マック・マクラング

ダンク以外のプレーを磨く「自分の番がきっと来ると信じている」

マック・マクラングはNBAオールスターウィークエンドのダンクコンテストで文句なしの優勝を勝ち取った。それでも彼はセブンティシクサーズ傘下のGリーグチーム、デラウェア・ブルーコーツの選手で、ダンクコンテストの数日前にシクサーズと2ウェイ契約を結んだばかりで、トップチームに呼ばれるのを待つ立場。Gリーグの選手として初めてダンクコンテストに優勝し、一躍有名になったシンデレラボーイだ。

しかし、彼のエージェントを務めるダニエル・ポネマンは『シンデレラボーイ』であることを否定する。ポネマンは『The Athletic』に、ダンクコンテスト優勝の反響がいかに大きいかを語っているが、彼のことを今回初めて知ったのは一定の年齢を超えた大人だけだと強調する。

高校時代から彼の身体能力と技術の粋を集めたダンクの動画がインターネット上に出回っており、10代の頃からマクラングはザイオン・ウイリアムソンやラメロ・ボール級の有名人で、彼を知る者はダンクコンテスト出場が決まった瞬間に優勝を確信していたと言う。

もちろん、ポネマンも「よほどのヘマをしない限り」マクラングの優勝は固いと考えていたが、世間一般へのアピールの場として格好の舞台であり、エージェントである彼も緊張でガチガチになっていた。ところがダンクコンテストの直前にマクラングがフラリとやって来て「次はどのダンクにしようかな」と言った時には、「まだ選んでないのかよ!」と呆れたそうだ。実際、優勝を決めた後にマクラングは「誰も見たことのないダンクをいくつも準備してきた」と語っており、まだ見せていないダンクも何個かありそうだ。

マクラングはまだNBAでの実績がほとんどなく、主戦場はGリーグだ。オールスターブレイク明けのグリズリーズ戦にも彼はコールアップされていない。会場には呼ばれたが、プレーするためではなくティップオフ前のセレモニーでフィラデルフィアのシンボルである『自由の鐘』を鳴らす役回りだった。

それでもダンクコンテスト優勝の余波はすさまじい。NBAは、ダンクコンテストから12時間で5億人以上が彼のダンク動画を見たという。彼のスマホの未読メッセージは1000件を超え、あまり眠れないそうだ。

そしてブルーコーツには大小様々なメディアからの取材依頼が殺到した。『USA TODAY』によればブルーコーツのフロントスタッフは8名しかおらず、シクサーズから広報に来てもらい何とか対応したそうだ。ダンクコンテスト前の試合は790人だった観客が、現地22日には1697人と倍増し、24日には2161人となった。マクラングの応援ボードも数多く掲げられ、彼を目当てに初めて試合に足を運んだファンも多いだろう。まだ間に合っていないが、Gリーグは彼の名前と背番号0の入ったジャージーを売り出す準備をしている。

自分の評価を高めるために個人技に走りがちなGリーグにあって、マクラングがダンクで観客を沸かせるのはワンマン速攻など余裕のある時だけで、ポイントガードとしてパスも重視。24日の試合では13得点5リバウンド12アシストのダブル・ダブルを記録している。

ダンクコンテストでそうだったように、Gリーグでの試合を終えてもマクラングは「NBAでプレーしたい。そのための努力は惜しまない」と、夢の実現へ向けて力強い言葉を残した。

ただし、188cmのガードがNBAで評価を得るのは決して簡単ではない。彼の武器であるダンクは、Gリーグでもそう簡単には決まらない。ファストブレイクでは決められても、7フッターのブロックショットをかいくぐるのはまず不可能だろう。だからこそ、彼はNBAで通用するプレースタイルを模索している。自分でフィニッシュに行くだけでなくアシストを増やし、ジャンプシュートを磨いて今シーズンのGリーグでの3ポイントシュート成功率は45.6%まで向上している。

マクラングは言う。「チャンスがいつ来るかは分からない。だけど、自分の番がきっと来ると信じている」