佐藤凪

プレーメークと得点のバランスに悩むことも「楽しい」

岡山インターハイ2日目、シードの東山(京都府)が初登場となった。インターハイ前年優勝チームであり、昨年末のウインターカップでも準優勝と実績のあるチームだが、つくば秀英(茨城県)に大苦戦。留学生はいなくても全員がハードワークし、どこからでも点の取れるバスケは強力で、県予選で土浦日本大学を破った勢いもあった。

点差の離れない展開のまま迎えたクラッチタイム、残り3分半に佐藤凪が同点の3ポイントシュートを沈めると、力強いドライブで得たフリースローで逆転。それでもつくば秀英はタフなシュートをねじ込んで再逆転する。残り1分で3点ビハインド。それでもここで佐藤が相手のリスタートのボールを奪い取ってそのまま得点に繋ぎ、留学生のウェトゥ・ブワシャエノックがリバウンド争いで粘ってフリースローを獲得。これを2本とも決めて76-75と抜け出し、辛うじて逃げ切った。

佐藤は26得点8アシストを記録するも、「自分が壊してしまったゲーム。責任を取らなきゃいけないと思っていました」と語る。瀬川琉久が卒業した後、ポイントガードとなった佐藤は、プレーメークと自分の得点とのバランスに揺れている。この試合ではチームのフィールドゴールが77本中28本成功(36.3%)と低調で、3ポイントシュートに至っては33本中4本成功(12.1%)と全く当たりが来なかった。その中で一番得点を取れる自分が行くべきか、チームメートをリズムに乗せるべきなのかの葛藤を抱えていた。

「自分が琉久さんのような存在になろうとは思っていません。今年のチームの武器は全員で走って全員で点を取ることだと思うので、チーム全員でボールシェアして流れるようなオフェンス、新チームになってずっとやってきたトランジションで、スコアの部分でアドバンテージを作っていければ、今日みたいに難しいゲームにはならないと思います」

いまだ理想のオフェンスにはほど遠いが、「この先ポイントガードとしてやっていく上で必ず乗り越えなければならないところです」と佐藤は語る。「でも、これより悪いゲームはないと思うし、勝てたことで反省点が見付かって次に行けるので、それも楽しみながら明日からまた頑張りたいです」

ギリギリまで追い詰められる試合展開となったが、佐藤は「正直、楽しかったというのはありました」と明かす。「こういう焦るようなゲームにしてしまって申し訳ないんですけど、個人的にはこういうゲームこそ自分の力を発揮できます。クラッチタイムの自信は去年からずっと持っていて、そのために朝から夜までシューティングし続けてきたので、自信がブレることはなかったです」

「1試合でも多くやれれば楽しいですし、とにかく勝ち続けることが重要です。内容にもこだわっていかなければいけませんが、今日はもう勝ったことがすべて。引きずることなく、直すところをしっかり直して明日のゲームからまた切り替えてやりたいです」

悩みながら、苦しみながらかもしれないが、プレーすることを喜びながら佐藤は進んでいく。その先に答えが見付かると彼は言う。「これをネガティブにとらえてしまうと沈んでいってしまう。それすらも楽しみながら、なおかつチームを勝たせられるように。ここからの4試合でNo.1のポイントガードになれるように頑張ります」

明日の相手は中部大学第一(愛知県)。こちらも県立宮崎工業(宮崎県)のハードワークと3ポイントシュートに大苦戦しながら競り勝ち、勢いに乗ろうとしている。白熱の好試合に期待したい。