ディフェンスが武器ながら対照的な戦い方
王朝復活を目指すウォリアーズとジェイソン・テイタムを中心に若さ溢れるパワーで新たな時代を作りに行くセルティックスの顔合わせとなったファイナルは、共にハードワークを欠かさず、アグレッシブなディフェンスを武器にしたチーム同士という似た要素を持ちながら、その内容は対照的です。
対戦相手に応じたディフェンスコンセプトを用意し、1つの動きに対して全体が連動して動き、徹底的に鍛えられたカバーリングとローテーションによる優れたチームディフェンスがウォリアーズの特徴です。ドレイモンド・グリーンを中心に『個』の強みも持ちながら、それ以上に『組織』でブロックを形成して相手の強みを消していきます。ファイナルでは当然、テイタムとジェイレン・ブラウンへの対応を中心にディフェンスプランを作ってくるはずです。この2人へのカバーリング以上にキーになるのは、その後のローテーションです。
バックスとのシリーズでグラント・ウィリアムスとアル・ホーフォードがアウトサイドから決めていき、プレーオフ序盤は不調だったデリック・ホワイトは子供が生まれてからは最も怖いシューターになりました。誰もが3ポイントシュートを決めるチームだけに、パスを乱すためのハイプレッシャーと素早いローテーションが求められます。
逆にセルティックスのディフェンスはホーフォードを中心とした『組織』としての強みもありながら、より『個』のマッチアップで勝負してきます。当初ヤニス・アデトクンボに対してダブルチームを仕掛けていたものの、パスアウトからのフィニッシュを量産されると、そこからはマンツーマンとゾーンを駆使しながらも、基本的には1on1のマッチアップで守り切ることを重視し、フリーの選手を作りませんでした。カリーとトンプソンへの警戒を強めるほど、他の選手にイージーな得点が生まれやすくなるのがウォリアーズのオフェンスですが、セルティックスは特別な対応はせず、DPOYのマーカス・スマートによるフィジカルやパスコースを消すクレバーなチェイスをするホワイトが個人で守り切ることを目指すでしょう。抜かれても最後にオールディフェンスチームに選ばれたロバート・ウィリアムスのカバーもあるだけに、恐れることなく『個』の戦いに集中してきます。
今シーズンのプレーオフは大差の試合が多くなっていますが、その理由にハードなディフェンスからのカウンターアタックが増えていることが挙げられます。ハーフコートオフェンスでは得点効率が落ちるだけに、イージーに得点が奪えるトランジションアタックの重要性が増しており、『守備こそ最大の攻撃』になってきました。特徴は違えど、お互いのハイレベルなディフェンスが勝敗を分けるファイナルになるでしょう。