ケイド・カニングハム

モンティ・ウィリアムズの指揮官就任で新しい一歩を踏み出す

2020年、ピストンズはアンドレ・ドラモンドを放出し、チームを作り替えることを選びました。それから3年、チームは浮上する気配がないまま現在に至っています。しかも昨シーズンはドウェイン・ケーシーがヘッドコーチとして率いた5シーズンの中で最低の勝率と浮上どころか下降する有様で、オフにはモンティ・ウィリアムズが新たな指揮官に就任することとなりました。

ひどい成績に終わった最大の要因はケイド・カニングハムのケガによる離脱でしたが、それはリーダーであるカニングハムのゲームメークがなければ、ピストンズは個々の選手がバラバラにプレーする個人技集団でしかなかったことを示しています。ベテランのボーヤン・ボグダノビッチやルーキーのジェイデン・アイビーが個人としては結果を残しても、ポジションごとの役割分担すら不明確な状況では勝てないのも当然でした。

リーグで4番目に少ない23.0アシストとリーグで6番目に多かった15.1のターンオーバー、そしてリーグ最低のフィールドゴール成功率45.4%とオフェンス精度の悪さは深刻な問題でした。特にビッグマンはアイザイア・スチュワート、ジェイレン・デューレン、マービン・バグリー三世、ジェームズ・ワイズマンと身体能力の高い選手を揃えながら、選手によってポジショニングもプレーチョイスもバラバラで、チームとしての狙いが全く分からないままでした。

プレーモデルがない中ではチームの核となる選手も定まらず、育成してきたはずのサディック・ベイをトレードで放出してもいます。3年目のシーズンが終わってもフィールドゴール成功率が30%を下回るキリアン・ヘイズを信じるかどうかにも迷いがあるようで、ドラフト5位でアサー・トンプソンを、25位でマーカス・サッサーとガードの指名が続きました。

新ヘッドコーチのモンティには個々の役割整理によってチームとしての狙いを統一し、その中で戦術に適した選手を見極め、中核選手として育成することが求められます。これらの仕事はサンズで取り組んだ仕事と似ており、しかもポイントガードに戦術理解力の高いカニングハムがいることもサンズと似た状況です。バラバラだったサンズをまとめ上げてNBAファイナルまで押し上げた指導力こそが、ピストンズにとって今オフ最大の補強と言えそうです。

個人の成長とチーム戦術の構築の両面が必要なため道のりは長いですが、ディフェンスについては劇的な変化が起こる可能性を秘めています。フィジカルにも守れるガードと機動力のあるビッグマン、そして万能なウイングが揃い、ポジションレスなディフェンスシステムを組むことでき、スイッチやカバーリングなどチームルールを徹底できれば、どんな相手にも通用するチームディフェンスが期待できます。

再建に舵を切ってから時間は経ち、若手有望株は増えたものの、チームとしては何も形になっていないピストンズは、新シーズンに再び『ゼロからのスタート』となります。様々な困難が待ち構えていますが、モンティとカニングハムの相性は良さそうなだけに、ゼロからの新しい構築は良い方向に進むかもしれません。