将来性よりも即戦力となる実力が優先される近年のNBA
各チームが優秀なガードを揃えるのが当然になった中で、リーグ全体でガードが過剰に供給されている印象も出てきました。今回のドラフトは特にポイントガードが不作と予想されている一方で、特徴的な武器を持った選手が上位指名候補に挙がっており、優秀な選手が多いガードだからこそ、レアな武器を兼ね備えていることが重要になっています。
ガードで唯一トップ指名候補でもあるパデュー大のジェイデン・アイビーは、ジャ・モラントと比較されるアタック能力とディフェンス力の高い2年生です。プレーメーク能力が伸びたことで大学1年時に1.9本だったアシストが3.1本へと増えただけでなく、オフボールでフリーになる動きによって3ポイントシュート成功率が26%から36%へとジャンプアップしました。この成長力もモラントと重なる部分があり、オンボールでもオフボールでも点が取れるエースタイプとして期待されています。
大学に入ってから伸びたアイビーとは逆に高校時代にNO.1の評価を得たシェイドン・シャープ はワン&ダン(大学で1年プレーしてドラフトにエントリーする)での育成方式を作り上げている名門ケンタッキ大ーに入学しながら、1試合もプレーしておらず、現在の能力値を図りかねる存在です。シャープは浮き上がるようなジャンプと滑らかなシュートフォームを持ち、19歳になったばかりの若さも含め将来のスーパースター候補として、最も大きな才能を秘めています。しかし、あまりにも未知数なことと、近年のドラフトでは未知数の才能よりも実力が確立されている選手が好まれる傾向もあって、何位で指名されるのか予想も割れています。
大学ではなくGリーグを選んだダイソン・ダニエルズは1on1が多いプレースタイルの中でディフェンス力で評価を高めた珍しい存在です。3ポイントシュート成功率は26%と大いに苦戦した一方で、1.9スティールに加えて6.2リバウンドを記録し、ハードワーカーとしての活躍が期待できるうえ、4.4アシストとプレーメーク力も持ち合わせています。エースキラー役が足りていないチームは多く、ダニエルズは需要の高いタイプとして人気があります。
アリゾナ大のベネディクト・マサリンとウィスコンシン大のジョニー・デイビスは共に得点力を評価されているガードとして3人に続きます。シュート力や1on1の強さに特徴がありますが、10位前後の指名権を持つチームであれば、既に得点力のあるガードを抱えていることが多く、個人の才能を優先するか、それともチームの弱点補強を優先するかによって、指名の判断が分かれそうです。不作のポイントガードの中では、フランスで育ちニュージーランドで1年間のプロキャリアを積んだウスマン・ジェンが面白い存在です。まだまだ選手として粗削りなだけでなく、アメリカのバスケスタイルにフィットするには時間もかかりそうですが、208cm98kgのサイズはポジションの万能性もあり、様々な使い方ができます。3ガード構成のチームも増えてきただけに、ウイングサイズでガードスキルを持つ選手を集めるのも1つの戦略です。
また、ヴェンデル・ムーアやジェイレン・ウィリアムスなども、ポイントガードからスモールフォワードまでこなせそうな選手です。ポジションレスの時代なだけに、このタイプの選手は使い道も多く、下位指名権を持つチームならば将来性よりも、サポート役の即戦力として獲得したほうがメリットがあるかもしれません。
ボールを持つ時間が長いポジションだけにガードには優秀な選手が揃いますが、ボールを増やすことはできないため、プレーシェアをする必要があります。ステフィン・カリーとクレイ・トンプソンのスプラッシュブラザーズが再び覇権を握っただけに、オンボールよりもオフボールで活躍できるガードの価値が再認識され、チーム事情に合ったガードが指名されていきそうです。