佐々宜央

文・写真=鈴木栄一

敵将も脱帽の内容で守り合いの試合を制する

11月2日、琉球ゴールデンキングスが敵地に乗り込みアルバルク東京と対戦。第1クォーターに見事な先制パンチで大量リードを奪うと、そのまま67-53で快勝した。

第1クォーター、琉球は並里成の連続シュート成功、古川孝敏のファウルを受けながら3ポイントシュートを沈める4点プレーで10-2と先行する。さらに勢いに乗る琉球は、残り約4分半で6点リードの場面から岸本隆一の3ポイントシュート2本など怒涛の12連続得点。このクォーターの10アシストが示すように、効果的なパスからフィールドゴール15本中11本成功と驚異的な高確率を記録して26-10と大きく突き放す。

第2クォーターも琉球の流れは続き、残り約5分の時点でリードを23点にまで広げる。しかし、A東京も終盤になると琉球のターンオーバーに付け込んで馬場雄大の連続6得点で追い上げた。

ホームのA東京が反攻のきっかけをつかみ、ビハインドを14点まで縮めてのハーフタイムとなっただけに注目された第3クォーターの出だし。開始から琉球はアイラ・ブラウンの3ポイントシュート、田代直希のファストブレイクなどで連続9得点とビッグランで再びリードを広げる。

試合後、琉球の佐々宜央ヘッドコーチが「前半の最後にターンオーバーが増え、ディフェンスでチームルールのミスがあったりしました。いつもなら崩れそうなところで、後半の立ち上がりで9-0が来たのが大きかったです。それで最後まで守りきれました」と振り返ったように、これで再び勢いを取り戻した琉球は最後まで自分たちのリズムを維持する。残り約2分にジェフ・エアーズが豪快なダンクを叩き込んでトドメを刺した。

岸本隆一

「ディフェンスを激しく始められたゲーム」

佐々ヘッドコーチは、「ディフェンスを激しく始められたゲーム。オフェンスも気持ちが入っていました。出だしが良かったのでこういう試合展開にできました」と、第1クォーターで機先を制することができたことを勝因に挙げる。

指揮官の采配も見事にはまった。これまで岸本隆一、橋本竜馬について、岸本を2番、橋本を1番で使っていたのを「橋本を2番、岸本を1番で使うマイナーチェンジをしました」と、2人のポジションを入れ替えた。この意図について指揮官は次のように語る。「岸本はずっとボールを持っている方が、気持ちが乗りやすいのでその修正です。また、田中大貴を守るにはサイズも大事ですが、それ以上に気持ちが出せる選手でないといけない。そういった意味で、馬場へのマークも含めて橋本を2番で使い、相手に気持ちで上回れるようにしたいと考えました」

実際、橋本は持ち前のタフな守備で貢献し、岸本も8得点7アシスト4リバウンドと攻守に渡って躍動。「1番、2番と両方できた方が自分にとってもチームにとって良い。ポジションにこだわりなくチームに必要なものを探して、それを表現したいと思っていた中で、今日は少し表現できたと自信になりました。それぞれが持ち味を出せるように佐々さんは考えてくれているので、その起用法に応えたい」と、岸本は自身のパフォーマンスについて語る。

一方、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは「とてもシンプルなゲーム。琉球が私たちより強く、より良いプレーをしました。向こうのほうが、全体的にエネルギー、気迫があったと感じています。相手のエネルギーレベルに対抗できなかった。出だしの準備不足が反省点です」と素直に完敗を認める。

また、「この試合の前から、今シーズンの新しい外国籍、帰化選手に関するルールと選手補強の面から琉球は、現段階においてベストチームだと思っていました」とこれ以上ない賛辞を送った。とはいえ、名将パヴィチェヴィッチが、連敗阻止へ向けてチームを引き締め、何らかの策を講じてくることは間違いない。今日の試合、どちらが激しさで上回れることができるのか、かつて日本代表で師弟関係にあった両ヘッドコーチのゲームマネジメントにも注目だ。