藤岡麻菜美

「新しいバスケをやってみたい気持ちがあったので参加しています」

藤岡麻菜美は抜群のボールハンドリング能力を持つポイントガードで、筑波大からENEOSサンフラワーズに加入するとともに日本代表の選考に入るようになった。大学卒業から数カ月後だった2016年のリオ五輪こそメンバーには入らなかったが、そこからENEOSでも日本代表でも『吉田亜沙美の後継者』の期待を託され、藤岡自身もそれをモチベーションに結果を出してきた。トム・ホーバスが率いる日本代表も『世界でベストのパッシングチーム』を目指す中で藤岡への期待は高まる一方。ところが、2017年のアジアカップ優勝とともに大会ベスト5に選出された後の藤岡は、ケガが相次いで思うようにプレーできない時期が続いた。

その状況でバスケを楽しむことができなくなり、2020年春に現役引退を発表。すぐに母校の千葉英和のアシスタントコーチとなり、指導者としてのキャリアをスタートさせた。それでも今シーズンからシャンソン化粧品シャンソンVマジックで現役復帰。ブランクはあってもパスセンスと勝負度胸は変わらず、Wリーグで異彩を放っている。そして今回、恩塚亨が率いる日本代表に招集された。

「まさか自分が候補に入るとは思っていなかったので、正直驚きました。それと同時に、また呼んでもらえたことはうれしかったので、入る入らないは関係なく、恩塚さんになって新しいバスケをやってみたい気持ちがあったので参加しています」

「バスケを一回嫌いになって辞めて、バスケを楽しむために戻って来たので、それが代表についてくればチャンスはあるのかなって言うぐらいの考えで、現役復帰の時はそこを目指してやっているわけではなかったです」と藤岡は言う。

かつて自分が出場を目指した東京オリンピックでのチームの躍進を見たことで、心境にも変化があった。「いいなあ、ぐらいは思っていました。オリンピックの時は現役復帰してバスケを楽しんで、引退する前とは違う気持ちで取り組んでいたので、その状態でオリンピックを見た時に『やっぱりやるならトップを目指すのもいいかな』と思いました」

以前と今とでは、同じ日本代表に参加するにしても心境は「違いますね、全然」と言う。「その時はオリンピックに行きたい、行かなきゃみたいな感じで、自分の中で使命みたいな感じでプレッシャーでした。そもそもバスケを楽しんでいませんでした。今はシャンソンに入って環境が変わり、一回辞めていろいろ経験して、新たな気持ちでバスケに取り組めているので全然違います」

コンディションは「体重で言うと6kgぐらい今は細いので、当たり負けしない点では引退前の方が充実していました。でもスピードは今の方が動けている」だそうだ。そして「コーチの仕事もしているので、バスケIQじゃないけどいろいろな考え方とか、前よりコートを俯瞰して見れるようになったのは何となく自分の中で感じています」と、自身の変化を語る。

オリンピックで大活躍した町田瑠唯を始め、ポイントガードには選手が多くて競争は激しい。それでも「今のポイントガード5人は得点を取りに行く選手が多いイメージ。自分はどちらかと言うとパサー、アシストで周りを生かすところがあるので、ゲームコントロールを含めて流れを他のガードと変えることを求められていると感じています」と、自分の生かし方は見えている。

「当時はバスケを嫌いになって、やりきったと自分で思い込んでいたなと思います。結局、やっぱり未練があって高校生の指導に携わって、純粋にバスケに取り組む高校生の姿を見て心が動きました。恩塚さんも『ワクワクを大切にしよう』といつもおっしゃっているんですけど、自分が純粋にやりたいって気持ちが一番の原動力だと思うので、そこを大切にしていきたいと思います」