サンズ

サンズ本来のチーム戦術は消えるも、また別の強みを発揮

ホームでの2試合を1勝1敗としたサンズは、ケビン・デュラントとデビン・ブッカーが平均58得点と強力なデュオとして機能しています。しかし、ともにプレータイムが44分を超える『ほぼ出ずっぱり』で、最初からスーパースターの輝きに託す戦い方は、サンズ本来のチーム戦術を忘れたようにも見えます。

近年のサンズはオンボールに強い選手よりもオフボールで仕事のできる選手を好み、それぞれの個性を存分に生かし、試合展開に応じて選手の組み合わせを変えてきました。役割が分かりやすく定義され、各選手が限定された仕事に全力で取り組むことでインテンシティが高く、そんな選手たちを組み合わせることで多彩なチームとして機能し、どんな相手にも粘り強く食らい付いて勝利をもぎ取ってきました。

ところがプレーオフに入った途端、スターターのプレータイムが長くなり、ローテーションの一角として機能していた選手の出番が減って、試合を通してワンパターンな展開になっています。また、シーズンではリーグ5位の11.8だったオフェンスリバウンドが6.5と半分近くまで減るなど、スコアラーばかりでサポート役が足りていません。

初戦のクリッパーズは試合終盤にラッセル・ウェストブルックが何度もリバウンドやルーズボールに食らい付いてマイボールにしていったことでサンズの反撃を封じ込めました。サンズからすれば、プレータイムが長くなった主力がインテンシティを保てず、永久機関のように暴れ回るウェストブルックのスタミナに押し切られた形です。

第2戦になっても、抜かれても後ろからブロックしてくるウェストブルックの運動量と、カワイ・レナードの鉄壁のディフェンスに封じ込まれ、前半は最大13点のビハインドとなりました。個人能力ではクリッパーズに分があっても、サンズはチーム力で分があるはずが、戦い方を間違えたことで早々に追い込まれたようでした。

ところが、ここからサンズは1on1中心の傾向をより強めることで窮地を脱します。狙いをエリック・ゴードンのディフェンスに定めたアイソレーション気味のプレーを増して次々に得点を奪い、クリッパーズがダブルチームを仕掛ければ鮮やかにパスを回し、後半は一方的なサンズペースとなりました。そして最後はマッチアップ変更でゴードンにマークされたポールが試合を締めくくっています。『エースで勝負する個人技』が上手くいかなかった反面で、『相手の弱点を突く個人技』は成功した形ですが、誰でも弱点を狙えるのはサンズの強みでした。

チーム戦術を強く押し出すよりも個人技中心になるのはプレーオフらしさではありますが、サンズが早々に個人技中心にしたのは意外な選択でした。逆にクリッパーズとしては強力なディフェンダーが目立ちやすい個人技勝負はありがたかったはずですが、簡単にスイッチしてしまう弱点を早くも露呈してしまいました。わずか2試合が終わった段階ですが、何かしら手を打たなければ、延々とこの展開に持ち込まれそうです。

プレーオフは短いようで長い戦いで、1年前のサンズは同じように主力のプレータイムが伸びた結果、第3戦から失速して点が取れなくなり、マブスに敗れました。クリッパーズは今は課題に直面していますが、サンズとしても一気にシリーズを決めてしまわなければ、プレータイムを分散させているクリッパーズが盛り返しそうでもあります。