指揮官「原、ギャビンに他のメンバーも出られなくても勝てたのはすごいことです」

4月1日、千葉ジェッツと琉球ゴールデンキングスの上位対決が行われた。富樫勇樹、ヴィック・ローと中心選手がビッグショットを決めるなど、ここ一番の遂行力で差を見せつけた千葉Jが89-85で激闘を制した。

試合の立ち上がりは、両チームともインサイドへの力強いアタックでズレを作り出すと、そこから確率良くシュートを沈め互角の展開に。第2クォーターに入ってもインテンシティの高いプレーの応酬で一進一退の攻防が続くが、前半だけで15得点を挙げたジョシュ・ダンカンの活躍もあって琉球がリードを奪う。だが、終盤に琉球の凡ミスで生まれたチャンスで小川麻斗が連続3ポイントシュートを決めて、42-40と千葉Jがひっくり返してハーフタイムを迎える。

後半に入ると、千葉Jは富樫のオフボールスクリーンをうまく使ってのドライブや、ローやクリストファー・スミスと外国籍フォワードがスピードのアドバンテージを生かして相手ディフェンスを切り崩していく。一方、琉球はフィジカルの優位を生かしてペイント内で攻めようとするが、千葉Jは積極的にトラップを仕掛けることでボールムーブを停滞させ、外からのタフショットを打たせる。こうして徐々に流れを引き寄せた千葉Jは、第3クォーター途中に11-2のランによって一気にリードを14点にまで広げる。

ここから琉球は千葉Jのトラップにアジャストし、岸本隆一、松脇圭志が連続3ポイントシュートを決めて盛り返す。しかし、第4クォーターに入ると、千葉Jは再び持ち味のスピードで、琉球の強みであるフィジカルを打ち消してリードをキープする。そして、残り2分にはローが3ポイントシュートを決めて10点差へと引き離す。

これで勝負アリかと思われた中、琉球が前からの激しいプレスディフェンスで千葉Jのターンオーバーを誘発。さらにダンカンの3ポイントシュートと懸命の追い上げにより、残り30秒で3点差に詰め寄る。だが、直後のポゼッションで富樫が3ポイントシュートを沈め激闘に終止符を打った。

本日、千葉Jは原修太が欠場。ギャビン・エドワーズに続く中心選手の不在でも、小川、米山ジャバ偉生と若手がステップアップすることで、リーグ上位の琉球を撃破した。ジョン・パトリックヘッドコーチも「強いチームに対して原、ギャビンに他のメンバーも出られなくても勝てたのはすごいことです。麻斗、(荒尾)岳、ジャバと普段そんなに出ていない選手が活躍してくれました」と笑顔を見せた。

「今日はシュートタッチが良くて、入るかなという気持ちで打てていました」

指揮官が言及した3名の中でも、オフェンス面で大きなインパクトを与えたのが小川で、3ポイントシュート4本中4本成功の12得点をマークする活躍だった。Bリーグ初先発と、与えられたチャンスをしっかりモノにした小川は、オフェンスについてこう振り返る。

「Bリーグに入って(3ポイントシュートは)1試合で1本、多くても2本の成功のみで、今まで満足感はなかったです。今日はシュートタッチが良くて、入るかなという気持ちで打てていました」

「勇樹さんが厳しいマークを受けているので、ツーガードで出ている時はアグレッシブにリングに向かってズレを作る。自分のところにヘルプが来ると、他の選手がプレーしやすくなります。今日は自分から攻めることを意識してやったのが良かったと思います」

こう手応えを話す小川だが、オフェンスとは対照的にディフェンスでは悔いが残ったと続ける。「今日、スタートで出せてもらって最初はハードにディフェンスできました。それが、1回ベンチに下がった後に出た時、最初と同じようにハードにプレッシャーをかけることができなくてコーチに言われてしまいました」

小川は福岡第一高、日本体育大でともにチームの中心を担うなど、学生時代はエリート街道を歩んでいた。しかし、大学3年のシーズン終了後、12月にプロ転向して千葉Jに加入後は「自分はできると自信を持っていますが、結構ネガティブなところもあります」とプロの壁にぶち当たって落ち込むこともあった。

だが、この厳しい時期を周囲の励ましによって乗り越えようとしている。「アシスタントコーチの小川(伸也)さんなどから『できるんだから、自信を持ってやれ』と言葉をかけてもらえるからこそ思い切ってできています。日頃の練習を積み重ね、いろいろな人たちが応援してくれていることは、自分にとって頑張れる力になっていると思います」

そして、ようやく持ち味である非凡な得点力を発揮できたことで、「自分もやれるところをBリーグの他のチームだったり、いろいろな人たちに見せられたと思います」と自信を深めている。

今日は千葉Jにとって、勝利とともに小川の覚醒というチャンピオンシップでの王座奪還に向けた大きな収穫を得られた試合となった。