文=古後登志夫 写真=松原真

ウインターカップ優勝20回を筆頭に、女子バスケットボール界で圧倒的な実績を誇る桜花学園だが、昨年のウインターカップでは決勝で敗れる悔しさを味わった。名指導者として知られる井上眞一監督の下でアシスタントコーチを務めるのは、昨年夏に15年の現役生活を終え、母校に戻って来た小川由夏(旧姓:渡辺)。シャンソンVマジックと日本代表で長く活躍した経歴を持つ小川に、リベンジを期す桜花学園について話を聞いた。

自分でプレーするのと教えるのでは全然違いますね

──小川コーチは桜花学園の卒業生です。実業団で長く活躍し、日本代表でも経験を積んで、現役引退とともに母校に戻ってきました。その経緯を教えてください。

引退する2年ぐらい前に井上先生からコーチをやらないかと電話をいただきました。正直、その頃は選手という意識しかないし、将来的に指導者になることも考えていなかったんです。だから「コーチなんて無理です」という感じでした。それでも先生や前からいるコーチの方、前の寮母さんに相談しているうちに、だんだん「必要とされるのはありがたい」と思うようになって。正直、引退後にどうしようという考えもありましたし。

──それでセカンドキャリアとして、母校で指導者になる道を選んだというわけですね。

それでも現役としてまだ1シーズンはやりたかったので、一度はお断りしたのですが、「待つ」と言ってくださって。現役生活をあと1年と決めると、それで気持ちも変わってきました。これまでやってきたことを生かすには指導者が一番良いだろうし、私にできることがあればやりたい。しかも母校だし、先生にもお世話になったから少しでも恩返し、手助けができればと。

──母校に戻って来て1年とちょっと、高校生の指導はいかがですか。

自分でプレーするのと教えるのでは全然違いますね。そう聞いていたし、自分でも分かっていたつもりでしたが、想像をはるかに超えていました。自分でやって見せて「こうだよ」と言っても意味がない。もちろん見せるのも大事なんですが、選手が理解してできるようにしなきゃいけないですよね。最初はそのもどかしさがすごくありました。

──言葉だけでは難しいし、自分が全部やってもダメですよね。

そこで思ったのが、自分が受けていた指導のことです。高校時代の自分は、教えてもらうことをコートでやっていただけで、先生の指導の意図は考えもしなかったです。コーチの立場になってようやく気付いたのですが、先生の練習中の言葉ってすごく的確なんです。それは勉強になりました。

──それは具体的にどういうことですか?

例えば選手に対してどう伝えるか。ダラダラ長く話しても伝わらないし、言葉が足りなくても分かってもらえない。でも先生はその2つをうまくやっていて、的確な言い方をするから分かりやすい。そのことを実感して、先生はすごいとあらためて思いました。

日々アグレッシブにやれば、キツいけど絶対に変わる

──小川コーチの時代と今とを比較すると、バスケットボールにどんな違いがありますか?

私たちの時はそこまで留学生がいなかったですね。だから今は身体能力が高い子がすごく増えました。やっぱり身体の作りも動きも違います。それに応じて日本人選手のレベルも底上げされていると思います。

──日本代表も経験した目線から、今の選手たちに「もっとこうしてほしい」と思うことはありますか?

単純なことですが、高校生だから飽きやすい部分があります。練習も同じことが続くと飽きてしまいます。でも、実業団もやっていることは一緒で、結局は繰り返しになるのですが、同じことの繰り返しでもダラダラしません。何が何でもメリハリをつけて徹底します。

こちらも高校生を飽きさせないよう工夫しますが、桜花学園は基本をすごく大事にするので、どうしても繰り返しのメニューが多くなります。そこでもっと毎日アグレッシブにやってほしいです。キツいですけど、絶対に変わるので。

──ちなみに桜花学園では一日どれぐらい練習するんですか?

学校が住宅地の中にあって、ボールを突いたりすると騒音になってしまうので、朝練と夜練はやっていません。自分が高校生の時はラッキーだと思っていました(笑)。朝練をやったとしてもボールを使わず走るだけ。走った後に食事をして8時半には学校に行って。16時すぎから練習で、日によって違いますが遅くても20時には終わります。

──桜花学園は上下関係とか『体育会』の厳しさはありますか?

上級生を呼び捨てにするようなことはありませんが、コートで上下関係を出すことはありませんね。チームの雰囲気が悪くなることもほとんどないです。今は3年生が個性的なんだけど、みんな明るいから暗い感じにはなりません。