ユーロバスケット

『波乱の序盤』、NBAプレーヤーを擁する強豪がつまづく可能性も

多くのNBAプレーヤーも参加するユーロバスケが1日に開幕します。18日間にわたる長き戦いは、24チームが共同開催国のジョージア、ドイツ、イタリア、チェコの4グループにわかれる予選リーグから始まり、各チーム上位4チームが決勝トーナメントに進みます。予選を突破するのが難しくないフォーマットのため、大会序盤はスロースタートとなり波乱も起きやすくなります。特にNBAプレーヤーが多いチームは調整が進んでいないこともあり、何が起こるかわかりません。

大会に前後して来年のワールドカップ予選が行われている中で、NBAのオフシーズンにだけ助っ人のようにNBAプレーヤーが加わる形となり、時にケミストリーに問題が発生してしまいます。昨年のオリンピック直前の親善試合では、金メダルのアメリカが敗戦を重ね、また銀メダルのフランスも日本に歴史的な敗戦を喫しているように、単純な個人の足し算では勝負は決まらないだけに、戦力の融合が進まなければ強豪が躓くことも十分に考えられます。

この点でドイツとイタリアは、昨年のオリンピックでも上手いチーム作りを見せました。NBAプレーヤーをベンチ起用にしてチーム戦術が機能しない時のオプション担当にすることで、戦い方にも幅が出て非常に面白いチームとして印象に残りました。今回は開催国ということもあり躍進が期待されますが、イタリアは開幕直前になってダニーロ・ガリナリがケガをしてしまい暗雲が漂っています。逆にドイツはオリンピックにはいなかったデニス・シュルーダーやフランツ・ワグナーが参加し、チーム戦術と個人技が融合した期待できるチームになりそうです。

しかし、そのドイツが所属するグループBでは、前回王者のスロベニア、オリンピック銀メダルのフランス、そしてNBAのスタープレーヤーがいるリトアニアとボスニア・ヘルツェゴビナが同居しています。ハンガリーには新潟アルビレックスBBのロスコ・アレンがいますが、このグループを勝ち抜くのは相当難しいでしょう。他のチームにとっても、気の抜けない戦いが続く中で、決勝トーナメントに余力を残すための調整も求められます。

ジョージアで開催されるグループAにはスペインがいますが、ガソル兄弟が代表引退、リッキー・ルビオがケガで不参加と世代の狭間になっており、やや厳しい戦いが予想されます。その他にはジェディ・オスマン、フルカン・コルクマズ、アルペラン・シェングンというNBAプレーヤーがポジションバランス良く配置されるトルコが注目チームです。

しかし、そのトルコは直近のワールドカップ予選でラトビアとセルビアに負けており、個人能力だけでは機能しない例になっています。若いシェングンがコンビネーションを好むのに対して、オスマンとコルクマズはドライブアタックが多くて噛み合わせが悪い印象もあり、試合をこなす中で連携が構築されるかがキーポイントです。

グループCは開催国イタリアの勝ち抜けは固そうですが、それ以上にヤニス・アデトクンポを擁するギリシャが注目を集めることは間違いありません。NBAでも特殊な選手だけに連携を作り上げるのは簡単ではありませんが、連携などなくても突破してしまうモンスターなので、『ヤニス対策』ができないチームは手も足も出ません。

ギリシャへの対抗馬になるのはボーヤン・ボグダノビッチを始め多くのNBAプレーヤーを抱え、優勝するポテンシャルすら感じさせるクロアチアですが、ワールドカップ予選では1次リーグで敗退してしまいました。ボグダノビッチにとっては最後の主要大会になる可能性もあるだけに、この大会に懸ける思いは強いはずです。

グループDはニコラ・ヨキッチを擁するセルビアが楽に勝ち上がりそうです。NBAレベルでも個人の力で勝たせてしまうスーパースターがいれば予選でつまずくことは考えられません。ヨキッチに続くスターとしては、フィンランドのラウリ・マルカネンがいます。NBAではロールプレーヤーへと傾きつつありますが、代表チームでは絶対的エースであり、普段とは全く違う姿を見せてくれそうです。

そしてチェコはトーマス・サトランスキーを中心に、Bリーグでも活躍したオンドレイ・バルヴィンとパトリック・アウダなど、1989年から92年生まれの選手がロスターの多数を占め、その『黄金世代』の集大成の大会となります。格上相手にもアップセットを起こすだけの力を持ち、なおかつ長く慣れ親しんだメンバーだけに連携に優れ、その集大成の大会を開催国として戦うとなれば、大きな成果を残す可能性を感じてしまいます。

ルールの違いもあって、一般的にNBAよりもユーロの方が組織的なバスケットを展開し、個人技よりもチーム力が重要になります。しかし、直近の4シーズンのMVPであるヤニスとヨキッチがいる今大会は、世界最高の個人技を見ることが出来る大会でもあります。個人技と組織力が融合し、史上最高のユーロバスケになりそうです。