昨年のファイナル敗退の雪辱「やっとここまで辿り着いてすごくうれしいです」
琉球ゴールデンキングスはBリーグファイナルで千葉ジェッツを2連勝で撃破し、チーム初となる悲願の日本一を達成した。地元沖縄出身の生え抜き選手で、チーム在籍11年目である琉球の顔、岸本隆一はダブルオーバータイムの激闘を96-93で制した第1戦で34分59秒のプレータイムで6得点5アシスト4リバウンドを記録。また、88-73で優勝を決めた第2️戦は同じ司令塔を担うコー・フリッピンが今シーズンベストのプレーを見せたことで、プレータイムは13分に留まったが、代名詞であるディープスリーを決めるなど6得点3アシストとしっかり役割を遂行した。
bjリーグで4度の優勝を達成した琉球だが、Bリーグ誕生後はあと一歩でタイトルを逃し続け、そのすべてを岸本は当事者として味わってきた。それゆえに優勝後の記者会見の第一声は「やっとここまで辿り着いてすごくうれしいです」という言葉だった。そして岸本は『沖縄をもっと元気に!』という活動理念を体現し、琉球がバスケットボールチーム以上の存在として地元に活力を与えること、これまで在籍してきた選手、スタッフなどチームに関わってきたすべての人たちの思いを形にすることにこだわっている。だからこそ、次の言葉が出てくる。
「今日という日に至るまでに、いろいろな人が力を尽くして戦ってきました。その感謝の気持ちもあり、自分たちにとって、沖縄にとってすごく意味のある優勝になったと思います。特に地元出身の選手として、沖縄の子供たちに自分たちが信じていることを努力すれば手が届くかもしれないことを、より身近に感じてもらえたことに意味がある。そこが一番大きいです」
岸本にとってリーグ優勝のタイトルはbjリーグの最終年の2016年以降となる。当時と今の違いをこう語る。「bjリーグ時代に優勝した時は『核となる選手についていけばいいかな』という気持ちがどこかにありました。それがBリーグとなり、年齢も上の方となって、こうやって優勝を勝ち取ることができたのは違った意味でうれしいです。これまでたくさんの先輩方がいましたし、シゲさん(金城茂之)、ジェフ(ニュートン)、マック(アンソニー・マクヘンリー)が見てきた景色はこういう感じなのかなと思うと、やっとここに辿り着いた気持ちです」
この岸本が言及した3人は、それぞれ琉球の創成期から中心を担い、チーム全員によるハードワーク、献身的で粘り強いディフェンスという琉球のチーム文化の土台となった人物たちだ。その功績からニュートン、金城はチームの永久欠番となり、今シーズンも信州ブレイブウォリアーズで活躍したマクヘンリーも、いずれこの仲間入りを果たすことが期待される功労者だ。
「むしろ、今でも彼らの背中を追い続けている意識です」
この3人に加え、同じ沖縄出身である山内盛久(三遠ネオフェニックス)など、元チームメートに何を伝えたいのかと尋ねると岸本はこう語る。「伝えたいというより、またできることなら同じ場所で膝をつきあわせてこの気持ちを共有できたら、というのが今の思いです。山内は同年代ですし、『決勝はこうだったよ、でもここに到達するまでに過ごしてきた時間がかけがいのないもので、それがあったから今があるよね』と、話せたらいいかと思います」
外から見れば、チームの顔でありリーダーとしてBリーグ王者に導いた岸本は、少なくとも先人たちに並ぶ存在になったと感じる。だが、本人は「むしろ、今でも彼らの背中を追い続けている意識です」と語る。「ジェフ、マック、しげさんとか名前を挙げたらキリがないですけど、(これまで琉球を引っ張ってきた)皆さんがこんな気持ちで試合に臨み、こんな気持ちで優勝を成し遂げたのかと、少しは感じ取れることができたと思います」
岸本のように先人が遺したモノの継承に尽力する選手がいることで、琉球はチーム力を積み上げていくことができる。これこそ琉球の一番の強みだ。また、「シャンパンファイトの時、コーチキースと名前を挙げた人たちの話しをしました」と岸本が言及する、キース・リチャードソンのように、ずっと在籍し続ける人物がいることも他チームにはない大きなアドバンテージとなっている。なかなかスポットライトを浴びることはないが、リチャードソンは琉球の外国籍選手たちが沖縄での生活に馴染み、琉球が大切にしているチーム文化をスムーズに理解するのに大きな貢献を果たすサポートスタッフだ。
今回のリーグ優勝により、岸本が大切にしてきたモノが間違っていなかったことがあらためて証明された。そして、岸本が今でも先人の背中を追い続けるように、生え抜きヒーローである岸本の背中を追いかけたいと思う沖縄のバスケットボール少年たちは確実に増えたはずだ。もちろん、どんなメンバーでも優勝は大きな価値のあるモノ。だが琉球においては、岸本が中心選手である今優勝したことに特別な意味がある。
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