チームに勢いをもたらすディフェンスと、速攻の先頭を走る役割
渡邊雄太がネッツの開幕ロスター入りを果たした。グリズリーズで2年、ラプターズで2年を過ごした渡邊は、NBAで5シーズン目を迎えることとなる。
ラプターズを契約満了となった渡邊は無保証のキャンプ契約でネッツに加わったが、プレシーズンゲームでは生き残りを争う若手たちと一緒にプレーすることは少なく、あくまでメインの選手たちと同じ時間帯に起用されていた。ロスター入りを争う立場ではあったが戦力と見なされていたのは明らかで、開幕ロスターに残るのはほぼ間違いなかった。
気になる起用法を考えてみたい。新加入のベン・シモンズはパワーフォワードで起用し、ポイントガードのカイリー・アービングとゲームメークの役割をシェアすることが予想される。シモンズとセンターのニコラス・クラクストンのバックアップは、ロイス・オニールとマーキーフ・モリスが務める。
ラプターズでの渡邊はチーム事情から主にパワーフォワードで起用され、インサイドでのディフェンスを求められることが多かったが、ネッツでは純粋なフォワードになりそうだ。ケビン・デュラントのバックアップが主な仕事。それでもデュラントは昨シーズンの平均プレータイムが37.2分で、プレーオフに至っては44.0分とほぼフル出場。単なる繋ぎの役割であれば、渡邊に与えられるプレータイムはエースに一息入れさせるわずかな間だけだろう。
それでも、デュラントの負担が大きすぎるのが昨シーズンのネッツの課題であり、今オフに彼がトレードを要求した要因の一つでもある。試合の48分間のうち、大事な時間でプレーするのはデュラントだが、渡邊としては信頼を積み重ね、そうでない時間帯に任せられるプレータイムを伸ばしていくしかない。相手がデュラントとなれば難しい課題となるが、渡邊のプレータイムが10分から15分、20分と伸びていけば、それだけエースの負担が減り、ネッツにおける渡邊の存在価値は上がっていく。
当然、デュラントと同じエースムーブが求められるわけではなく、コートに立つ間は泥臭くファイトしてディフェンスでチームに勢いをもたらし、速攻の先頭を走る役割を遂行することになる。これは渡邊にとって、ビッグマンの仕事をやらされたラプターズ時代より対処しやすいはずだ。
ここで信頼を得て、さらに3ポイントシュートの成功率も及第点以上をキープできれば、ジョー・ハリスとセス・カリーの役割に食い込むことも可能だ。ハリスもセスも実績では渡邊よりはるかに上の選手だが、開幕時点でケガを抱えており出遅れている。
ちなみにネッツは非常にケガの多いチームで、これだけケガが続くとツキでは済まされず、ケアの体制であったり無理な起用法であったりに原因がありそうだ。渡邊もこれまで足首のケガを繰り返し、調子が上がってきたところで離脱している過去があるだけに、激しくプレーしながらも、なおかつケガをせずにシーズンを乗り切らなければならない。
NBAで4年のキャリアがあるとはいえ、渡邊に大きな実績があるわけではない。それでもグリズリーズやラプターズと比べて、デュラントのようなスター選手を支える役割に徹するネッツはプレーしやすいはずだ。彼自身、シーズン始動の会見で「これだけスーパースターが揃っているので、自分の役割は泥臭いことになっていく。チームに自分のエナジーをもたらすことが大事」と意気込むとともに、「スター選手がいる中での自分の役割を考えるとワクワクする」と語ってもいる。
「今年もそんなに簡単にいくとは思っていませんが、自分のやるべきことをやれば結果は出ると思っています。楽しんでやっていきたい」。そう語る渡邊雄太の『5年目の飛躍』に期待したい。