他役職・他競技を含む5人の多彩なゲストスピーカーが登壇したカンファレンス

6月3日、「スポーツパフォーマンス部会」が、2回目となるカンファレンスを開催した。同部会はBリーグ各クラブに所属するパフォーマンス担当者(パフォーマンスコーチ、ストレングス&コンディショニングコーチなど)が、選手たちの競技パフォーマンスの向上とケガのリスクの低減などに関する自己研鑽、情報共有を行う場として立ち上がった有志団体。オンライン形式で実施されたカンファレンスの模様について同部会役員の大塚健吾(茨城ロボッツ S&Cコーチ)に聞いた。

──今回のカンファレンスはどのような内容でしたか?

登壇者に増田匡彦さん(Bリーグ常務執行役員)、吉田修久さん(千葉ジェッツスポーツパフォーマンスディレクター)、田原慎太郎さん(秋田ノーザンハピネッツ ユースチームS&Cコーチ)、小沼健太郎さん(サンロッカーズ渋谷メンタルコーチ)、浦山真吾さん(クボタスピアーズヘッドS&Cコーチ)をお招きし、新リーグ構想と今後のパフォーマンス部会に期待すること、パフォーマンスデータを活用したトレーニングプログラム、ユースチームの現状と課題、チーム力強化とメンタルトレーニング、ラグビー現場でのデータ活用というテーマでお話しいただきました。

また、カンファレンスでは参加者同士のディスカッションも実施しました。各チームがどのような取り組みを行っているか、パフォーマンス担当者がどのような考えを持っているかといった情報をシェアし、良いところを持ち帰り、新たな取り組みに繋げていただければいいなと思います。

──登壇者のお話を聞いての感想をうかがわせてください。

増田さんは、S&Cコーチやアスレティックトレーナー、その他の専門職の方々がきちんと相互関係を築きながら新リーグに進むべきだとお話しされていました。リーグが大きくなるには、選手だけでなく裏方のサポートスタッフの存在も必要不可欠だというという考えを聞けたのが印象的でした。個人的には、新B1がスタートする2026年に向けて、各クラブがスポーツパフォーマンスに関わる専門スタッフを配置する方向に進んでいるのは、選手の傷害予防やパフォーマンス向上の面でとても大きなことだと思います。

──Bリーグ発足当時から、パフォーマンススタッフを取り巻く環境はどのように変化してきたと感じますか?

Bリーグ発足時はS&Cコーチがいるチームは少なかったと思いますが、現在ではほとんどのチームにS&Cコーチがいる状況となっています。

──「Bリーグのクラブで仕事をする」という目標を掲げてこの分野を志す学生も増えてきているように感じます。

Bリーグの創設によって「目指すべき場所がはっきりした」と話す学生さんが増えているようです。Bリーグとしても新しい人材が入ってきていい循環が生まれていると感じています。

フィジカルスタッフたちが繋がりを持ち、それを強化することがリーグの発展につながる

──少し話が脱線してしまいますが、ユースチーム(U15、U18)の規模も大きくなりつつあります。この世代に対するパフォーマンスサポートの現状について教えてください。

当日参加者とディスカッションをしていて感じたのは、現状はしっかり投資して収益化する場というより、育成の場、地域貢献の場としてとらえているクラブが多いということです。ユースチームに専門のパフォーマンススタッフを配備し、細かいところまでサポートできているクラブもありますが、予算などの兼ね合いでパフォーマンスサポートの整備まで行き届いていないというクラブも多いです。参加者のみなさんには各チームの現状をお話しいただき、真似できるところは今すぐ取り組んでみましょうという話になりました。

──メンタルコーチの小沼さんのお話はいかがでしたか?

彼らの取り組みは非常に素晴らしいと感じました。選手一人ひとりに対してきちんとプランを作り、コーチやS&Cコーチ、アスレティックトレーナーなど様々な役割を持つ人々が彼らの目標を共有し、達成していくために手助けするという姿勢の大切さをあらためて学ばさせていただきました。小沼さんは、選手だけでなくスタッフや関係者すべてが自主性を持ち、ミッションやビジョン、バリューを共有して物事に取り組んでいくことの重要性も強調されていました。メンタルコーチがいるクラブは限られているので、我々ストレングスのコーチや競技のコーチもこの点は意識していくことが重要だと感じました。

──ラグビー界で活動する浦山さんには、パフォーマンススタッフのデータの活用法についてお話をうかがっています。

とても勉強になりましたし、講義後の質疑応答で出た「大学を卒業したばかりの選手とトップチーム所属選手の身体能力の差が以前と比べて少なくなった」というお話も興味深かったです。

──Bリーグも大学を中退してプロに転向した河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)がルーキーシーズンから活躍し、特別指定ながらBリーグで高いパフォーマンスを発揮できる大学生も現れています。現場ではどのように感じていますか?

大学でしっかりとトレーニングを積んでいる選手は、プロになってもしっかりとトレーニングをこなしている印象を持ちます。これは僕の個人的な考えですが、トレーニングだけでなく学生の頃からプロに向けて様々な準備をしてきた選手は、やはりデビュー時に同世代の選手たちに差をつけているように感じます。

──あらためて、カンファレンスの感想をお聞かせください。

各チームのS&Cコーチの繋がりを強化することが、選手のパフォーマンス向上やBリーグの発展に繋がるとあらためて感じました。この部会を通じて、Bリーグで活動するパフォーマンススタッフ全員が「リーグの発展と選手のパフォーマンス向上に貢献する」というミッションを共有し、同じ方向に進めたらと思います。

──裏方のパフォーマンス担当者がクローズアップされることはあまり多くはないと思いますが、一般の方やファンの方々からの認知について感じることはありますか?

認知はまだ十分と言えませんが、僕自身についてはシーズン終了後のファン感謝祭で去年より話しかけてくれる方が増えたように感じます。これは裏方の存在を認識してくれる人が増えた証かもしれませんね。

──記事を読まれている方にメッセージをお願いします。

プロバスケットボールはエンターテインメントであり、皆さんが試合を見て楽しむこと、そしてそれが明日への活力に繋がることが何より大切だと思います。ただ、その裏には我々のような多くのスタッフがいて、オフシーズンには学びを得ていることをちょっとでも知っていただけたらうれしいです。また、この記事を見て、将来このような仕事に就きたいと思ってくださるような方もいると思います。そういう方々が社会人になってBリーグの現場に入られた時、参加した時に、できる限り整った環境で迎え入れられる状態を目指したいですね。