宮澤夕貴

日本随一のシューターが3ポイントシュート11本中成功なし、大会通算2得点で終了

女子ワールドカップ2022、日本はグループリーグ最終戦で開催国オーストラリアと対戦。前半こそ34-36と互角に渡り合ったが、後半になると相手の激しいプレッシャーに屈してオフェンスの流動性がなくなり、3ポイントシュートの精度が落ちた。そして守ってはリバウンドが取れずにインサイドアタックを食い止められず、過去3試合と同じような展開となり54-71で力負けした。

この結果、1勝4敗のグループリーグ敗退で日本のワールドカップは終わり、銀メダルの東京五輪以降では初の世界大会で厳しい現実を突きつけられた。冒頭で触れた点など様々な課題はあるが、その中でも象徴的だったのは日本オフェンスの要である3ポイントシュートの不調だ。オーストラリア戦で27本中6本成功に留まるなど、大会通算で142本中38本成功、成功率26.8%は現時点で12カ国中10位の数字。東京五輪では6試合で190本中73本成功、成功率38.4%は12カ国中トップであり、大きな違いが出ている。

長距離砲が機能しなかったことを示す代表例が、日本随一のシューターである宮澤夕貴がまさかの3ポイントシュート成功数0本に終わったことだ。宮澤は東京五輪で1試合平均3.2本、チームトップとなる計19本の3ポイントシュートを成功率43.2%と高確率で沈め、平均11.2得点を記録し銀メダル獲得の中心的な存在の一人だった。

しかし、今大会の宮澤は、頻繁に選手交代する慣れない起用法も影響したのか、初戦のマリ戦で4本、2試合目のセルビア戦で5本すべてを失敗。ただ、この時点では「自信がないわけじゃないのが唯一の救いですね。変な自信があるときは大丈夫だと思っているので」と巻き返しを誓っていた。だが、続くカナダ戦ではわずか8分の出場で、打てた3ポイントシュートは1本のみ。4試合目のフランス戦は5分とさらにプレータイムが減り試投数はゼロ。オーストラリア戦も10分の出場で試投数は1本のみだった。第3戦以降の3試合ではわずか2本しか3ポイントシュートを打つことができず、最終的に11本中成功なし、大会通算5試合で計2得点に終わった。

宮澤夕貴

「みっともないプレーをして、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」

この宮澤の成績はチームとしてシューターが打ちやすい状況を作り出せていなかった象徴であり、彼女だけの責任ではないだろう。しかし、宮澤は「シュートチャンスは1試合目4本、2試合目も5本を打ったのでありました。それを決めきれなかったのは自分の力不足です」と、矛先を自らにのみ向ける。

そして、日本の持ち味を全く発揮できなかったと今大会を総括した。「日本の得意とするバスケット、日本の強みを全然、生かせていない。ディフェンスとリバウンドで我慢できない。いくらオフェンスが悪くてもそこがブレなければ、絶対に日本のペースになりますが、そこが崩れると日本の得意とする走るバスケットができないです。実際、全然走れていなかったことでこの結果になりました。運が悪かったのではなく、これが今の実力だと思っています」

これまで数々の国際大会を宮澤は経験しており、東京五輪での偉業達成の前には悔しい思いも多く味わってきた。だが、「こんな経験をしたのは初めてで……」と溢れる涙をタオルで拭いながら、自らを責め続けた。「自分、何をしているんだろうと思いました。自信がなかった訳ではないのに、結果も伴わなくてみっともないプレーをして本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ヘッドコーチの求めるバスケット、自分のバスケットを全然、表現できなかった。その結果だと素直に受け止めます」

2017年のアジアカップ以降、宮澤は日本代表の主力を担い続け、昨シーズンのWリーグでの活躍が示すように今もなおトップ選手として君臨している。それ故の衝撃であり、本人にとっても大きなショックだっただろう。このような結果になったことで、すぐにパリ五輪に向けて頑張ろう、と気持ちを切り替えるのが簡単なことではないのは当然だ。だが、日本がここから再び世界のトップレベルに返り咲くには宮澤の力は欠かせない。再び彼女が日の丸を背負って3ポイントシュートを爆発させる姿が見られることをやはり期待したい。