攻守に渡って大暴れ、タレント集団にあっても替えの効かないオールラウンダー
Wリーグのファイナルでトヨタ自動車アンテロープスは富士通レッドウェーブを2連勝で撃破し、リーグ連覇を達成した。馬瓜ステファニーは74-69で逆転勝ちした初戦で9得点12リバウンド4アシスト3ブロック1スティール、87-71で快勝した第2戦では14得点10リバウンド5アシスト2スティール1ブロックと攻守に渡って大暴れ。2試合ともにチーム最多となった36分以上のプレータイムが示すように、リーグ随一の層の厚さを誇るトヨタ自動車においても替えの効かないオールラウンダーとして抜群の存在感を見せた。
また、第1戦では劣勢で迎えた第4クォーターに、富士通オフェンスの要である町田瑠唯をマーク。ステファニーの本職はフォワードであるため、司令塔の町田とのマッチアップはスピードのミスマッチを突かれるのが怖いところだ。しかし、持ち前の機動力とリーチの長さを生かして、このクォーター最初のポゼッションで町田のシュートを見事にブロックした。ステファニーがマークにつくことで町田がボールに絡むことが減った富士通のオフェンスは、ボールムーブが一気に停滞。20-8と第4クォーターを圧倒して勝利した原動力となった。
互角の立ち上がりとなった第2戦で、トヨタ自動車が第1クォーター後半から突き放す大きなきっかけとなったのが、富士通のゴール下を支えていた宮澤夕貴のファウルトラブルだ。そして、第1クォーターで宮澤から2つ目のファウルを導いたのがステファニーのミドルシュートだった。
スタッツに残る部分だけでなく、数字に表れない部分でも試合の行方に大きなインパクトを与える大活躍だったステファニーだが、優勝決定後の会見でファイナル2試合をこう振り返っている。
「昨日の試合を勝ち切れたことで修正する部分が明確になりました。今日が最後という気持ちで一人ひとりがプレーしていたのがコートに出て、ベンチでも声がけをたくさんしてくれて非常に楽しいゲームでした。昨日は個人的にはパフォーマンスが全然上がらなくて、みんなが繋いでくれました。今日は自分が積極的にチームのために動こうと思って、それが良い形になって貢献できて良かったです」
すごく意識していた外角シュートの積極性でしっかりと結果を残す
今シーズンのトヨタ自動車はシックスマンから先発となったステファニーに加え、山本麻衣も新たに先発ポイントガードに定着し、プレーオフMVPを受賞する大活躍だった。さらにルーキーのシラ・ソハナファトージャはインサイドだけでなく、効果的にミドルシュートを決めて大きくステップアップした。逆転勝利を挙げた第1戦終盤の勝負どころでは24歳のシラ、23歳のステファニーと宮下希保、22歳の山本、20歳の平下愛佳の若いラインアップを起用して勝利をつかんだように、若手が台頭した中で優勝を果たした。
「若い選手も成長していますし、努力する選手が多いのでまだまだ成長できると思っています」
ステファニーがこう語るように、来シーズン以降のさらなる進化を大きく予感させる中での連覇達成となった。また、彼女自身はレベルアップに向け、次の部分を重視していた。「今シーズン、自分がすごく意識していたのは外のシュートです。昨シーズンはオフェンスの中で自分がチームの弱点になっているポイントがあって悔しかったです。今シーズンは空いた時だけでなく、行けると思った時は迷わずシュートを打つようにしていました」
この外角シュートの積極性が、第2戦で宮澤をファウルトラブルに導いた。シーズン最後の大一番で、日頃の努力の成果をしっかり結実させたところにステファニーの勝負強さが出ている。
世界との戦いで自分の現在地と武器を知り、経験をチームに還元するサイクルを構築
名実ともに新女王の中心選手となったステファニーだが、日本代表においても今や欠かせない存在となってきている。3×3代表として東京オリンピックで活躍すると、その後のアジアカップ、ワールドカップ最終予選でも主力を担った。この世界との経験は彼女に大切な気づきを与えてくれた。
「本当にこの一年間、いろいろな大会に出せていただき、3×3のオリンピック予選みたいに勝って終われる大会もあれば、オリンピックみたいにボロボロに負けて終わる大会もあって本当に気持ちの上下がすごかったです。そういった中で世界の素晴らしい選手たちと戦うことで、自分の現在地を教えてもらいました。また、自分の武器もすごく見つけられた。その機会を与えていただいた皆さんに感謝しています」
そして、この貴重な経験を自身だけでなく、チームを成長させる材料へと繋げていった。「この経験をチームに持ち返って伝えることで、チームが強くなっていける良いサイクルだったと思います。こういった経験をこれからも積めるように、努力を惜しまずに頑張っていきたいです」
途中で触れたように今シーズンのトヨタ自動車は、大一番での貴重な経験を若手に積ませる中で連覇達成を果たし、理想的な形でシーズンを終えた。そして、新たな王朝を樹立するには大黒柱としてステファニーが不可欠であることを証明する一年となった。
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