ジョエル・エンビード

ウィザーズ指揮官は白旗?「シクサーズが優勝しても驚かない」

フィラデルフィアからワシントンDCに舞台を移しても、セブンティシクサーズが圧倒的なパフォーマンスでウィザーズをひねり潰すことに変わりはなかった。現地5月29日のファーストラウンド第3戦、シクサーズは132-103の完勝を収めた。

試合を支配したのは36得点8リバウンドを記録したジョエル・エンビードだった。第3クォーター残り2分、107-82と大量リードの場面でベンチに下がり、その後はプレーしなくてもこのスタッツである。前半終了間際に試合はもう決していたのかもしれない。パスフェイク一発でダニエル・ギャフォードを抜き去り、ファウルで止める相手を振り切ってダンクを叩き込んだエンビードは、両手に耳を当ててスタンドを見回した。ウィザーズのファンは彼の集中を乱そうとブーイングをしていたが「まだやるのか?」とでも言わんばかりのパフォーマンスだった。

エンビードは自信たっぷりに「ダブルチームをしてきても、そうじゃなくても、僕を止めるのは簡単じゃない」と言う。「自分で行くこともできるし、パスでクリエイトすることもできる。チームはすごく良い感じでプレーできているよ」

このエンビードのバスケット・カウントで70-57。点差は13で、まだ時間はたっぷりあったが、それまでのパフォーマンスでシクサーズがあらゆる面で上回っているのは明らか。ウィザーズファンのブーイングがトーンダウンする代わりに聞こえてきたのは、少数派のシクサーズファンによる『MVPコール』だった。

1試合目はトバイアス・ハリス、2試合目はベン・シモンズ、そしてこの試合ではエンビードがチーム最多得点を記録。チームオフェンスも機能しており、素早いパスワークの中でウィザーズのディフェンスは分断され、個々がボールに食らい付こうとするローテーションでは間に合わない。簡単にワイドオープンを作られ、シモンズ以外のどの選手も自分のリズムで打っていく3ポイントシュートは試合を通じて33本中17本成功と、成功率50%を超えた。外からこれだけやられ、なおかつエンビードにインサイドも蹂躙されては、ウィザーズは抗うことができなかった。

ダニー・グリーンは9本中5本の3ポイントシュートを決めて15得点を記録。ディフェンスを引き締め、チームの作り出すチャンスをきっちり得点に繋ぐ『3&D』の面目躍如のプレーを披露。得失点差はエンビードやシモンズを上回る+32と攻守に素晴らしい働きを見せた。

ウィザーズの指揮官スコット・ブルックスは正直な男だ。完敗を認め、エンビードに対して「まさにMVPだ。いろいろな対策を試したが手強い相手だった」と称賛を送るとともに、「我々のプレーが機能しなかった要因はシクサーズにある。才能があり、経験豊富なチームだ。シクサーズが優勝しても驚かないよ」と、シリーズをあきらめたような表現をした。

ウィザーズはダービス・ベルターンスを先発させてハリスをマークさせ、八村塁をシモンズに、アレックス・レンをエンビードに守らせた。それでもシクサーズはあっという間にこの対策を打ち破った。サイズアップのために起用されたベルターンズはディフェンスのポジショニングの悪さ、強度不足を散々に突かれ、最大の敗因となってしまった。

ウィザーズではラッセル・ウェストブルックが足首のケガを押して出場し、26得点12リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録するも、シクサーズの勢いを止めるには至らず。ブラッドリー・ビールは25得点を挙げるも確率は悪く、ベルターンズや八村とともにディフェンスの穴となった。イシュ・スミスは攻撃に緩急をもたらし、ギャフォードはエンビード相手に奮闘したが、チームが攻守ともに機能不全に陥っている中で個人の奮闘は大して目立つものではなかった。

これでシクサーズは3連勝で、ファーストラウンド突破に王手をかけた。ニックスとホークスは長くもつれそうな気配で、シクサーズとしては早々に決着を付けることでコンディションを整える余裕を得られる。ベン・シモンズは「そうしたい」と語り、こう続けた。「でもウィザーズはタフなチームだ。ビールとラス(ウェストブルック)は毎晩どんな活躍をするか分からないから気を付けなければ。だからこそ、第4戦には万全の準備をして臨みたい」