文・写真=鈴木栄一

藤井「栗さんと僕でもっと引っ張っていけるように」

『オールジャパン2017』男子準決勝の第1試合、川崎ブレイブサンダースは78-71でアルバルク東京との激戦を制した。この勝利の大きな要因となったのが、ベンチメンバーを主体とするセカンドユニットの働きだった。

リードを許して迎えた第2クォーターには栗原が3ポイントシュートを3本沈めて逆転に成功。A東京の猛攻を食らい一度は逆転を許した第3クォーターの終了直前に、藤井がスティールから速攻を決め3点差に縮めて流れを呼び戻すなど、要所でセカンドユニットがしっかりと仕事を果たしたことが、第4クォーターでの見事な再逆転につながった。

シーズン前半戦の川崎は、ニック・ファジーカス、辻直人を軸とした強力オフェンスが際立つ先発陣が下がり、ベンチメンバーが出る時間帯になって相手に反撃を許す状況が度々あった。しかし、オールジャパンに入るとベスト8のサンロッカーズ渋谷戦も出だしでつまずいた後、セカンドユニットの活躍で悪い流れを変え、91-65の圧勝をもたらすなど、ここに来てベンチメンバーの奮闘が目立っている。

栗原とともにセカンドユニットの中心的な存在である司令塔の藤井祐眞は、オールジャパンでの汚名返上を狙っていたと語る。「シーズン中、スタメン組がリード作ってくれた後、セカンドユニットが点数を縮められて帰ってくるということが多くありました。それだけに、今回は逆にスタート組が同点で帰ってきたら、自分たちがリードを作って後半に臨めるようにと意識していました」

「マドゥ(ジュフ磨々道)とライアン(スパングラー)に頼りきりではなく、栗さんと僕でもっと引っ張っていけるようになれたら。2人で3ポイントシュートを1試合4本、5本決められたら、セカンドユニットで流れに乗ってもっと強いチームになれると思います」

この試合、藤井は約24分の出場時間と、同じ司令塔で先発の篠山竜青(約16分)よりも長くコートに立ち、特に守備での活躍が光った。田中大貴からボールを奪ってシュートを決めた第3クォーター最後のプレーを含めスティールを3つ挙げ、そのすべてが得点につながっている。

「前半のスティールは狙っていました。そして第3クォーターの終わりの大貴のところは、彼がファンブルした部分もありますが、相手の隙をうまく突いて、トランジションにつなげられたというのは大きかったと思います」

栗原「僕がシュートを決めればチームの助けになる」

そして、ベスト8のSR渋谷戦に続き、2試合連続で3ポイント3本成功による11得点を挙げた栗原は、「一昨日のSR渋谷戦でシュートタッチが良かったので、今日も空いたら打とうと心がけていました。周りもタッチが良いと分かった上で回してくれているので、波に乗れる時は乗っておこうという気持ちでした。ちょっと早いタイミングでもボールが回ってきても打ち、それが入っていて良い形になったと思います」と振り返る。

セカンドユニットとしての出来が良くなっている要因についてはこのように語る。「リーグ戦でうまくいかない時に選手間でコミュニケーションを取ってきました。その結果、少しずつ良い形になってきて、チームのやることがみんな統一されてきました。前はみんなの考えがバラバラでしたが、今はうまくまとまっています。阿吽の呼吸ではないですけど、息の合ったプレーができていると思います」

「セカンドユニットは、ディフェンスから走っていき、リズムに乗ってきたらどんどん3ポイント打つ感じのユニットです。ディフェンスで自分が前からプレッシャーかけないと、よい守備につながっていかないと思うので、スティールはいつも狙ってやっています」(藤井)

「ニックと辻のところに相手ディフェンスはヘルプで寄っていきます。自分のマークマンも彼らのヘルプを意識していると思います。そこで、僕がシュートを決めればチームの助けになると考えています」(栗原)

藤井が前からプレッシャーをかけることで守備のリズムを作り、ディフェンスリバウンドからどんどん走る展開に持っていく。そして栗原が3ポイントシュートを沈める。このセカンドユニットの『盾と矛』が機能するかどうかが、ファジーカスと辻の2枚エースの出来と同じく、川崎の王座奪還への鍵となってくるだろう。