「特に第1クォーターは大きいセンター陣に身体のぶつかいあいで対抗できました」
バスケットボール男子日本代表が8月18日にフランス代表と対戦した。大黒柱の渡邊雄太が15日のアンゴラ戦で軽い捻挫を負った影響から欠場する中、序盤は持ち味であるテンポの速いバスケットボールから効果的に3ポイントシュートを沈め40-45と互角に渡り合った。だが、後半になるとオープンシュートを決め切れず、守備ではコミュニケーションミスが増えるなど攻守の遂行力が落ち、一気に突き放されて70-88で敗れた。
大差で敗れた日本代表だが、前半の戦いぶりなど明るい材料もあった。その代表的な一つが、股関節の故障から1カ月以上実戦から離れていたゴール下の要であるジョシュ・ホーキンソンが順調な回復ぶりを見せたことだ。アンゴラ戦で14分のプレータイムだったのが、今回は23分半と増え、オフェンスでは外角シュートが不発で4得点に終わったものの、7リバウンド3️スティール1ブロックと守備で存在感を示した。
「前回に比べたら改善できたと思います」と、ホーキンソンは自身の仕上がり具合について語る。「シュートタッチは良くなかったです。ただ、コンタクトありの練習を一回こなしただけでアンゴラ戦から実戦復帰しています。だからタッチが戻るまで少しかかります。練習ではとても調子が良いですが、実戦からは1カ月くらい離れていました。練習で1人で打つのと、試合で相手がクローズアウトする中で打つのでは感覚が違います」
このようにシュートタッチに関しては本来の感覚を取り戻している最中と振り返る一方で、守備面では手応えを得たという。「ディフェンスはハッスルし、ファイトすることでとても良い仕事ができました。チームとしても、特に第1クォーターは自分たちより大きいセンター陣を相手に身体のぶつかいあいで対抗できました。相手にフィジカルの優位を出させなかったです。ただ、それを第4クォーターまで続けなければいけないと学びました。そして僕たちにはそれができますし、そうすることでどんなチームに対してもタフに戦えます」
「僕たちは単純なタレント能力では世界を相手に対抗できません」
最終的に日本は世界ランキング5位のフランスに格の違いを見せつけられた格好となった。グループリーグで戦うドイツ、フィンランド、オーストラリアを見ると、オーストラリアはフランスと完全に同格だ。ドイツとフィンランドはフランスより総合力では劣るだろうが、両国がフランスに勝ったとしても、番狂わせと騒がれるほど大きな実力差はない。
ホーキンソンはこの世界トップクラスの難敵と戦うには、特に一つひとつの細かい部分を疎かにできないと強調する。「ワールドランキングでトップ5のチームと戦うには、試合を通してより細かい部分に気をつけないといけません。それができないと勝ち負けを争う展開に持ち込めないです。僕たちは単純なタレント能力では世界を相手に対抗できません。チームワークを発揮し、みんながハードワークを40分間続けて、NBA選手が少ない部分を補っていく必要があります」
また、本大会では渡邊と並ぶ得点源として期待されるホーキンソンだが、前述のように試合勘を取り戻している途中であることも影響してか、この2試合は自ら仕掛けてシュートを打つ場面が少ない。ただ、本人に不安はない。
「今はよりディフェンス面にフォーカスしていて、オフェンスでは他の選手たちのチャンスを生み出すことを意識しています。例えば、今日は富永(啓生)選手が好調だったので、彼をオープンにし、シュートを打たせることにベストを尽くしました。僕のシュートの調子は悪かったけど、これからも打ち続けます。何故なら、自分には決められる力があることを分かっているからです」
このようにホーキンソンは、自身の外角シュートに揺るぎない自信を見せるが、それでもシュートに固執することはない。彼がこだわっているのは、常にエナジー全開でプレーすることだ。「今日のようにシュートタッチが良くない時は、違う形で試合にインパクトを与えないといけません。特にディフェンス、ハッスルプレーなどスタッツに残らない部分をしっかりやってチームや会場にエナジーを与え、僕たちに勢いをもたらしていく。これを続けることが勝つためには大事です」
明日、日本はスロベニア代表とワールドカップ前では最後の実戦を行うが、残念ながら渡邊は引き続き欠場となる。だからこそホーキンソンが「(フランスを相手に)雄太がいない中でもリバウンドで戦えて、やり返せたのは良いことです。雄太がベンチにいる時、どうやって得点して、どのように守ってチームとして戦うべきかを試せました」と語るように、今やるべきことにベストを尽くすことが何よりも大切となってくる。ハッスルプレーに加え、本来のシュートタッチを取り戻し、ホーキンソンがワールドカップ本番を迎えられることに期待したい。