ウェストブルック&ベバリー

2013年プレーオフの衝突から始まった『不仲の歴史』

レイカーズはテイレン・ホートン・タッカーとスタンリー・ジョンソンとのトレードでパトリック・ベバリーを獲得した。バックコートのディフェンスを大きく改善する補強となるが、ケミストリーの部分では懸念が多い。歯に衣着せぬベバリーは敵を多く作るタイプで、過去に因縁のある選手も少なくない。

その中でも特にやり合ってきた選手がラッセル・ウェストブルックだ。事の発端はウェストブルックがサンダーに、ベバリーがロケッツに所属していた2013年のプレーオフの出来事。スティールを狙ったベバリーが身体ごとボールに飛び込んだ先に、ウェストブルックの右膝があった。

この時まだNBA1年目だったベバリーは「このリーグでは当たり前のプレーだ。僕には相手をケガさせる意図はなかったし、あくまでボールに行っていた」と謝罪を拒否。プレーオフの2試合目でシーズン終了となったウェストブルックがどんな気分でこの言葉を聞いたのかは想像に難くない。

その後も事あるごとに2人は衝突した。どちらも闘志を前面に押し出し、相手の勢いに引かないタイプだから当然なのだが、先の因縁がマッチアップにより熱を帯びさせた。

コート外での舌戦もあった。ディフェンスの名手というベバリーの評価に対してウェストブルックは「あいつは誰も守っていない。ただ走っているだけだ」と酷評。これに対しベバリーは「彼は僕のキャリアにダメージを与えた」と憤慨している。

この2人がレイカーズでチームメートとして上手くやっていけるのだろうか? それ以前から、昨シーズンに不振を極めたウェストブルックのトレードは噂になっており、チーム内での衝突を避ける意味でもすぐさま放出すべきとの意見は少なくない。

しかし『ESPN』のコメンテーターを務めるケンドリック・パーキンスは、全く逆の意見を主張した。彼はもともと、ウェストブルックを放出せず、レイカーズで復活させるべきと主張している。「挑戦こそが彼のベストを引き出す。彼らの間に因縁はあるだろうが、水に流して上手くやるべきだ。ラス(ウェストブルックの愛称)とベバリーが組めば、最強のディフェンスになる」

同じチームに所属するからと言って親友になる必要はない。対抗心を良い方向に表現できれば、因縁もまたエネルギーになる。新たなヘッドコーチのダービン・ハム、チームリーダーのレブロンにとっては悩みの種が増えることになるが、資産に乏しいレイカーズがほとんど見返りのないトレードを進めるよりは建設的かもしれない。