安藤周人

文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

「まだまだ外すシーンが多い」と貪欲

12月21日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは敵地での川崎ブレイブサンダース戦で80-78と熱戦を制し、同一カード連戦の初戦に勝利した。この試合、名古屋Dは5人が2桁得点とバランスの取れたオフェンスを展開しており、開幕から好調を維持しているシューターの安藤周人も3ポイントシュート5本中3本成功を含む14得点と活躍した。

ここまで12月で1勝4敗と苦戦が続いていた中、強豪の川崎を相手に初戦をモノにできたことは大きな意味を持つ。しかし、安藤は勝利の手応えはあるだろうが、それよりも前半途中、最大21点差のリードを追いつかれる寸前まで追い上げられたことへの反省を第一に語る。

「試合の出だしは自分たちらしさが出せました。ただ、前半の終わり方が良くなく、後半の入り方も緩くなってしまった。20点リードを30点差にできなかったことは何回もあるので、自分たちの甘さが出ていると思いました。相手の流れを断ち切れるようなゲーム展開を作っていかないといけない。自分たちが相手に合わせる展開になってしまいました」

この慢心とは無縁の気持ちの持ちようは、自身のパフォーマンスについても同様だ。21日の試合を終えた時点で、安藤は3ポイントシュートの試投数、成功数、成功率の3部門ともにリーグトップに立っている。昨シーズンは3ポイントシュートの成功数が計89本だったが、今シーズンはまだ全体の約4割しか試合を消化していないのに、すでに74本成功と、3ポイントシューターとしてリーグ随一の存在へと飛躍しつつある。

しかし、「自分自身はまだまだ確率が悪いと思っています。先週の話ですけど、琉球戦は自分が決めていたら勝てた試合でした。ノーマークは絶対に決めるようにしていかないといけない。まだまだ外すシーンが多いです」と、自己評価は厳しい。

安藤周人

「自分に任せてもらえるなら応えないといけない」

3ポイントシュートに加え、1試合平均得点でも昨シーズンの平均8得点から13得点と、日本人トップレベルの数字を残している。この向上について安藤は次のように語る。

「オフに何か特別なことをした訳ではないですが、去年はユニバーシアードでチームを離れていたのが、今年は初めてチームと一緒に夏を過ごせました。また、去年よりもボールタッチの回数が増えているので、ボールを持ったからにはシュートを狙うのが一番。自分に任せてもらえる部分があるのならそれに応えないといけないです」

相手にとって安藤を止めるのが難しいのは、外からのシュートだけでなく要所でゴール下にアタックして高確率でシュートを沈めるメリハリの効いた攻めができるから。2点シュートは試投数が3ポイントシュート(166)の半分以下(65)と少ないが、成功率58.5%が示すよう効果的なアタックを出せており、この試合でも第4クォーターの勝負どころで2つ鋭いドライブで得点に繋げている。

「外ばっかり打っていてもチームに勢いを与えられません。自分が犠牲になってアシストしたり、もっとアタックして中の得点を増やしたいと考えています。今日はそれが出せました」

安藤周人

「もっともっとアピールしないといけない部分がある」

これまで触れたように3ポイントシュートで素晴らしいスタッツを残していながら、安藤はオールスターの3ポイントコンテストに選出されなかった。だが、本人は「学生の頃、ここ(等々力アリーナ)で1回、コンテスト形式でやったんですけど、全然入らなかったです。僕はセンスがないので、出なくて良かったです。出るととんでもない結果になっていました」と、苦手意識があるようで安堵した面もあった様子。

そして「コンテストに出ないの、と言ってくれる人もいましたが、選ばれなかったのには理由がある。もっともっとアピールしないといけない部分があるんじゃないかと思います」と、選出されなかったことをさらなる発奮材料へと繋げていく。シーズン序盤、日本人シューターとしてはトップレベルのパフォーマンスを見せながら、安藤にはそれに満足する気配はない。この貪欲な向上心が名古屋Dの更なる浮上への大きな助けとなることは間違いない。