ラッセル・ウエストブルック

もっともハマりそうな選択肢は古巣サンダーへの復帰!?

プレーオフは大詰めを迎えて盛り上がっていますが、すでに敗退したチームのファンはドラフトやフリーエージェントに向けて、来シーズンのチーム構成に妄想を膨らませる時期になっています。特にスーパースターの補強はチームの大きな強化となりますが、失敗すれば崩壊に繋がりかねないため、その動向は大いに気になるところです。

レイカーズを追い出されるようにトレードされたラッセル・ウェストブルックは、プレーオフではカワイ・レナードとポール・ジョージを欠いたクリッパーズで大暴れし、健在ぶりをアピールしました。フィットしたからにはクリッパーズ残留が濃厚ですが、競争心溢れるスタイルを必要とするチームは他にもありそうです。

ただし、スターターのポイントガードが足りないチームはほとんどなく、すでに出来上がったチームオフェンスに組み込むと邪魔な存在にもなり得ます。ポイントガードが足りなかったクリッパーズにはハマったものの、基本的には『ガード』の需要は小さく、ウェストブルックの持つ他の能力を活用したいチームが手を上げる可能性があります。

一つはフィジカルの強さを生かし、選手層の薄いチームがポジションレスで使う形です。ガードを多く並べるブルズはロンゾ・ボールのケガに泣き、シーズン終盤にパトリック・ベバリーを獲得するなど、フィジカルに戦えるガードを起用したいチームです。ハイプレッシャーディフェンスからスピードのあるオフェンスへと繋げるバスケを志向していることに加え、サンダー時代の指揮官であるビリー・ドノバンがヘッドコーチをしていることもあり、ウェストブルックの獲得に乗り出していると噂されています。

同じような理由ながらウェストブルックの持つリバウンド力を求めるチームも出てくるかもしれません。ペイサーズはスピードのある選手を並べ、最後の砦であるマイルズ・ターナーのリムプロテクト力を活用し、カバー&ローテの優れたディフェンスシステムを組みましたが、リーグ最低のディフェンスリバウンド率に泣きました。補強ポイントはリバウンダーではあるものの、高さはあっても広いスペースを守れない選手では意味はなく、ウェストブルックのようにリバウンドに強いガードは欲しいところです。

少し変わった理由としては、若手有望株への『お手本』としての獲得も考えられます。ウェストブルックとともにプレーした選手の多くは、試合に向けた準備や全力を出し切る姿勢に感銘を受け、ハードなトレーニングを真似することで成長してきました。試合中の激しさはもちろん、ミスの多いウェストブルックをカバーするために走り回ることも成長の糧となり、スキル以上にメンタリティが伸びてきます。

そのため、ハードワークを掲げながら一体感が生まれず、停滞感が生まれている再建チームにとってウェストブルックは面白い補強になります。ケイド・カニングハムが離脱すると早々に崩壊してしまったピストンズはそんなチームの代表格で、ワンプレーへの執着心と尽きることのないエネルギーは若手に大きな刺激を与えるはずです。ピストンズに限らず、ステップアップしたい再建チームこそウェストブルックに向いている環境に見えます。

これらの条件を考えていくと、もっともハマりそうなチームが、かつて絶対的なエースとして君臨していたサンダーになるのも面白いものがあります。シェイ・ギルシャス・アレクサンダー、ジョシュ・ギディー、ジェイレン・ウィリアムスとポイントガードタイプの選手を並べ、ガードのルーゲンツ・ドートが時にはセンター役をこなすなど、フィジカルに戦えるオールラウンドなガードを活用したサンダー独特の戦術は、まさにウェストブルックのための戦術でもあります。古巣のサンダーをプレーオフへと導くドラマも見たいところです。

ウェストブルックは存在感がありすぎるだけに、優勝を目指すチームにとって戦力アップというメリットよりもバランスを崩してしまうリスクの方が大きく、かといって再建チームからするといまさらウェストブルック中心のチーム作りには踏み切りづらいものです。しかし、今オフで契約が切れたため、手頃で短い契約で獲得できる可能性が生まれたため、状況は大きく変わります。優勝への近道となるチームを選ぶのか、あるいは『ウェストブルックらしく』プレーできるチームを選ぶのか、本人も悩んでいるかもしれません。