荒谷裕秀

指揮官も称賛「前半は荒谷の3ポイントシュートのおかげ」

宇都宮ブレックスは千葉ジェッツとのチャンピオンシップクォーターファイナル第1戦に81-70で勝利した。

第2クォーターに逆転して以降、主導権を握り続けての勝利に、宇都宮の安齋竜三ヘッドコーチは「選手たちがゲームの出だしから準備してきたこともやってくれましたし、アジャストしたことも遂行してくれました」と、選手たちへ労いの言葉を送った。

エースの働きを見せた比江島慎がチームハイの21得点を挙げ、インサイドの要であるジョシュ・スコットとアイザック・フォトゥの2人で20得点を記録するなど、チームの中心メンバーが結果を残した。そんな中、ルーキーの荒谷裕秀が比江島に次ぐ14得点を挙げたことは宇都宮が試合を優位に進める上で大きな影響を与えた。実際、千葉の大野篤史ヘッドコーチは「チャンピオンシップというのはラッキーボーイが出てくるので、そこにすぐにアジャストしないとゲームが終わってしまう展開にもなる」と試合後に語っている。

荒谷は放った4本の3ポイントシュートをすべて成功させ、前半で12得点を記録した。特筆すべきは、これらがフリーのシュートではなく、自らクリエイトして決めるなど、タフショットが多かった点だ。安齋ヘッドコーチも「チームとして作ったプレーというよりは、タフショットも決めていた。あれがなければ展開が全然変わったと思うので、前半は荒谷の3ポイントシュートのおかげかなと思っています」と称賛した。

荒谷は「セカンドユニットも含めて我慢することができました。後半の初めから、ディフェンスからエナジーを出す自分たちのやりたいバスケができたので今日の結果になった」と試合を振り返った。

ルーキー離れしたパフォーマンスを見せた荒谷だが「最近のレギュラーシーズンでチャンピオンシップに出ているような強いチームとの試合が続いていて、特にチャンピオンシップという気負いはなく試合に入れたのが良かった」と、落ち着いた状態で試合に臨めたという。また、「ミーティングの時に、安齋さんからオフェンスは気にせず思い切りやってこいと言われていたので、それが出せて良かった」と語ったように、指揮官のアドバイスが背中を押していた。

シーズン序盤は出場時間の確保に苦しんだ荒谷だが、中盤以降は20分以上のプレータイムを与えられることもしばしばあり、4度の2桁得点を記録した。その高いオフェンス力がポストシーズンで発揮されたわけだが、荒谷は「今日はオフェンスが調子良かったですが、それよりもチームディフェンスだったり、崩れないプレーヤーとしてローテーションとしてプレーできていることが一番うれしい」と、指揮官の信頼を得たことを今シーズンの一番の収穫に挙げた。

初めてのチャンピオンシップという大舞台で荒谷は自身の持ち味を発揮した。強心臓のように映るが、「メンタルは強いほうではない」と荒谷は言う。それでも、これだけのプレーができたのは宇都宮のチームスピリットが身体に染み込んでいるからだ。「すごく点数を取ることを求められているわけではないです。シーズンを通して、ずっとブレックスが大切にしている、ディフェンスから流れを作ることを意識して今日も試合に入りました。1本目がコーナースリーだったと思いますが、そこで気持ち良く打ち切れて、それが決まったから思い切り行けました」

今日の第2戦、荒谷のマークは当然強くなるだろう。それでも、チームの大切なことだけに集中し、自然体で試合に臨めている荒谷であれば、第1戦を超えるパフォーマンスも可能なはずだ。