ジェームズ・ハーデン

互いの持ち味を殺すことなく、相手の良さを引き出す

ケビン・デュラントは膝を痛めてしばらく戦線離脱となったが、ネッツには少なくとも敵地でのゲームでは『保証』がある。カイリー・アービングはワクチン接種に応じないことでニューヨークではプレーできないが、デュラント離脱後の3試合はいずれも敵地での試合。キャバリアーズ戦、ウォリアーズ戦、そして現地1月20日のスパーズ戦と3試合連続で、カイリーはジェームズ・ハーデンとパティ・ミルズとともに3ガードで先発起用され、期待に応えている。

昨シーズンはデュラントとカイリー、ハーデンの『ビッグ3』の連携をどう高めるかが議論されたが、それはもう問題ではない。カイリーとハーデンは相手の良さを引き出すために自分を殺すことなく、恐るべきオフェンスを展開している。スパーズ戦でハーデンは37得点10リバウンド11アシストのトリプル・ダブルを、カイリーは24得点3リバウンド4アシストを記録した。

ハーデンはカイリーとのコンビネーションについて「ブレイクスルーだった。カイは今まで以上に僕たちを巻き込んでプレーしようとしている。彼には特別な才能があるし、もっともっと良くなる」と語る。同じテーマについてカイリーは「お互いに邪魔しないようにしつつ、高いレベルのプレーを互いに要求するんだ」とコメントしている。

ハーデンのトリプル・ダブルは今シーズン8回目。その中でも37得点はトリプル・ダブル達成時の最多得点だ。フィールドゴール24本中13本成功とシュートタッチも良く、彼にしては珍しいプレーも飛び出した。第3クォーター途中、ドリブルのスピードを一気に上げてリムに走り込み、追いすがるヤコブ・パートルを振り切ってきめたワンハンドダンクだ。ベンチを大いに沸かせたこの一発を「ルーキー時代に戻ったような気分だった」とハーデンは振り返る。「みんな僕がダンクできないと思ってたから、一発決める必要があった。試合を通して調子は良かったし、アグレッシブに攻めることができていた。前の試合がイマイチだったから良いプレーがしたかったしね」

カイリーもハーデンのパフォーマンスに刺激を受けていた。第3クォーターまでは9得点だったが、第4クォーターに15得点を奪っている。終盤にギアを上げた理由をカイリーはこう明かす。「ジェームズが好調だったから任せていた。彼がノッていれば試合は楽に進められる。だけど、試合の途中でジェームズが僕に怒鳴ったんだ。『カイ、ボールを持てよ!』ってね。だから僕も邪魔をしないのではなく、アグレッシブに切り替えた。そうしてオフェンスの流れに乗ってプレーしたんだ」

ハーデンが11得点、カイリーが15得点を固めた第4クォーターのオフェンスは、今シーズン最も機能していたと言っても過言ではない。「ジェームズは光り輝いていた。カイリーは自分らしくオフェンスを作り出していた。彼ら2人だけじゃなく、チーム全員が役割を果たしていた」とスティーブ・ナッシュもご満悦だ。そしてカイリーも「第4クォーターのリズムでプレーしていれば、ついてこれるチームはそう多くない」と語る。

デュラントの離脱は痛いし、他にもケガ人がいて万全な状態とは言えない。デュラントが戻ってくればまたケミストリーの問題は出てくる。それでも、ネッツは度重なるトラブルに見舞われながらも前進し続け、大混戦の東カンファレンス首位をキープしている。