにA東京はリーグ屈指の豊富なタレントを擁しています。だからこそ司令塔として、どんなゲームメークが求められると思いますか。
これだけ良い選手が揃っていると、試合毎にオフェンスで中心として攻めるポイントも変わってくるので、それに合わせて自分の役割も変わっていきます。例えばライアン(ロシター)、セバスチャン(サイズ)が、自由に攻めることができるのなら自分は繋ぎ役として彼らにボールを預ける。もし、2人へのダブルチームが多い場合は、逆に自分がシュートを決め切らないといけない。試合、もしくはクォーターごとに変化する状況をしっかり把握して、自分のやるべきことを遂行できるポイントガードになりたいです。
そして、優勝するためにはいかに一人ひとりが本当にチームのために何ができるかを考える集団にならないといけないです。それぞれのキャリアもありますし、自分が活躍したいという思いもあると思います。でも最終的に優勝すれば、みんなが輝くことができます。だからこそ、チームファーストをみんなに意識させるのもポイントガードの仕事だと思います。
ただ、チームのためにと自分が完全にエゴを消して、みんなに合わせるだけだったら自分の持ち味を出せなくなります。それだと、コートに立つのは自分でなくてもいいとなります。チームにとっていつ自分の持ち味を出したらいいのか、今までの経験を生かして、そのタイミングを間違えないようにしたいです。
──司令塔はテーブス選手に加え、経験豊富なベテランの橋本竜馬選手も加わりました。橋本選手との差別化は意識しますか。
そこは意識していますが、僕よりも竜馬さんの方がすごく意識してくれていると思います。状況にしっかり対応しないといけないですが、まず自分は思いっきりアタックして流れを作り、竜馬さんが流れをうまく保ってくれる。そういう役割分担ができたらいいですし、お互いの持ち味を発揮することで良いコンビになれると思います。
──今オフ、A東京は選手も大きく変わるなど、新たなサイクルに入ったと思います。その中で、自分が新たなリーダーとしてチームを引っ張っていかなければいけないと意識する部分はありますか。
素晴らしい伝統を築いてきたアルバルクがここ数シーズンは悔しい結果で終わっています。この2年間で主力選手やヘッドコーチも変わり、新たな波が来ている中で自分もすごく責任感を感じています。必ず優勝する、という気持ちはみんなが持っていると思います。
──あらためて、テーブス選手にとって今シーズンはどういう位置付けのシーズンになりますか?
本当に勝利にこだわりたいですね。ブレックスで学んで、レイクスに行ってより強く感じたことですが、やっぱり勝つことは本当に難しいです。でも勝つことでみんなが幸せになれると、特に優勝した時に思いました。ブレックス、レイクスともすごく勝ちにこだわっていました。ブレックスでは先輩に導いてもらって勝てましたが、レイクスではできなかった悔しさがあります。だからこそ、チームを勝たせる選手になることを強く意識しています。
ただ、あまりプレッシャーは感じていないです。今シーズンこそ、自分の力を証明しなければいけないとかはあまり思っていないです。それよりも優勝したい、そしてみんなで幸せになりたい欲の方が先に来ています。
──司令塔としてチームを勝たせることができるのか。1つの大きなチャレンジとなりますね。
はい、そうです。本当に難しいことなのは分かっていますが、それを達成することで自分のこれからのステップアップ、日本代表の方にも繋がると思います。今シーズン、自分は絶対に成長しなければいけない。チームを勝たせるプレーは、特に意識していきたいです。