高校女子バスケでこの数年で急成長を見せているのが東海大学付属福岡だ。強豪校や伝統校が居並ぶ福岡県で2位に食い込み、ウインターカップ初出場を決めたのが2019年。翌年から198cmのサイズを誇るセネガルからの留学生、ファール・アミナタを擁して全国大会の常連となった。今夏のインターハイでは3位と躍進。それでも宮﨑優介ヘッドコーチに驕りはない。桜花学園とトーナメントで同じ山に入ったことに興奮しつつ、県大会出場を目指した初心を忘れず、チャレンジャーとして大会に臨む。
「ゲームを理解しながらバスケができるようになった」
──ウインターカップ初出場から、4年連続4回目の出場となります。今年のチームはどんなチームですか?
初出場の2019年には留学生がいなくて、今回はアミナタを迎えて集大成の3年目です。今年は県内、九州では負けることなくインターハイ、ウインターカップまで来ているので、そこは選手たちに感謝したいところです。
ルーキーで伊東友梨香という中学でキャリアを積んだ選手が入って来て、夏の大会では彼女がチームにマッチングするのが厳しい場面が多かったんですけど、インターハイや国体でプレータイムをもらって経験を積み、ウインターカップの県予選では安心して見ていられるようになったのが大きいです。そこは上級生も含めて精神面の向上がしっかりついてきていると思います。
練習中だと私と選手で試合についてコミュニケーションを取ることが多いんですけど、いざ公式戦になると選手の側から戦術などの話をすることは過去を振り返ってもなかったのですが、伊東はそういった場面でも戦術的なアドバイスを求めてくるので、クォーター間の過ごし方が変わってきました。そこは40分間の中でゲームを理解しながらバスケができるようになったと思います。
タイムアウトの数には限りがあるので、日頃の練習から選手が自分たちで問題解決できるよう求めてきて、それがチームとして根付いてきた感があります。今回、県の決勝で福岡大学附属若葉に一度逆転されるシーンがあったのですが、タイムアウトを取ったら選手たちが動揺することなく1分間の中で整理をしてコートに戻って、自分たちで流れを作って再逆転しました。そこは選手たちのバスケIQの成長をすごく感じた場面です。
──インターハイでは3位という好成績を収めました。これでチームに変化はありましたか?
チームの目標であるベスト8を達成して優勝候補の明星学園と対戦させてもらい、厳しい展開もあったんですが勝ち上がっていく中で選手たちの成長を感じられましたし、私自身もゲームの流れを見て選手を起用するところで選手たちと上手くマッチできて、チャンスをモノにできたと思います。インターハイの後、その上の結果を求めることで、選手たちのバスケに対する姿勢も大きく変わりました。ウチにはキャリアのない選手が多いので、全国の舞台で戦う中で自信を得られているのはすごく実感しています。
また、インターハイが終わってガードの浜口さくらがケガで離脱をしたところで3年生の成長があり、それが下級生の伊良部由明、境さくら、伊東をすごく支えているのを感じます。
「4年連続出場を一つでも長くできるよう、しっかりチームを育てたい」
──福岡県予選は決勝リーグで全勝しました。それでも相手は強豪揃いで苦しい展開もあったと思います。
決勝リーグ初戦の精華女子との試合がポイントで、アミナタのファウルトラブルなど空気感としては我々に不利なゲームの中で、平常心を保って40分間戦って僅差で勝てたことが、その後のゲームにも繋がりました。逆転されても動揺しないメンタリティが選手たちに根付いているので、ウインターカップも楽しみです。
──メンタルは練習すれば強くなるものではありませんよね。何かきっかけはありましたか?
