主役たちのプレーを楽にする、ロールプレーヤーの重要性
昨シーズン途中にジェームス・ハーデンを獲得したことで、チャンピオンリングへの期待も高まったセブンティシクサーズですが、プレーオフでは例年と同じように空中分解してしまいました。ハーデンをコーナーに置いてジョエル・エンビードにアウトサイドからの個人技突破をさせるなど、チームとしてではなく、個人として戦い、またも不協和音が聞こえてきました。特にハーデンへの批判が大きく、衰えを指摘もされました。
ハーデンは確かに得点が減った一方で、エンビードのフィールドゴールの半分以上がハーデンのパスから生まれており、緻密なポジショニングとディフェンスの動きを見てジャッジするプレーメーク力は輝いており、トバイアス・ハリスやタイリース・マキシーの得点力を輝かせる役割に徹していました。しかし、ハーデンのすごみはチームには理解されていなかった様子でした。
迎えたオフにハーデンは大幅な減俸を受け入れ、チームに補強を促しました。キャップスペースに余裕ができたことでPJ・タッカー、ダニエル・ハウスjr.、そしてモンテレズ・ハレルと次々に『元ロケッツ』の選手を集めていきました。エンビード中心の戦術で根本が変わらなかったシクサーズに、ハーデンのプレーを理解している選手を加えることで、わかりやすくスタイルチェンジを促すことにしました。
シクサーズに足りなかったのは、パスを待つのではなくタイミングを合わせて自分から動き出すオフボールムーブや、ドライブコースを開けるためのスクリーン、相手のカウンターを潰す攻守の切替時の小さい努力の積み重ねです。見えにくい貢献で主役たちのプレーを楽にするロールプレーヤーの重要性を、元ロケッツの選手に示してもらう必要があります。
個人で点を取れる選手を擁するシクサーズの良さと、エースが点を取りやすいように見えないプレーで助けるロケッツの良さが融合すれば、止められないオフェンスが完成しそうです。しかし、そう上手くはいかないのもバスケの面白い部分だけに、お互いのプレーへの不満が募る可能性もあります。エンビードのためのバスケと、ハーデンのためのバスケがどのような化学反応を起こすのか、楽しみでもあり、怖さもあるシクサーズです。