ダニエル・ギャフォード&クリスタプス・ポルジンギス

異なる個性が噛み合うコンビ、新たな勝ちパターンを確立

ウィザーズは11月末から10連敗を喫して11勝20敗と落ち込みましたが、その後は6勝1敗と持ち直しています。現在は5連勝中。直近の3試合はエースのブラッドリー・ビールをケガで欠きながらの勝利です。

スモールラインナップや3ポイントシュートを決めるセンターが常態化した中で、その逆を行くように最近はビッグラインナップが流行となっていますが、ここにきてウィザーズもクリスタプス・ポルジンギスとダニエル・ギャフォードのツインタワーをスターターに並べています。ここまで115分と短い時間ながら、レーティングはオフェンスが127、ディフェンスが98と攻守に圧倒的な結果を残しています。

2人を並べることで高さのメリットが生まれるのは当然ですが、ギャフォードはセンターでありながらウィザーズでトップクラスの運動量を誇っており、機動力で負けないことが特徴になっており、ツインタワーでディフェンスリバウンドを確実にキープし、即座に走り出すことでトランジションアタックに繋げています。一般的なツインタワーのデメリットを感じさせず、早い展開を生み出せるのがオフェンス力を向上させています。

またハーフコートオフェンスでは、ペイント内でのコンタクトプレーを好まないポルジンギスがシューターやポストとして起点になるのに対し、ゴール下専門のギャフォードはスクリーンやゴール下のポジション取りなどフィジカルに戦うため、お互いの役割を邪魔することなくスペースをシェアできています。

最大の魅力は60%近いリバウンド奪取率ですが、ここでもディフェンスリバウンドに強いポルジンギスと、オフェンスリバウンドに強いギャフォードと特徴が異なっており、補完関係ができています。ポジションだけで考えれば重なってしまうように見えますが、2人のプレースタイルの違いを考えると良いコンビなのかもしれません。

ツインタワーはディフェンス時のマッチアップに困りますが、ギャフォードは通常通り相手のビッグマンをマークしているのに対して、ポルジンギスがガードをマークする変わったマッチアップで対処しています。ペリメーターを追いかけないポルジンギスなので、ネガティブに言えばサボっているような形ですが、ポジティブに言えば自分のマークよりもヘルプディフェンスを優先しており、ウィザーズのゴール下は高い高い壁が確実に用意されるようになりました。イージーな失点をしないことで、チームのディフェンス力は向上しています。

ツインタワーは3ポイントシュートを打たれやすいのが明確な弱点ですが、インサイドを固めてイージーシュートを許さず、確実なリバウンドからトランジションへと移行しやすくなったことで、収支として大きなプラスになっています。これから弱点を狙われた時に、どのような対処をするかで、ツインタワーがメインの戦い方になるかが決まってくるでしょう。

また、ツインタワーに派生して別の変化も出てきました。2人をベンチに下げると、八村塁、カイル・クーズマ、ダニ・アブディヤなどウイングを増やし、センターを起用しないスモールラインナップを敷いています。スターターとベンチメンバーでポジション通りの選手交代をしていたウィザーズが、試合の中で戦い方に大きな変化をつけるようになってきたのです。

ツインタワーの成功には、直近の対戦相手に欠場者が多いこともありますが、チームに新たなオプションが生まれ、それが結果に繋がっているのは間違いありません。相手の弱みに付け込むような戦い方ができないのがウィザーズの難点ですが、自分たちがあえて偏った戦い方に持ち込むことで相手を惑わせ、新たな勝ちパターンを作り上げようとしています。