インターハイ準決勝のメインコートに立ったことだと思います。私自身もメインコートで試合をするのは初めてで、選手たちにも良い経験になったと思います。あの舞台で大阪薫英女学院と互角に戦うことができて、自信になったんじゃないかと思います。
私の中では、吉村明先生が中村学園を常にメインコートに連れていっていたイメージがあり、そこを追いかけていた部分もあります。福岡県勢としては12年ぶりのメインコートだと聞いています。安間志織選手が中村学園で1年生の時に、札幌山の手さんとインターハイもウインターカップでも決勝で戦ったのが多分最後だと思います。
あの頃の私は23歳で教員になったばかり。チームは5人揃わないところからのスタートで、県大会出場が目標でした。福岡にはあこがれの強豪校があって、いつかは同じ舞台に立ちたいと当時の選手たちと思いを一つにしながら積み上げてきたので、そういった思いをようやく形にできました。福岡県から全国に行くことは決して簡単じゃないので、ウインターカップの4年連続出場を一つでも長くできるよう、しっかりチームを育てたいです。
──それでも今では4年連続のウインターカップ出場ですし、インターハイ3位です。コーチとしての自分の成長をどう感じていますか?
ベンチに立っている自分を客観的に見た時、ゲームの状況をどう把握しているか、タイムアウトの指示の出し方だったりは数年前の自分よりもずっと明確になっているので、私自身もゲームを通じて成長させてもらっていると思います。
それは選手たちも同じです。女子サッカーも6年連続で高校サッカー選手権の出場を決めているのですが、サッカー部とバスケ部の子たちが学校生活でもすごくリーダーシップを取って、奉仕活動も率先してやってくれています。同じ学校の女子同士、違う競技でお互いに活躍することが良い刺激になっているし、そういった日々の積み重ねがバスケにも繋がっているとすごく感じます。
「県予選までとは違う東海大福岡のスタイルを作っていきます」
──ウインターカップでの目標はどこに置きますか? 夏のインターハイが3位だから、冬は決勝進出ですか?
ベスト8ですね。大会ごとに目標にしているところを一つひとつ達成していきたいです。組み合わせを見た時に、すごく楽しみだと思ったのは桜花学園が入ってきたこと。私も井上眞一先生と一度対戦したい気持ちは正直ありました。卒業生たちもすごく楽しみにしているというメッセージをたくさん送ってきてくれています。まだどこが勝ち上がってくるか分かりませんし、ウチもまずは初戦が大事なんですけど、桜花学園と対戦できるのはすごく光栄です。
──ウインターカップではどんなバスケを見せたいですか?
今年1年を通して特に成長したのは3年生の赤間静夏で、彼女の得点能力がどれだけ発揮できるかが勝敗に響いてくると思います。あとはチームの売りであるディフェンスのところで、稲次菜々子と藤本愛香がアグレッシブに相手にプレッシャーを掛けて流れを作ってくれることが多いので、この3年生の頑張りを見てもらいたいです。そういった中で下級生の伊良部、境がスタートでチームを引っ張ります。下級生ですが堂々と、観客を魅了するようなプレーをするので注目してもらいたいです。
県予選まではアミナタを中心としたバスケをやってきましたが、今は映像がすごく手に入りやすいですし、警戒されますので、県予選までとは違う東海大福岡のスタイルを作っていきます。この短期間でアミナタもドライブの練習をしたり、プレーの幅を広げているので、いろんな戦術を組み込みながらウインターカップを迎えたいです。
──県予選ではアミナタ選手がハイ&ローの『ハイ』をやるプレーがハマっていました。
そうですね。アミナタが『ロー』では若葉さんも当然アジャストしてくるので、ポジションを入れ替えて練習してきました。そこを見ていただけたのはすごくうれしいです。ウインターカップではそういうプレーを増やしていきたいです。
ただ、ドンと構えるのではなく、あくまでチャレンジャーとして臨みます。県予選だと「勝つのが当たり前」という見られ方をしていて、変なプレッシャーも正直感じました。それでもウインターカップの組み合わせを見て、地区大会を勝ち上がって県大会、九州、インターハイとチャレンジャー精神で戦っていた原点に帰れるような気がして、それにすごくワクワクしています。
──では最後に、ウインターカップに向けた意気込みをお願いします。
3年生と下級生のバランスがすごく良いチームになっていますので、3年生の集大成、下級生の成長と去年とはまた違ったバスケを見せられると思います。もちろん、試合の中で彼女たちはまた成長すると思いますので、そこに注目していただければ。試合では勝敗が付きますが、負けても次の年に財産が残っていくので、そういった意味でチームの歴史が変わるきっかけになると思います。気負いすぎることなく、今まで通り東海のバスケがどこまで通用するかを試しながら、選手たちと存分に楽しみたいです。