文=丸山素行 写真=小永吉陽子

0-15と先行される『まさかの展開』から走った福岡第一

『JX-ENEOSウインターカップ2016』大会6日目、男子は準決勝の2試合が行われた。

福岡第一(福岡県)は帝京長岡(新潟県)と対戦。延長戦でも決着がつかず、再延長へ突入した大接戦を制したのはインターハイ王者の福岡第一だった。

もっとも、その福岡第一は序盤から大苦戦を強いられた。帝京長岡をしっかり研究して試合に臨んだはずが、重冨周希は「ビデオと全然違った」と話す。「ディフェンスしてて、スピードがあって戸惑った。足が止まって速攻が出なかった」

兄の重冨友希も「緊張もあったかもしれない、前半が重かった」と話すように福岡第一は試合開始から0-15と大きなビハインドを背負った。

井手口孝コーチはこの非常事態にプレスディフェンスの指示を出した。「第1クォーターから後半のつもりでやらないと追い付かないと思ってプレスをやった、それでオフェンスもリズムが良くなった。打開策としては良かった」

その作戦が功を奏し、持ち直した福岡第一は15-22と押し返して第1クォーターを終えた。それでもディアベイト・タヒロウを擁する帝京長岡を捉えることができず45-54と9点ビハインドのまま第4クォーターを迎えた。

その第4クォーター、福岡第一はオールコートディフェンスで激しいプレッシャーをかけ、ボール運びでのミスを誘う。帝京長岡のポイントガード、祝俊成は「すごく固いディフェンスだった。押しても押しても引かない、逆に押し返してくるぐらい強かった」と語る。

10-0のランで福岡第一が逆転。その後、一進一退の攻防が続き佳境を迎える。それでも帝京長岡は食らい付き、残り7秒で69-70という場面でファウルをもぎ取る。フリースローを2本決めていれば勝ち越しだったが、1本しか決められず、試合は延長戦に持ち込まれた。

日頃の練習の『5分ゲーム』が準決勝の土壇場で生きた

オーバータイムは両者一歩も譲らず、1ポゼッションのまま5分が経過して再延長へ。ただし残り1分37秒の時点で、得点とリバウンドでチームを牽引し続けた大黒柱のタヒロウが、個人ファウル5つで退場となった。

福岡第一も第4クォーターの最後にセンターの蔡錦鈺がファウルアウトしている。総力戦となったダブル・オーバータイムに勝敗を決めたのは『ディフェンス』だった。

福岡第一はここから試合が始まったかと思わせるようなダイナミックなディフェンスで帝京長岡を抑え込む。神田大輔は「プレスにビビってしまった」とこの時間帯を悔やむ。「プレッシャーをかけられた時に回避するだけじゃなく、アタックする気持ちが足りなかった」

延長に入ってからの異常なまでの強さの秘密を、福岡第一の井手口孝コーチは「普段から練習の最後で5分ゲームをやることが多いんです」と明かした。「私が話す前に選手たちから、1回目は『いつもの5分だよ』、2回目は『たくさん練習しているのは自分たちの方だから、足が残っている』と話していました」

結局、ダブル・オーバータイムの5分間のスコアは12-1と福岡第一が圧倒。堅守からの速攻やフリースローで得点を重ねた福岡第一が89-78で勝利した。

40得点13リバウンドでチームを牽引したタヒロウは「日本一になりたかった」と悔しさを滲ませた。タヒロウのファウルアウトが試合の大きな分岐点になったのは間違いないが、それ以上に再延長になってからの福岡第一の気力と体力が目立った。

準決勝のもう1試合、北陸学院(石川県)と東山(京都府)は東山が89-70で快勝。内外バランス良く得点を重ね、岡田侑大が24得点、カロンジ・カボンゴ・パトリックが22得点と、取るべき選手がきっちり得点して勝ち切った。インターハイ準優勝の東山が勝ったことで、明日の決勝はインターハイ決勝と同じ福岡第一vs東山となった。福岡第一の重冨周希は「走った者が勝つ。走り倒して試合に勝ちたい」と明日の決勝へ抱負を語った。

7日間におよぶウインターカップも明日が最終日となる。高校バスケットボールの頂点が決まる決勝戦は12時試合開始だ。