キングスを率いる佐々宜央『下克上戦記』vol.11 ~強いチームとは何か、どう作るか

2018/11/17
NBA&海外
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佐々宜央

文・写真=鈴木栄一

シーズン序盤戦の琉球ゴールデンキングスは、下馬評に違わぬ戦いぶりでリーグ上位の成績を残しているが、まだ『Bリーグのトップチーム』という評価を得たわけではない発展途上のチームだ。そんな琉球を率いるのは34歳の佐々宜央。選手としての実績はほぼ皆無ながら、東海大の陸川章、日立の小野秀二、栃木ブレックスのトーマス・ウィスマン、日本代表の長谷川健志と錚々たる指揮官の下でアシスタントコーチを務めてきた。琉球の指揮を任されて2年目のシーズン、彼はチームの現状と今後をどう考えて戦っているのだろうか。

「昨シーズンよりもコーチの力が試される」

──オフシーズンにはアーリーカップ関西、国際大会のテリフィック12に優勝。シーズンが開幕してからも貯金は順調に増えています。順調な出だしと見ていますか。

実は、シーズン最初の練習試合を非公開でアルバルク東京とやって負けています。向こうもいろいろと試しながらでしたが、あの試合ができたこと、そしてあのタイミングで負けたからこそ変わったところもありました。感触としてオフェンスは昨シーズンより良いと思います。ただ、ディフェンスがはまっていかないのは、コーチとしてはすごく嫌です。アウトサイドシュートが入ったら勝ち、入らなかったら負け、みたいな試合運びはしたくないです。

──今シーズンの大きな変化となるのが外国籍選手、帰化選手の起用ルールの変更です。この変更が采配に及ぼす影響はどう考えていますか?

外国籍の選手を3人にするか2人にするかの違いで、2人にすると選手起用におけるモチベーションのコントロールが利点になります。ただ、3人は練習における充実に加え、ケガ人が出た時の備えでは大きいです。どちらにせよ昨シーズンに比べると。どのようにプレータイムを配分していくのかなど、コーチとしてはより力が試される状況になってくる。平日開催が増えたこともあって、リードしていて試合の主導権を取れている時は、出場時間のことも考えます。

なるべくみんな1試合30分以下に抑えたい。それに外国籍の交代選手がいない中、ファウルトラブルは試合により響くので、それを避けるためにもゾーンディフェンス、トラップを多めにしようだとか、いかにごまかしていくのかの戦略、戦術が問われるようになっています。

──オフェンスに好感触を得ているとのことですが、昨シーズンとの違いとして攻めが停滞した時に並里成選手やジョシュ・スコット選手を筆頭としたゴール下のアタックなどでフリースローをもらうなど、うまく繋げている印象が強いです。

流れが悪い時に繋げるようになっているのは今シーズンの良さです。並里が起点になるところはプラスに感じていますし、他の選手の成長も大きいです。例えば、ケガをしてしまいましたが須田(侑太郎)はオフシーズンからアタックする感覚を磨いて、良いプレーを見せています。古川(孝敏)も同じで、もちろんアウトサイドシュート、ジャンプシュートを得意としてほしいことに加えてドライブを仕掛けられいる。このアタックする部分で、チームとして感覚をつかみ始めているのは良いと思います。

佐々宜央

チーム作りは「自然発生に委ねてはいけない」

──開幕時の先発が並里、岸本隆一、古川、ジェフ・エアーズ、スコットだったのが、6試合目から並里、須田(故障後は田代直希)、古川、アイラ・ブラウン、スコットに変更しました。これは攻守のバランスを考えてのことですか。

まさにその通りです。ボールハンドラーが1人いて、ボールのないところで動く選手が2人、インサイドに2人という形です。ただ、このバランスで1試合を通すことはなく、状況によっては並里と岸本が一緒にプレーすることもありますし、いろいろな組み合わせとなります。

──シーズン序盤はチーム作りの段階で、終盤を見据えていろいろ試す時期でもあります。一方で目先の1勝を取っていくことも大事で、その辺りのバランスをどのように考えていますか。

どういうビジョンを持って選手を起用していくか、いろいろと考えます。オフェンシブな個性を持った選手が揃っている中、どれだけチームのディフェンスの約束事ができているのかを基準評価にしようと思っています。今は、まずオフェンス、ディフェンスともに基礎となる部分をどこまで上げられるかを考え、そんなに先を見ていないです。着々と一つひとつ、チームとして必要最低限のことをやれているかを大事にしています。

──昨シーズンを振り返れば、ここ一番のオフェンスで誰にボールを預けるのか、試行錯誤していました。今シーズンは、オフェンスのエースについてはどのように考えていますか。

