文=鈴木健一郎 写真=Getty Images

代表漬けの夏に積み上げたものは『リセット』

今週行われた新生日本代表の重点強化合宿、招集された選手の中に、ひときわ精力的に練習する篠山竜青の姿があった。新しいコーチが来て、新しいバスケットをやるのであれば、ポイントガードが一番先にそれを吸収しなければならない。その中でも篠山は、取り組む姿勢の良さが目立った。

とはいえ、篠山とて今年春に代表初招集を受けた「代表1年目」である。五輪最終予選(OQT)に臨む代表候補16名に残ったが、最終メンバーの12名に入ることはできなかった。その後はOQTに敗れてすぐさま出直した日本代表には継続的に招集され、『代表漬け』の夏を過ごした。そこで得た経験と自信が、AKATSUKI FIVEにおける篠山の熱意に繋がっているのだろう。

メディアに公開された昨日の練習はディフェンスの指導が中心。『日本の選手は真面目すぎて、無駄なヘルプが多い』という指摘を映像を見ながら説明され、本当に必要なヘルプ、本当に必要なローテーションの考え方と実際の動きを指導された。

テクニカルアドバイザーとして選手を指導するルカ・パヴィチェヴィッチについて「すごく細かくやってくる人」と篠山は感想を口にする。「無駄なヘルプ、無駄なローテンションをなくして、1対1は1対1で、2対2は2対2で守るというところは非常に勉強になります」

「そこは代表だけじゃなくどこのチームでも共通すると思うし、日本のレベルアップにつながること。ディフェンスに関しては、細かいですけどしっかり身につけないといけない基本中の基本なので、しっかり身体に染み込ませたい」

同じ川崎ブレイブサンダースの永吉祐也と練習中に同じグループになったことでの収穫もあった。篠山は言う。「ピック&ロールでのディフェンスのコンビネーションはすぐにでもできると思うし、永吉とコミュニケーションをとって自チームでも使っていきたいです。オフェンスに関しても、スクリーンの角度やピック&ロールのタイミングとか、良い引き出しをもらえたので、そこは自分にとっても永吉にとってもアイデアが増えたと思います」

多くの代表候補を競わせることで、Bリーグでの競争も激化

代表での活動について篠山は以前、「国を代表して戦う意味を考えながらやっています」と強い意気込みを見せながらも、過密日程が続くことに「かなり大変です」と正直な気持ちを語ってもいた。

今回、ヘッドコーチが代わり、選手評価もゼロから行われることになったが、OQT後の日本代表のためにハードワークしてきた篠山のような選手にとって、それは積み重ねてきたものがリセットされた感覚ではないだろうか。

監督が代わり、システムが変わる──。これに対して篠山は「まあやるしかないと思いますね」と素っ気ない。「アジアでは僕らはこれからの国だし、長谷川さんになって久しぶりに世界の扉も開けたところでこういう変化というのはリスクはあると思いますけど、変化を受け入れて前に進んでいかなきゃいけない。そこは割り切ってやらなきゃいけないと思います」

割り切り、という言葉が篠山を含む何人かの選手の本音なのだろう。ただ、68人もの重点強化選手を集めての『生き残りを懸けた争い』に、篠山は真正面から取り組む覚悟をすでに固めている。

「裾野を広げる意味ではいいと思います」と彼は言う。「これまでの実績や経験を抜きにゼロからやっていく考えは納得の行く部分もありますし。同じポジションのところで代表候補に入っている選手とBリーグでマッチアップする時は意識も変わってきますし、競争が生まれていいのかなと思います」

選手としたら大変だろうが、すべては日本代表の強化のため。そして見る側からしたら、競争が激化しレベルが上がるのは大歓迎だ。代表候補選手たちの熾烈な競争を、しっかりと見届けたい。

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