小野秀二

文・写真=鈴木栄一

3年ぶりのウインターカップ、躍進の予感

12月25日、ウインターカップ2回戦で能代工業は、別府溝部学園に65−58で勝利した。相手の留学生ザリメンヤ・カトウ・フセインに26得点27リバウンドとゴール下を制圧され、試合序盤から得意とする外角シュートに当たりが来ない我慢の展開となったが、それでも集中力を切らない粘りの戦いで競り勝った。

この勝ち方には小野秀二コーチも「先発メンバーの1人が故障で出られないことで、彼のところがうまく機能せずにリズムに乗れない。相手のゾーンディフェンスに対し、重いバスケットボールになってしまいました。ただ。こういうバスケットでも勝ち切ったのは成長かと思います」と手応えを得ている。

「3年生が今日は意地を出してくれました。接戦を勝ち切ったのはうれしいです。今まで途中で崩れて終わってしまうこともあったのが一つひとつのポゼッションで集中してやってくれました」と、選手たちを称える。

ウインターカップ通算20回の優勝が示すように、能代工は高校バスケ界における名門中の名門だ。しかし、近年はかつてない低迷を味わい、大会に出場するのは今回が3年ぶり47回目となる。

チームを立て直せたのは昨年6月から指導している小野コーチの存在があってこそ。秋田出身の小野は能代工に進学し、3年時には同校を初の3冠に導く。その後、筑波大学、住友金属とエリート街道を歩み、9年間に渡って日本代表として活躍した。

現役引退後は指導者として愛知学泉大学を強豪に育て上げ、トヨタ自動車、日立などトップリーグでも確固たる実績を残すと、日本代表でもヘッドコーチを務めた。数々の名選手を輩出している能代工であるが、その中でも選手、指導者の両方で傑出した実績を残した稀有な存在であるのが小野コーチだ。

そんな様々なカテゴリーの大会を経験してきた小野コーチにとってもウインターカップは「熱気があります。お客さんも多いですし、4面で応援が分散するのかと思いましたが、どこのコートもすごい。この場所でできてうれしいですし、高校時代を思い出します」と特別な大会だ。

小野秀二

「僕の原点は能代工業、加藤廣志先生のバスケットボール」

大学、トップリーグとカテゴリーは違うが、高校生を相手にしても自身の指導スタイルに変化はないと言う。「僕自身のフィロソフィーは自主性を重んじていますので、こちらから与えすぎずに子供たちがやるんだ。今、何をするんだと自分たちで考えることを求めています。高校3年間で終わるのではなく、その先を見据えてやってほしいと思っています」

「僕が同じ人間なのでやり方は変わらない。日立、トヨタ、大学でやってきたこととほとんど同じことをやっています。そういう意味では、高校生でも選手たちと常に同じ目線でいることをやはり意識しています」

また、指揮官が強調するのは、「僕の原点は能代工業、加藤廣志先生のバスケットボールが渾々と流れていますので、思い出しながらやっています」と、このような自身の哲学は能代での日々が根幹にあるということだ。

1回戦、2回戦とともに留学生の高さを克服した能代が、3回戦で激突するのは優勝候補の一角である中部第一(愛知)だ。「組み合わせが決まった時から中部第一さんとやりたいと思っていました。能代カップで敗れた時から我々が成長できたのか、いいテストマッチになります。インターハイ、国体と一つの壁だったベスト16を乗り越えていけるのかを一つの目標としています」と指揮官は意気込みを語る。

難敵を撃破し、名門復活を高らかに宣言できるのか、注目の戦いは本日13時20分ティップオフの予定となっている。