昨シーズンは最終的に岸本かハッサン(マーティン)にまとまったというところ。今シーズンは岸本に加え、並里、エアーズ、スコット、古川がいる中で、最後のゲームの締めを誰に任せるのか。それがまだ固まっていないので、そこは大事な要素になってくると思います。

──これは試合を重ねて経験を積んでいく中で、自然とここ一番でのオプションが生まれるという意識ですか。

今年は並里や岸本と、スピードのあるガード陣を生かしてより早いテンポのバスケットボールを展開していくことを目指している。去年とはまた変わっているので、段階を踏んでいく中で明らかになっていく部分はあります。しかし、接戦の最後にこういうバスケットをしていこうとコーチが指示をする必要はあるので、自然発生に委ねてはいけないと思います

ただ、エース格となる選手が、最後は強引にでもシュートを打てばいいというわけではないです。去年、ヒルトン(アームストロング)と話したことがあって、彼はNBAでキャリアを積んでいる選手ですが、いろいろなスコアラーの中であえてプレーしたい選手を選ぶとしたら、ステファン・カリーと言っていました。なんでと聞いたら「だってパスが来るから」と。あれだけ点を取るだけでなく、最後はチームの勝利のための最善の選択ができるのがカリーのすごさです。チームとして誰かが必ずシュートを打つより、状況に応じてより良い選択肢ができるかが大事になってきます。

また、明確なエースとなるゴートゥガイを決めるのでなく、ひたすらボールをシェアして特定の誰かでなくチームで崩したところでオープンショット作るというのもある意味で一つの徹底です。極端なアドバンテージがあればそこを攻めますが、上位陣を相手にするとそういったことは少なくなってきます。そして、今の段階ではまずチームバスケットをもっとしっかりできるようにしたい。誰か一人というのは、あんまり決めたくないっていう思いが強いです。

佐々宜央

優勝に必要なのは「40分間徹底していく我慢強さ」

──序盤戦を終えて率直に、今の琉球のチーム力をどう見ていますか?

昨シーズンよりは間違いなく力はあると思います。僕の指導力どうこうは関係なく、並里、橋本などが加入し、さらに昨シーズンからのメンバーも成長しています。例えば昨シーズンと今シーズンの田代(直希)は全く違います。ただ、優勝を目指すためには、個々の力をチームとしての力にまとめていく。そして、やるべきことを40分間徹底していく我慢強さが必要です。

──この我慢強さ、集中力の持続はチームの課題としてよく話に出てきますね。

例えば第4クォーター途中で15点くらいリードをしていて、そこでさらに突き放して試合を決められず、集中力が切れて追い上げを許してしまうのは、優勝に対してまだまだだな、と思うところです。こういった展開で30点差にして、あまり試合に出ていないメンバーを出せる状況に持っていくことができていません。

やはり、やるべきことを試合を通してやりきれていない、というのが僕の中にあります。栃木には優勝する前の年までいさせてもらいましたが、その時に優勝できると思っていたのは、しっかりやりきることができていたからです。開幕前に練習試合をやった時も、彼らはディフェンス、リバウンドに対する意識であり、チームとしてやるべきことをやり続けるための集中力が切れることが少ない、と思い知らされました。

ウチのチームはまだそこの部分が欠けています。今のメンバーは、僕が在籍していた当時の栃木と比べてタレントで引けを取っているとは思わない。だからといって今、絶対に優勝できると自信を持てるところには到達していない。集中力を持続して、40分間自分たちのプレーをやり通したら絶対に負けない、そういう自信を持てるチームにしていけるかが、これから目指すべき指標になってきます。

──ヘッドコーチ2年目ということで、1年目と自身の変化を感じますか?

自分が昨シーズンより良いコーチになったという感覚は全くありません。反省と修正を積み重ねた経験があり、そういった意味ではちょっと違ったマインドにはなっているのかと思います。昨シーズンの1年間の経験は大きいので、それを生かさないとダメだな、というところですね。また2年目になると選手と互いの理解度が深まる。向こうも自分がどういうコーチなのか、どういうことを大事にしているかが分かってくれているのは大きいです。

──コーチとして成長していくため、どんな部分を意識しないといけないと考えますか?

我慢強いチームを作るには、コーチとしてまだまだ未熟だとここにきてさらに思います。栃木の試合、ルカ(パヴィチェヴィッチ)や、秋田のペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)コーチの采配を見ると、やっぱりやりきれる力があるとリスペクトします。理想は彼らみたいにもっと追求して、徹底していきながら、状況によっては「こういう手もあるのね」という作戦を自分の引き出しから出せるコーチになることです。今は徹底しきれていない中で、引き出しから何かを出そうとしているのがコーチとしての弱さなのだと痛感しています。