ブランソンは止められずとも、チームの連携は断ち切る
東のカンファレンスファイナルはハイスコアでの接戦が続き、常にどちらが勝ってもおかしくない試合展開でしたが、ペイサーズが4勝2敗でファイナル進出を決めました。第1戦の大逆転勝利をはじめ、わずかな運の差が勝敗を左右した面もありますが、ハイスコアの戦いでは常にペイサーズに分がありました。
そんな中で両エースのスタッツを見てみると、ニックスのジェイレン・ブランソンが平均30.7得点と奮闘しながらもオンコートでの得失点差で-4.3と苦戦しているのに対して、ペイサーズのタイリース・ハリバートンは+4.8と大きな差が出ています。
接戦となれば最後はエースの個人技勝負になるのがプレーオフであり、そこで止められないクラッチ力を持つのはハリバートンよりもブランソンです。ブランソンはアンドリュー・ネムハードやアーロン・ネスミスといったタフなディフェンダーに苦しめられながらも、フェイダウェイやステップバックから決めてくる勝負強さと、フィジカルコントタクトからのファウルドローで得点を重ねました。
ディフェンスに苦しめられているはずなのに、それでも決めてくるブランソンのメンタルタフネスも素晴らしく、ペイサーズは最後までブランソンに対する正解を見いだせません。ただし、それはあくまでブランソン個人に対してで、ニックスの連携を遮断することはできており、特にワイドオープンの3ポイントシュートのアテンプトは9.4本に抑えてイージーショットは許しませんでした。
これに対してペイサーズのワイドオープンの3ポイントシュートは17.8本とニックスの倍近いアテンプトがありました。シリーズを通して10.5アシストでターンオーバーはわずか1.7というハリバートンのチャンスメーク能力はペイサーズに大量のイージーショットを生み出していきました。運動量が多く、展開のスピードが早いペイサーズオフェンスで正確な判断とスキルでオフェンスを作り上げる能力は、タフショットの多いブランソンとは対照的でした。
勝負どころではタフショットも決めきったハリバートン
ペイサーズはハーフコートオフェンスになると様々なスクリーンプレーを使ってきます。ビッグマンのスクリーンでミスマッチを作るだけでなく、ブランソンにマークされている選手がスクリーナーになり、ニックスの連携の悪さを突いて『ディフェンスのズレ』を生み出すと、ハリバートンが適切な判断でオープンショットのシチュエーションを作りました。
オフェンスの目的は得点を取ることであり、そのためには難しいシュートでも決める能力と、イージーシュートを生み出す能力が必要になりますが、ブランソンが得意とするのは前者で、ハリバートンが得意とするのが後者です。ハイスコアの展開になっていけば必然的にイージーショットが多いチームにアドバンテージが生まれてきます。個人レベルで得点を奪うという点ではブランソンに分がありましたが、ゲームメークではハリバートンが大きく上回ったシリーズでした。
その上でハリバートンは第1戦のブザービーターをはじめ、勝負強いシュートも決めています。3ポイントシュートやミドルでのタフショットにおいて、ブランソンは平均5.2本のアテンプトで48%と驚異的な成功率でしたが、ハリバートンも平均1.7本しか打っていないものの44%と難しいシュートでも決めきっています。
豪華戦力を揃えたニックスに対して、第6戦ではトーマス・ブライアントが3本の3ポイントシュートを含む11得点を奪い勝利に貢献するなど、全員バスケのペイサーズという構図のカンファレンスファイナルでした。ただそれも、ハリバートンを中心にイージーショットを作れるからこそ、誰もが活躍できたと言えます。