アンドレアス・オベスト

シューターのアンドレアス・オベスト、司令塔のマオド・ローに要注意

各ポジションにNBAプレーヤーを揃え、東京オリンピックでベスト8、ユーロバスケットで3位と好成績を残すドイツは優勝候補の一角で、個人能力では日本と大きな差があります。しかし、デニス・シュルーダーがマキシ・クリバーを公然と批判し、結果的にクリバーが代表から離脱するなど、選手間の不協和音も聞こえてくるだけに、連携を分断することでチャンスも生まれてきます。

ただ日本が警戒すべきはNBAプレーヤーだけではありません。むしろドイツの躍進を支えたのはNBA以外でプレーする選手たちが作り上げるケミストリーで、特にシューターのアンドレアス・オベストとポイントガードのマオド・ローには要注意で、この2人をリズムに乗せてしまうとドイツのオフェンスを止めるのは難しくなります。

日本では見ないタイプのシューティングに特化した動きをするオベストは、オフボールムーブの中でスクリーナーを活用し、マッチアップしてくるディフェンダーを振り切った瞬間にパスをもらい、迷うことなく3ポイントシュートを放ってきます。クイックリリースにもかかわらずブレない体幹の強さもあり、昨年のユーロバスケットでは3ポイントシュート成功率48%という数字を残しました。

チームメートもオベストの動きを常に視界に入れ、スペースを作るポジショニングやスクリーンでフリーになるのを助け、そしてディフェンスがオベストへの警戒を強めれば、広く空いたインサイドへとアタックしてきます。シューティングに特化した動きはチーム全体の意思統一を生んでおり、オベストのシュートが決まるとチーム全体のリズムも良くなります。

スペシャリストのオベストに対して、多彩なプレーと判断力でチームの潤滑油になるのがポイントガードのローです。東京オリンピックでは得点とアシストの両部門でチーム最多のスタッツを記録したローはエースであり起点でもありました。シュルーダーやフランツ・バグナーがチームに加わったユーロバスケットではメインの起点役ではなくなったものの、3ポイントシュートを45%という高確率で決め、何も問題なくフィットしました。

ローの多彩さはドイツが苦しい状況に追い込まれるほど発揮されます。打開策を見つけるために何をすべきなのか、相手の狙いを外すプレーは何なのか、ローが個人技で打開することもあれば、チームメートを巧みに生かすこともあり、様々な形で試合展開に変化をもたらします。

ドイツの屋台骨となるオベストとローですが、予選ではともに3試合しかプレーしていません。予選は若手中心のロスターで勝ち上がり、本大会ではNBAプレーヤーが加わるために、どのような起用法になるのか分かりませんが、2人ともチームが苦しい時にベンチから登場し、チームのリズムを整え、試合に変化をもたらしてくるはずです。日本にとっては自分たちの流れを作った時にこそ、この2人を警戒する必要があります。